泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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2016-01-01から1年間の記事一覧

連載小説「二言武士」/第二言:シェフの気まぐれ団子

刀剣ショップにて注文購入した刀を即座に「バールのようなもの」へと交換してもらい、その「バールのようなもの」でそこらじゅうの水道を破壊し尽くした挙げ句、やっぱり飽きたのでまた刀と替えてもらった覆之介は、結局その刀が気に入らずまたもや刀剣ショ…

連載小説「二言武士」/第一言:バールのようなもの

「武士に二言はない」とよく言われるが覆之介は二言あるタイプの武士だった。覆之介は今日、刀剣ショップへ注文しておいた刀を受け取りにいった。しかし実物を見てみたらその刀はカタログの写真と全然違って、なんかフォルムが思ったほどじゃなかったので、…

サンタクロース目撃情報

今年も12月24日から25日にかけて、日本各地でサンタクロースが目撃されている。ここにその目撃情報をまとめてみたい。言うまでもなくすべてれっきとした、由緒なき、正真正銘の幻影である。 34歳・主婦「トナカイは大量にリストラされたらしくて、大きな荷台…

短篇小説「河童の一日 其ノ十一」

今年の河童新語流行語大賞が「河童、皿割れるってよ」に決定した。今さら感が凄いけど、間違ってはいない。それに便乗して「ワレモノ注意!」のステッカーを河原で売り出す輩がさっそく登場したが、そんなもの恥ずかしくて頭に貼れるはずがない。通気性の問…

短篇小説「眠れる盛り土美女」

ある真夜中、床下からザクザクと不穏な音がするのを僕は聴いたのだった。トイレに起きた僕はたしかにその音と振動を感じたが、家の前をトラックか何かが通ったのだろうと思い、その日は用を足すとそのまま寝てしまった。平屋建てアパートの一階は、何かとよ…

なんでも王選手

「マイナンバーを送れという旨の書類が来たのですが、マイナンバーの通知書が見つからないので、代わりに王選手の背番号を書いて送れば良いですか?」「素敵な女性に電話番号を尋ねたら、王選手の背番号と同じだと言われたのですが、イチかバチか掛けてみる…

【2016年】年間ベスト・アルバム10選(ハード・ロック/ヘヴィ・メタル)

1位『SORCERESS』/OPETH SORCERESS-DIGIPAKアーティスト: OPETH出版社/メーカー: NUCLE発売日: 2016/09/30メディア: CDこの商品を含むブログを見るプログレッシヴ・ロックが追い求めてきたものは、難解さ、複雑さ、高度な技術などではなく、その先にある美…

新語・流行語年間大賞語「神ってる」が物足りないので様々にカミらせてみる

『新語・流行語大賞2016』の年間大賞語に選ばれた「神ってる」という言葉。受賞の勢いに乗ってメディアだけでなく政治家までもがこぞって使い出しているが、これがどうにも物足りない。そう感じるのは、そもそも意味的には「神懸かってる」という既存の言葉…

短篇小説「万物ファースト社会」

果物ファーストの八百屋と珈琲ファーストの喫茶店とパーマネントファーストの美容院がショップファーストの商店街に並んでいる。いつの間にやら、この世はすっかりファーストまみれになってしまった。果物ファーストの八百屋で野菜を買うともちろん店主に怒…

今さら『君の名は』あらすじ脳内諸説~信じるか信じないかは自分のさじ加減です~

大ヒット映画『君の名は』をいまだ観ていない僕の脳内で、そのあらすじに関する諸説がいくつか浮かび上がり、情報が錯綜している。あらすじを想像する手がかりは、「入れ替わり」「タイムリープ」「ラブストーリー」の三点のみ。ここにその諸説をまとめ、特…

最近聴読作品所感~穏やかに見えて先鋭~

近ごろ読んだもの聴いたもの何かしらの引っかかりがあったもの。 【小説】★『ある完璧な一日』/マルタン・パージュ ある完璧な一日作者: マルタン・パージュ,河村真紀子出版社/メーカー: 近代文藝社発売日: 2016/09/30メディア: 単行本この商品を含むブログ…

短篇小説「河童の一日 其ノ十」

河童は冬が苦手だ。というと「いつも裸で寒いから」と思われがちだが、そこは慣れでなんとかなる。近年ではヒートテックの甲羅も、すっかり普及してきたし。だから本当の問題は乾燥のほうだ。河童は乾くと急激に弱体化する生物である。特に頭部に載っかった…

我が憧れの「ナッツ・リターン」~『新語流行語大賞2016』発表を待たずに~

本日17時、今年の新語流行語大賞が決まるらしい。だがそんなことはどうでもいい。今年も勝手に恒例にしている「新語流行語大賞全部入り小説」を書きながら、「なんで『ナッツ・リターン』が入ってないんだ!」と憤っていたことを思い出したからだ。しかし調…

短篇小説「柿食えば鐘鳴る機」

「こないだ寺で柿食ってたらさ、ちょうど鐘が鳴ったんだよね」政尾加志貴(まさお・かしき)が自慢の横顔を見せつけながら得意気にそう言うと、友人らは「ま、そういうことってあるよね」と軽く受け流したので、加志貴は意地になって、「……てゆうことが今年…

【簡単求人】誰にでもできる簡単なお仕事です!

