泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

短篇小説「冒険老婆」

男が街の小さな煙草屋を訪れ、窓口に座る老婆に声をかけた。よく晴れた春の日だった。「今日はあいにくの天気ですね」 「いやまったく、そうだねぇ」 老婆はおもむろに立ち上がると、窓口の脇にある勝手口の戸を開いた。男は身をかがめてそこから中へと入っ…

短篇小説「挟まれたい男」

ある朝男はマットレスと掛け布団のあいだ、いわゆる冷静と情熱のあいだに挟まれた状態で目が覚めた。つまり至って標準的な起床であったということになる。ただこの日に限っては、なぜか布団を上から「掛けている」というのではなく、上は布団から、下はマッ…

短篇小説「もしも氏」

我が愛すべき喪師喪史郎は、朝起きて顔を洗い朝食を摂って歯を磨くと、スーツに着替えて満員電車に飛び乗った。もしも彼がサラリーマンであったとすればだが。 しかし実際のところ史郎はサラリーマンではなかったので、歯を磨くまでは一緒だがユニフォームに…

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