泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

短篇小説「いい意味で唯々男」

飯田唯々男はいい意味でいい加減な男だった。唯々男はいつもいいスーツをいい具合に着崩していたが、そのラフさが彼をいい意味でいい人に見せていた。そのうえ唯々男は近ごろいい感じに太ってきているため、勢いよく息を吸い込んでスーツのボタンを留めると…

レトロで新しく、ダサくてお洒落、そして激しくも美しい謎の幽霊バンド「GHOST」がとにかく素晴らしい

魅力的なものというのは、時に「二律背反」の要素を兼ね備えているものだが、このスウェーデンのメタルバンドGHOSTほどその両極が入り交じることで魅力を生み出しているアーティストも珍しい。実は2016年、個人的に最も衝撃を受けたのが、以下に挙げるこの「…

短篇小説「天天天職」

どんな仕事にもその職務内で発揮される「才能」というものがあり、逆にいえば人にはその「才能」を生かす「天職」というものがあるらしい。「才能」というのはけっして、スポーツ選手や芸術家にのみ求められるものではない。映画チケットのもぎりにすら「才…

短篇小説「もはやがばわないばあちゃん」

がばいばあちゃんが思ったほどがばわなくなったのはいつの日からだろうか。 がばいばあちゃんは、とにかくいつでも誰にでもがばうばあちゃんだった。イケメンにも不細工にも分けへだてなくがばうし、いったんがばうと決めたら老若男女も国籍も問わない。西に…

書評『騎士団長殺し』/村上春樹 ~ダイソン的吸引力で読者を物語へと引き込む「ほのめかし文学」~

本と人との関係というのは人間同士の関係と同じで、趣味嗜好は合わなくても友達や恋人になれるというケースが少なからずある。僕にとって村上春樹の作品とは、常にそういう存在であるのかもしれない。この『騎士団長殺し』という作品をいま読み終えて、改め…

短篇小説「河童の一日 其ノ十二」

河童にだってお洒落は必要だ。でもお洒落にはリスクがつきもので。学校から帰ると、茨城から流れて来た爺ちゃんが居間で甲羅を磨いていた。人間だと乾布摩擦というのかもしれないが、フォームは同じでもやっていることの意味は全然違う。ボーリングとスカー…

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