【レインボーブリッジを封鎖するだけの、誰にでもできる簡単なお仕事です!】【なんでもないようなことを幸せだったと思うだけの、誰にでもできる簡単なお仕事です!】【治りかけたかさぶたを剥がすだけの、誰にでもできる簡単なお仕事です!】【あの鐘を鳴…

【タイプ別】「メタルはメタリカしか聴かない」という人が次に聴くべき名盤5選

METALLICAというバンドは、間違いなくハード・ロック/ヘヴィ・メタルという音楽を世界中に行き渡らせることに貢献してきた。特に2000万枚以上を売り上げ、いまだビルボードにチャートインしている91年作『METALLICA』(通称「ブラックアルバム」)をきっか…

短篇小説「RP爺」

ヒント爺は、今日もRPGの世界を旅する勇者たちに情報を与えるためだけに生きている。この世界はすっかり荒廃してしまった。しかしそれがなぜなのかは、ヒント爺風情にはわからない。彼に与えられている情報は、あまりにも少ないからだ。いまヒント爺の住んで…

ハイブリッド車と今川家

先日道を歩行していたら、一分間に二度も後方から迫るハイブリッド車に膝の裏を轢かれそうになった。まさに静かなること山の如し。鋼鉄の膝カックン。静けさは時に狂気を感じさせることがあるが、あの静けさは凶器である。おかげで桶狭間において織田軍の伏…

短篇小説「炎上ビジネス feat. マッチ売りの少女」

ある冬の夜、少女が路上でマッチを売っていた。少女がマッチを売っていたのは、マッチを買うおじさんがいるからであった。好きで売っているわけではない。マッチを買うおじさんもまた、マッチが好きなわけでも必要なわけでもなかった、マッチを買うおばさん…

メタリカ新作ディスクレビュー『HARDWIRED…TO SELF-DESTRUCT』/METALLICA

◆METALLICAというバンドの本質的魅力を炙り出すための試金石的作品――あくまでも試金石――METALLICA8年ぶりの新作は、まるで「これまでお前はMETALLICAのどこに魅力を感じてきたのか?」と厳しく問いかけるような、ある種の試金石のようなアルバムである。しか…

「新語流行語全部入り小説2016」

歩きスマホでポケモンGOをしながら都内のあちこちへ片手間に火を噴きまくるジカ熱のシン・ゴジラを、もはや民泊中のアモーレたちが築いた愛の盛り土だけで防ぐことは不可能だった。しかも、その盛り土すら実際には行われていなかったという事実が発覚したと…

短篇小説「頭痛が痛い田村」

頭痛が痛い田村は腹痛も痛くなってきたような気がしているが腹痛は痛くない。膝痛が痛いのはいつの間にか治って完治していたし、歯痛が痛いのも半年前に治療して治したばかりだからこの問題は問題ない。虫歯が蝕まれていたのだ。ただし寒さが寒い季節には、…

ディスクレビュー『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』/BON JOVI

◆リッチーの不在が呼び込んだ、思いがけぬ歌メロの充実バンドといえば、「複数の個性が混ざり合うことによって生み出される何か」を誰もが期待する。それはBON JOVIのように、個人名を掲げたバンドでも変わりはない。BON JOVIはやはり、ジョン・ボン・ジョヴ…

短篇小説「スプーン女子」

「スプーンおばさん」こと丸坂匙代は、一切の優柔不断を許さない性格に生まれた。おそらくそれは、スプーンという「片面(=凹面)しか使用しない道具」を携えてこの世に生を受けてしまったからだろう。右手に持って生まれたものがスプーンではなく箸であっ…

トランプがいま聴くべき13曲と、その曲名をつぎはぎして無理やり紡いだ手紙のようなもの

拝啓 暴言王様におかれましては、時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。このたびヒラリー・クリントンとの「War Of Words」に勝利し、「When I’m President」になったものの、直後からデモが起こるなどして、早くも「The Enemy Inside」な貴方。そ…

トランプが家康でヒラリーが淀君で夫のビルは草履取り? 米大統領選を戦国時代にたとえて説得力を喪失する話

このたびのアメリカ大統領選において、ドナルド・トランプがショッキングな勝利を収めた。大統領選といえばもちろん政治の話だ。僕も政治学科出身者のはしくれとして何かを言ってみようと思ったが、大学で何かを学んだ覚えがないということをすぐに思い出し…

短篇小説「犯罪動機One & Only~それでもボクはやってます~」

刑事「お前がやったんだな。で、動機は?」 犯人「はい、ついカッとなって」 刑事「ありがちだな。工夫がない」 犯人「えっ、没とかあるんすか? 動機なのに?」 刑事「当たり前だ。没のない社会があるか。誰だって上司や取引先に没を出されて、それでもやり…

アーセン・ヴェンゲルの、思考回路を言語化する能力

我々は、けっして思ったことを完璧に言語化して伝えられるわけではない。そこには必ずいくらかの劣化が伴い、その「言いきれなかった部分」が誤解の種になることも少なくない。だが欧米のトップアスリートや指導者たちの言葉に接していると、「この人、もの…

短篇小説「おとぼけフランス人シラーヌ・ゾンゼーヌ」

「ハテ、ナンノコトデスカナ?」ホームセンターから一歩出たところを取り押さえられたフランス人シラーヌ・ゾンゼーヌは、ロングコートのポケットをパンパンに膨らませながら、腕を掴んできた万引きGメンの女・東海林メアリーにそう言い放ったのだった。ちな…

少年は窓から逃げる~ブログタイトル画像改変顛末記~

なんとなく思い立って、ブログのタイトルバックに画像を入れてみることにした。といっても、特に明確なコンセプトもなければ、この嘘八百のブログタイトルにフィットした画像などまったく欲しくもない。そうなると、選ぶ基準というものが本当になんにもなく…

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