泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

短篇小説「AでもないBでもない」

背が高くも低くもない、特に男っぽいわけでも女っぽいわけでもない男が、お昼すぎとも夕食前とも言えない時間帯に、定食屋にもレストランにも見えない飲食店で、昼定食でもランチでもない何かを食べていた。男のほかに客はいなかった。 男が店に入ってきた瞬…

短篇小説「逆接族」

つい先日、関東地方にいわゆる「火球」が落下したのは記憶に新しい。だがそれはもちろん、一般市民の混乱を防ぐために画策された、為政者サイドによる隠蔽工作に過ぎない。実際には皆さんご期待のとおり、そのとき未確認飛行物体が地球上に着陸したのである…

短篇小説「誰得師匠」

今日も劇場の楽屋は誰得師匠のおかげでてんやわんやである。楽屋口から出たり入ったりしながら、トイレへ行った一瞬の隙に連れてきた鳩がいなくなったと誰得師匠が騒いでいる。担当の新人マネージャーを呼びつけては鳩の生態を語って聴かせ、劇場の女性スタ…

ディスクレビュー『WE ARE THE NIGHT』/MAGNUS KARLSSON'S FREE FALL

ウィー・アー・ザ・ナイトアーティスト:マグナス・カールソンズ・フリー・フォール発売日: 2020/06/10メディア: CD良く言えば引っ張りだこ、悪く言えば尻軽もしくは器用貧乏なギタリスト、マグナス・カールソンの名を冠した「本業バンド」待望の3rdアルバム…

短篇小説「自転車通学者の恋」

純介は高校時代、男子校へ自転車で通っていた。おかげで彼はひとりの女子ともつきあうことができなかった。 だがそれはけっして、貴重な青春期の行き先が男の園だったからではない。純介は、すべては自転車通学のせいだと思っている。自転車通学という手段は…

短篇小説「課金村」

この村ではなにもかもが無料である。一見そのように見える。本当にそうなのかもしれない。本当はそうなのかもしれない。ということは、そうじゃないのかもしれない。 朝から公園を散歩していた私は、喉が渇いてきたので自販機でジュースを購入しようと考える…

短篇小説「連&動」

膝五郎が街でたい焼きを食べ歩いている。いや正確には究極のたい焼きを求めて何軒もまわっているというわけではなく、単に歩きながら手近な一匹を食べているだけなので「歩き食べている」と言ったほうがいい。日本語の複合動詞では、後に来る動詞のほうが主…

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