泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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2019-01-01から1年間の記事一覧

2019年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・ソング10選

アルバムに続いて曲単位の年間ベスト10を。例年、どうしても年間ベスト10に選んだアルバムの収録曲が多くなってしまいがちでつまらないので、今年はアルバムのベスト10に入っている楽曲はあえて除外して選んでみた。ちなみに公正を期すため、上記の理由によ…

ディスクレビュー『PARADIGM』/ECLIPSE

Paradigmアーティスト:Eclipse出版社/メーカー: Frontiers発売日: 2019/10/11メディア: CDここへ来て一気にスケールアップしたスウェーデン産中堅ハード・ロック・バンドの7枚目。前作あたりでかなり幅を広げた感はあったものの、ECLIPSEには常にB級感が漂っ…

2019年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・アルバム10選

1位『PARADIGM』/ECLIPSEParadigmアーティスト:Eclipse出版社/メーカー: Frontiers発売日: 2019/10/11メディア: CDまさか彼らがこの段階で化けるとは思わなかった。スウェーデン産中堅ハード・ロック・バンドの7枚目。北欧古来の美旋律ハード・ロックにジョ…

短篇小説「ポジティブ刑事」

ポジティブ刑事が現場へ急行している。拳銃を忘れて走り出してしまったがきっと大丈夫だろう。なぜなら彼はポジティブ刑事だからだ。武器などないほうが物事はスムーズに運ぶことも時にはある。どんなにネガティブな状況であっても、それをポジティブに捉え…

短篇小説「ジダハラ」

世間では時短ハラスメント、略して「ジタハラ」というものが流行っているようだが、わたしの職場では「ジダハラ」にすっかり迷惑している。 ジダハラの原因は、わたしと同じ職場で働く壇田踏彦という男である。踏彦はことあるごとに地団駄を踏む。その足音が…

間違いだらけの「新語流行語全部入り小説2019」

ある朝求人サイトにあな番の広告が出ていた。電話をかけてみたらいきなり採用となった。あな番とはアナウンサーの番組でもアナーキーな番長でもなく、穴の見張り番をする仕事だと説明されて、それくらいなら僕にもできると思ったのが不幸のはじまりだった。…

短篇小説「来店ルーティーン」

泣ける曲を口ずさんでいる男が街角を歩いていると、本当は喫茶店をやりたかった八百屋の前でいつもニヤニヤしている男と出会った。泣ける曲を口ずさんでいる男といつもニヤニヤしている男は中学時代の同級生であったが、特に仲が良いわけではない。「やあ、…

『METAL WEEKEND 2019』9月15日(日)ライヴ・レポート

LOUDNESSが出た土曜日ではなく、HAMMERFALLがヘッドライナーを務めた日曜日のほうである。【METAL SOULS】 NOZOMU WAKAI'S DESTINIAのアルバム『METAL SOULS』を昨年のアルバム年間ベスト10に入れた身としては、登場順は最初ながら期待は大きかった。僕があ…

たまには日記らしい日記

昨日の雲は降らせる雲だったが今日の雲は降らせない雲だった。昨日はひどく降って今日は一滴も降らなかった。「~せない」という否定形の使役表現といえば我が家杉山の「言わせねえよ」を思い出すが、彼には雨を降らせることも降らせないこともできないばか…

短篇小説「なにがなんだか飛翔体」

隣国から正体不明の飛翔体が発射されたまさにそのとき、前日のフットサルで起きたアクシデントにより負傷体となった翔平は、強くひねった右の足首体が発する激しい痛みのせいで、予定より一時間も早く起床体となった。 だが足首体が石膏体によりすっかり固定…

書評『北京の秋』/ボリス・ヴィアン

フランス文学の異端児による奇譚。再読して改めて気づくのは、この作品がとにかく遊び心にあふれているということだ。そしてそれがなぜか哀しい。そんな作者の独特なスタンスを理解するためには、巻末の安部公房による解説にある、本作の謎めいた題名に触れ…

短篇小説「ABCマートの店内でだけ流れてるラジオ」

強く細かな雨がノイズのように降り注ぐ平日の昼下がり。差した形跡のない白い粉を吹いたビニール傘を手に、濡れそぼった姿で我がオフィスの会議室に現れた自称23歳の女は、面接官である私の目の前で、恐るべき志望動機を語ったのであった。「《ABCマートの店…

短篇小説「河童の一日~其ノ十八~」

近ごろ妙にヘッドソーサーが膨らんできたので、今日は街のiPhone修理屋へ行った。 知らない人も多い(そして知らない河童はいない)と思うが、河童の頭皿交換はiPhoneの修理屋で行ってもらえることになっている。もちろん裏メニューだが、要領はバッテリー交…

「邦ロック」の支配者

近ごろの若い人はどうやら、日本のロックのことを「邦ロック」と呼んでいる。この呼び方が、個人的には抜群に野暮ったく感じられるのだが、それはなぜか。これを真面目に考えてみたところで、正解などないことは最初からわかっている。いや先に言ってしまう…

【歌詞】「さくら」

さくらを見るかい?(Yeah!) さくらを見たかい?(Yet!) さくらを見たいかい?(Wanna!) さくらを見ていたいかい?(In the building!) だけどさくらは 映(ば)えるもんじゃない 見た目はほんと 単なるおばん 派手なセーター 着ちゃってさ くるくるパー…

