待ちに待った準決勝1試合目は、スペイン対フランス。
フランスのスタメンにグリーズマンがいない時点で、頭に大きめの「?」が浮かぶ。出場停止ではないようだし、後半から出てきたことを考えると怪我でもなさそうだ。コンディションの問題はいくらかあったのかもしれないが、誰が見てもこのチームの軸である彼をこの大事な一戦で外すという選択肢は、まったく想像していなかった。
このフランス代表はエムバペのチームに見せかけて、実はグリーズマンのチームであるという共通認識があるように思っていたが、少なくとも監督のデシャンにそんな考えはなかったということか。それがまず衝撃だった。
リンク役であるグリーズマンのいないフランスは、案の定後ろと前がつながらない。そうなるとそもそもつなぎが上手くプレスもサボらないスペインに、ボールを支配されるのは当然の報い。
そのスペインは、怪我人や出場停止により変更を強いられたポジションが少なくないが、控えが出てきてもその質にまったく遜色がない。特に2人を入れ替えたバックラインの守備には不安があったが、その前でロドリという番人が立ちはだかっていることもあって、大きく崩れることはなかった。
それにしてもヤマルとオルモ。ヤマルのシュート軌道は見事というほかなく、打つタイミングも含めて明らかな才能を見せつけた。メッシと比較されることも多いようだが、キックの精度に関してはむしろメッシより上かもしれない。ドリブルはもちろんあそこまで予測不能ではないが、ミドルシュートやクロスの選択肢が加わるぶん、相手にとっては厄介かもしれない。
オルモはボールコントロールが鮮やかで、いまとなっては彼が控えであったことが信じられず、10番をつけていることにも充分に納得がいく。なぜ彼がビッグクラブにいないのか、もはや不思議なレベルである。
先制されても形を崩さなかったスペインと、先制したにもかかわらず形が定まらなかったフランス。グリーズマンが最初からいればここまで無軌道な攻撃にはならなかったような気がするが、そこも含めてデシャンの采配には疑問が残った。後半の交代カードの切りかたにも、明確な得点へのイメージが描けているようには思えず。
残るイングランドとオランダを含めても、スペインの組織力と連動性は頭ひとつ抜けているように見える。どちらが上がってきても、フランスのような戦いを強いられることになるだろう。個人的にはイングランドとの決勝を見たいが、果たしてどちらが来るのか。