泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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小説〈非戦力系刑事シリーズ〉

短篇小説「未遂刑事」

未遂刑事は未遂事件しか扱わない特殊な刑事だ。彼が関わる事件は殺人未遂、強盗未遂など未遂事件ばかりであり、その解決もまた未遂に終わることを運命づけられている。 未遂刑事の行動は仕事に限らず日常の些事に至るまで、何事も未遂に終わる。だから彼は未…

短篇小説「喩え刑事」

管轄内で立てこもり事件が発生したとの通報を受け、喩え刑事がパトカーで現場へ急行した。五十代の男が、別れた妻とその娘を人質に立てこもっているという。 喩え刑事は、助手席に乗るゆるふわパーマの新米刑事に言うでもなく呟いた。「いま俺たちは、まるで…

短篇小説「アバウト刑事」

トレンチコートのようでトレンチコートでないような、いやコートとすら言えないかもしれないアバウトな上っ張りの襟のような一帯を立て、今日もアバウト刑事が事件の捜査を開始する。具体的にそれがどんな事件かと問われれば答えようがない。なぜならば彼は…

短篇小説「ポジティブ刑事」

ポジティブ刑事が現場へ急行している。拳銃を忘れて走り出してしまったがきっと大丈夫だろう。なぜなら彼はポジティブ刑事だからだ。武器などないほうが物事はスムーズに運ぶことも時にはある。どんなにネガティブな状況であっても、それをポジティブに捉え…

短篇小説「かもしれない刑事」

「こいつが犯人かもしれないし、あいつが犯人かもしれない。犯人かもしれなくない奴なんて、この地球上には誰ひとりいないのかもしれない」かもしれない刑事は、あらゆる可能性を信じる男だ。彼にとって確率の高低は意味をなさない。1%も99%も、「可能性が…

短篇小説「うろおぼ刑事」

今まさに、うろおぼ刑事が万事うろおぼえなまま現場へ突入しようとしている。懇意にしている情報屋から、「海沿いの第三倉庫でこのあと麻薬取引が行われる」という情報を聞きつけたような気がしないでもないからである。第二倉庫だったかもしれないし、街道…

短篇小説「言うだけ刑事」

「おい、待て! さもないと撃つぞ!」 言うだけ刑事が、今日も威勢よく声を張り上げる。しかしそこはもちろん言うだけ刑事。ただ単にそう言っているというだけの話で、拳銃を抜く素振りもなければ、追いかけることすらしない。公園のベンチで悠然とカップラ…

悪戯短篇小説「タテ割り刑事」

張り込み刑事が今日も現場に張り込んでいる。張り込み刑事は文字どおりの張り込み刑事であるから、張り込む以外の仕事は何もしないし教わってもいない。手錠の掛けかたすら知らないし、そもそもそんなもの所持してもいない。銃なんてもってのほかだ。それぞ…

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