とんがりコーンのとんがらせかた

とんがりコーンをとんがらせるのがいかに大変かという事実は、意外と知られていない。多くの人は、とんがりコーンが生まれつきとんがっていると思い込んでいることだろう。だがそれは大いなる勘違いである。生まれつきとんがっている不良がいないように、生…

ラーメン小袋攻城戦

僕らは相も変わらず「マジックカット」に翻弄されている。あの切れ目がないのに不思議と切れるマジカルな彼奴に。今日作ったカップ緬には三種類の小袋が入っていた。それが見事に(そして無駄に)三者三様で。第一の袋は、天地(上下)がギザギザになってい…

言語遊戯「ことわざ延長戦」第3戦

「こと」ばの「わざ」というよりは、「こと」ばを「わざ」と使いにくい形にしてしまっているであろうことわざ「ちょい足し実験」も第3弾。前回までは、わりと上手いこといってやろう、という意欲がそれなりに見られたけれど、こうやって続けていくと徐々に脱…

言語遊戯「ことわざ延長戦」第2戦

前回が好評であるという思い込みに基づき、ことわざの後にフレーズを足してみたらどうなるか、ということわざ「ちょい足し実験」の第2弾をお送りしたい。こうなるといくらでもやりようはあるような気がしてきた。意味など、無理やりこねくり回していれば何か…

言語遊戯「ことわざ延長戦」

ことわざは短くまとまっているからこそ有用である。本来ならば長いこと説明しなければ伝わらないような人生の機微を、たった一行で伝えるからこそことわざには存在価値がある。きっとそうなんだろうと思う。だけどそれだけじゃないだろう。本来の言いたいこ…

スムーズに忘れるための覚え書き その1~藤原マリーゴールド

あいみょん「マリーゴールド」の歌詞にある有名な一節「麦わらの」に続くフレーズが思い出せず、つい「藤原の」と歌ってしまった場合、それに続くフレーズは「不比等」「道長」「組長」「フジモン」のいずれでも良い。また、最後の選択肢を取った場合、アー…

スマホゲームのハンドルネームどうつければいいのか問題

皆さんご存じではあると思うが、世界十大問題のひとつに「スマホゲームをプレイする際のハンドルネーム問題」というのがあって。僕はそんなにゲーム全般に常時興味があるほうでもなくて、やるゲームといったら戦国シミュレーションかサッカーかオートバイレ…

短篇小説「夢のまた夢のまた夢」

目が覚めると僕はプロ野球選手になっていた。これは僕が生まれてはじめて抱いた夢だ。寝て見る夢ではなく、起きて抱く夢だ。だからこれは夢の中の話ではなく、外の話ということになる。どちらが現実かなんて、取るに足らないことだろう。 しかしプロ野球選手…

短篇小説「過言禁止法」

SNSの流行により日本語は乱れに乱れた。どう乱れたかといえば端的に言って万事表現がオーバーになった。 短文の中で自己表現をするとなれば自然と過激な言葉に頼るようになる。さらには、ただ一方的に表現するだけでなく互いのリプライによる相乗効果も働く…

短篇小説「紙とペンともの言わぬ死体」

繁華街の路地裏で、紙とペンを持った男の死体が発見された。彼は死ぬ間際、いったい何をそこに書きつけようとしていたのか。 そこで真っ先に「遺書」と考えるのは、いかにも浅はかな素人推理である。なぜならば死体が着用していた上着のポケットからは、別に…

短篇小説「ALWAYS 二番目の銀次」

あまり知られていないが、あらゆるジャンルでコンスタントに二番手のポジションを獲得し続けてきた男がいる。男の名を銀次という。皮肉なことに、銀次はその出生からして二番目であった。だがそれは、いわゆる「次男」という意味ではなく。 山に、老夫婦が住…

短篇小説「フクロウこそすべて」

この世のすべてフクロウになったのは、いつからだったろうか。 ある日、意中の女性とデートしていた私は、一件目の盛りあがりを受けて、彼女を二件目に誘った。だがそこで彼女が発した言葉に、私は衝撃を隠せなかった。「ごめんなさい、今日はウチにフクロウ…

短篇小説「ことわざ殺人事件」

ある冬の朝、都心の路上で、腹部に餅屋の暖簾を被せられた中年男性の死体が発見された。男は一般的な背広姿、目立った外傷は見当たらず、死因は特定されていない。この不可解な死を解明するため、二名の刑事と一人の探偵が現場へと急行した。 初めにベテラン…

短篇小説「縁起者忙殺録」

幸介はとにかくかつぐ男だ。どれだけ重いものをかつぐのかといえば、彼のかつぐべきその総重量は甚だしく大きいと言わざるを得ないだろう。そう、彼は縁起をかつぐ男。成功体験の数だけ、かつぐべき縁起がある。 幸介は自身を幸福へと導く縁起を、それはもう…

短篇小説「筋肉との対話」

おい、オレの筋肉! やるのかい、やらないのかい、どっちなんだい? やるとしたらいつ、何を、どのようにやるのかい? 今すぐ、バーベルを、鬼のように上げるのかい? 今宵、ブルドーザーを、東京から大阪まで引っ張るのかい? あるいは明朝、ラジオ体操第2…

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