泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

短篇小説「号泣家」

私は奇妙なことに、泣きながら産まれてきたのだとのちに母親から聞かされた。私がそんな奇抜なスタイルで産まれてきたのは、きっと両親が泣きながら出逢ったからだ。産まれてこのかた、私はずっと泣いている。何をするときも確実に泣いている。飯を食うとき…

短篇小説「最後の勇者」

王様に呼び出されるというのは、つまり職員室に呼び出されるようなもので、だいたい叱られるものと相場が決まっている。しかしこの日は違った。城の大広間にでんと鎮座している王様の前に跪くと、王様は僕の手を取り神妙な顔を作り込んで言った。「よくぞ参…

連載小説「二言武士」/第四言:市中引き回されマシン

なんといっても武士は体が資本である。さしあたっての得物である「バールのようなもの」の圧倒的魅力により六人の岡っ引きをまんまと丸め込み、自らの器物損壊罪をもみ消すことに成功した覆之介は、家に帰る前に会員制スポーツジムで汗を流すことにした。近…

青い鳥に乗ってクリムゾンキングの宮殿に降り立つケンドーコバヤシを見た(ただし幻覚)

いま僕の中で巻き起こっている3大ブームは、『キング・クリムゾン』『ケンドーコバヤシのテメオコ』『青い鳥』の3つである。最初のひとつのみ、はからずも「ジョン・ウェットンの死」という哀しいニュースと若干リンクしてしまったが、これらは基本的に世の…

短篇小説「私が全自動になっても」

何もかもが全自動化されたこの世界で、自動でないのはもはや人間の心だけだ。 もちろんこの文章も全自動で書いている。いや書かせている。むしろ書かれている。その証拠はいずれ表れることになるだろう。 水道の蛇口が自動水栓になった際にも驚いたものだが…

ゆとり鬼逃走中

ここ数日、節分から逃げてきた鬼たちがわが家に続々と駆け込んでいる。もちろん、うちに豆シェルターを完備しているからである。毎年のことではあるのだが、今年はちょっと数が多いような気もする。やはりゆとり教育のせいで、豆に弱い鬼が増えているのだろ…

ルパンに奪われしものたち シーズン3

ルパンはこれまで、世界中の人々からさまざまな物を奪ってきた。いや、奪われたのは物だけではない。心や概念までも。これはルパンの最新版盗難記録である。 銭形「いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたのモスキート音です」(ジャパネット…

短篇小説「忘却無人」

ポストにちらしが入っていたのがすべてのはじまりだった。ちらしといっても広告ではなくちらし寿司である。ポストかと思ったものはホストで、要はホストが家の前でちらし寿司を食っていたのである。いや食っていたのではなく、繰っていたのかもしれない。と…

短篇小説「かもしれない刑事」

「こいつが犯人かもしれないし、あいつが犯人かもしれない。犯人かもしれなくない奴なんて、この地球上には誰ひとりいないのかもしれない」かもしれない刑事は、あらゆる可能性を信じる男だ。彼にとって確率の高低は意味をなさない。1%も99%も、「可能性が…

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