泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

書評(小説以外)

書評『無理ゲー社会』/橘玲

読み終えて残るのは、ディストピア小説の読後感である。だがこれは、フィクションではないようだ。この先に透けて見える未来像が現実になるかどうかはわからないが、少なくともスタート地点がいまここにある現実であることに、間違いはない。そう、残念なが…

書評『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』/デヴィッド・グレーバー

ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論作者:デヴィッド・グレーバー岩波書店Amazon僕はこれまでことあるごとに、「日本では、どういうわけか楽しそうに仕事をしている人の給料が安い」と感じてきた。思い知らされてきたと言ってもいい。もちろん、…

書評『アーセン・ヴェンゲル アーセナルの真実』/ジョン・クロス著 岩崎晋也訳

アーセン・ヴェンゲル ―アーセナルの真実―作者:ジョン・クロス東洋館出版社Amazonまるで司馬遼太郎の長篇歴史小説を読破したような、重厚な読後感に包まれている。軽い気持ちで読みはじめたはずが、徐々に読み続けることにある種のしんどさを感じるようにな…

『若い読者のための世界史』(上・下)/エルンスト・H・ゴンブリッチ

世界史への入口として最適の書である。世界史アレルギーの人にこそお勧めしたい。大学受験で日本史を選択した僕も、その一人として読んだ。ちなみに若くはない。しかし門はここに開かれている。とはいえ世界史の知識が、完全に網羅されているわけではない。…

『みんな!エスパーだよ!』第4巻/若杉公徳

超能力を身につけてしまった登場人物たちが、とにかくその能力を無駄遣い(特にエロ方面)しまくるという漫画。基本的には、同じく学園コメディの名作『ゴリラーマン』的な空気を感じさせるという意味で、『ヤンマガ』の中心線にある伝統を継ぐ作品と言って…

笑いの中に現実を、厭世観の奥に希望を〜『間抜けの構造』/ビートたけし

「間抜けの構造」というよりは、むしろ「“間”(ま)の重要性」について語った本である。身のまわりの間抜けな人々をコミカルに紹介する第一章は、読み手のハードルを下げるためのつかみとしては機能しているが、まったく本題ではない。自らが心血を注いでき…

『バクマン。』10/大場つぐみ・小畑健

アニメ化のタイミングに合わせて、一気に面白くなってきた。いや、一気に面白くしてきた、というほうが正しいかもしれない。その力の入れようは、主人公たちが描く作品、つまり漫画内漫画の充実度が物語る。これまでは単に方向性を示すためのみに提示されて…

『12枚のアルバム』/中原昌也

音楽を「良い」と褒めるのは簡単だが、実はその「良さ」にもさまざまな種類がある。たとえば、「格好良い=良い」なのか「美しい=良い」なのか「面白い=良い」なのか「聴きやすい=良い」なのか「前代未聞=良い」なのか。それ以外にも評価基準はいろいろ…

『読んでいない本について堂々と語る方法』/ピエール・バイヤール

タイトルが素晴らしい。素晴らしいのはタイトルだけだ。まず題名からして本書が、いわゆる「実用書」であるのか、実用書を装った「お笑い本」なのか判断しかねるが、読んでみればどちらでもない。「方法」と謳っているわりには方法にまでは永遠に辿りつかず…

「笑い」に忠誠を誓う男

『TVBros.』最新号に、天久聖一の手による電気グルーヴのインタビュー企画が掲載されている。「手による」というのは、読んでいてまさに「手による」という感じがするからで、もちろん単なるインタビューではない。この組み合わせはもうすっかり恒例になって…

『バクマン。』4/大場つぐみ・小畑健

つくづく男同士の友情ってのは面倒くさいもんだなと思う。だがその面倒くさい部分を取り逃さずに描き切るのが、少年漫画最大の魅力でもある。たとえば『スラムダンク』における三井のバスケに対する複雑な思いとか、『ドラゴンボール』でのベジータの立ち位…

『ニッポンの思想』/佐々木敦

批評が外部から行われる行為だとするならば、批評家でありながら「思想」を本業としない作者の立ち位置は、「思想」を俯瞰するうえで絶好の視界を確保していると思われる。特に難しい物事を解きほぐして語るときほど外部の視点が必要となるもので、本書に挙…

『バクマン。』3/大場つぐみ・小畑健

ここに来て急速に面白くなってきた。前巻までのレビューで指摘した問題点は、何ひとつ解決されないままに。このぶっちぎり具合はむしろ頼もしい。問題点をちまちまと一つ一つ修復してゆくような対処療法は、完成度を上げることにはなっても、実のところ面白…

『小説作法ABC』/島田雅彦

タイトルに偽りはない。つまり本書が教えてくれるのは、作法のみでありABCまでである。それ以上は、あえて踏み込んでいないように見える。 著者はあとがきで、この本を自ら教科書と呼んでいる。本書は大学の講義をまとめたもので、「全国の大学、高校、コミ…

『バクマン。』2/大場つぐみ・小畑健

壮絶なスピード感である。とにかく展開が速い速い。まるで何者かに追われているよう。だがその裏では、ないがしろになっている要素が山積しているのも事実である。キャラを深めるには、丁寧な感情描写と主人公の内面を浮かび上がらせる日常的エピソードが不…

『バクマン。』1/大場つぐみ・小畑健

言わずと知れた『DEATH NOTE』コンビによる二作目。漫画家を目指す主人公たちを描く現代版『まんが道』だが、もちろんその趣は大きく異なる。ストーリーを走らせるには「キャラクター」と「動機」を二本柱として機能させる必要があるが、この作品の場合、明…

えのき・どいちろう? えの・きどいちろう?

妙な塩梅 (中公文庫)作者:えのきど いちろう中央公論社Amazonえのきどいちろうはどれくらい有名なのだろう? だいぶ前に買っておいたままになっていた、えのきどいちろうの『妙な塩梅』というエッセイ集を引っ張りだして読んでみたら、これがものすごく面白…

『新しいバカドリル』/タナカカツキ・天久聖一

笑いというのは基本的に世の中の欺瞞を暴き現実をあぶり出す機能を持つ。 たとえばビートたけしは「赤信号、みんなで渡れば怖くない」と叫ぶことで、見事に民衆の集団心理を言い当ててみせた。それはたとえば昨今の「空気を読む」文化にまで当てはまる、日本…

『去年ルノアールで 完全版』/せきしろ

せきしろ氏は偉大なる傍観者である。 誰もが社会に参加したがり、発言権を主張してあえぐ今の世。ある者は路上でギター片手にありきたりな愛の言葉を叫び、ある者は凄まじい「上から目線」で悩める若者に空虚な人生訓を提供する。 だがみんな忘れていないだ…

『犬のジュース屋さんZ』1巻/おおひなたごう

ネタ選びのセンスと、それを料理する腕前が高次元で両立。結果、キャッチーさも深遠さもいとしさも切なさも心強さも、さらには部屋とYシャツと私あたりまで、すべてがここに融合し、作者独特の世界を作り上げている。もしかするとこれだけの要素をいっぺんに…

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