短篇小説
「最強河童が来るってばよ! 最強河童が来るってばよ!」 今日は朝からじいちゃんがなぜかナルト口調でそう繰り返しながら、食卓の脇にあぐらをかいて背中からはずした甲羅にぶっとい釘を打ちまくっていた。「なんで甲羅壊してんの?」 僕が素直に疑問をぶつ…
「この中にいる、犯人は!」 叫び声を上げた、商店街のど真ん中で、ひとりの探偵が。襟を立てていた、彼は、トレンチコートの。名探偵と呼ばれていた、もちろん自称ではあったが、そのつけ髭の男は。「名にかけて、じっちゃんの!」 決め台詞だった、それが…
『ちょっとだけカッパー』――今期放送してるドラマの中に河童が入り込めそうなタイトルがあったので、ちょっとだけモジッてみた。 もちろん原題は『ちょっとだけエスパー』だけど、人がちょっとだけ河童になったらいったいどうなるんだろう。頭頂部だけちょっ…
「お前、立候補してみたら?」 算数の授業中に前の席の小仏くんが急に振り向いてそう言ってきたので、思わず頭の皿が浮いた。そして皿と頭皮の隙間を、冷たい風が通り抜けるのを感じた。 どうも近ごろヘッドソーサーの具合がイマイチなのか、動揺すると皿が…
「ひょうろくのビジュイイじゃん」 じわじわと迫り来る物価高の影響下、エッホエッホと日本中に古古古米を売り歩くおてつたびの途中。カジュアルな温泉旅館つまりオンカジの和室に設置されたオールドメディアで、過酷なドッキリの餌食になっているひょうろく…
「お前をカッパ巻きにしてやろうか?」 放課後にクラスメイトの小暮君とカラオケに行ったら、マイク越しにいきなりそう言われて震え上がってしまった。なんでそんな歌を知ってるのか知らないけど、なんでも苗字がおんなじ人が歌っていた昔の曲の歌詞を僕向け…
迷った末に、わたしは電話をかけることにした。「はい、ことわざサービスセンターです。ご用件をお聞かせ願えますでしょうか?」 「あのー、先日こちらでことわざを購入させていただいたんですが……」 「なるほど、ご購入後のご相談ですね。そうなりますと、…
「かかったな!」 穴の上からわたしを見下ろしながらそう言っているのは、幼なじみのひろ志であった。久々に故郷へ帰ってきたところ、実家の庭先でわたしは落とし穴に落とされていたのだ。十年ぶりの再会にしては、ずいぶんと手荒なマネをしやがる。「そっち…
首園直樹は近ごろ寝覚めが悪いような気がする。きっとストレートネックのせいだ。そういえば靴底の減りも妙に早いような気がしないでもない。それもストレートネックのせいなんじゃないだろうか。階段を降りるとき膝が痛いのも年に二度ぎっくり腰になるのも…
今日も倍速刑事が商店街を倍速で駆け抜けている。倍速で食い逃げ犯を追いかけているのだ。 昼休みに町中華のカウンターで出てきたばかりのラーメンに口をつけた刹那、その一番奥の席から黒いキャップをかぶった男がすっくと立ち上がり、何も言わずに店外へと…
神社の賽銭箱に小銭を投げて手を合わせ、頭の中で願いごとを繰り返していると、どこからともなく強めにエコーのかかった声が響いてきた。「ならば次の宝くじを買うが良い」 わたしはこれが神の啓示というものなのかと思った。しかしそれ以前に気になることが…
「あなた、お腹が痛いんじゃないですか?」 会社から駅へと向かう帰り道を歩いていると、若い女性からそう声をかけられた。わたしは一日の業務を終えて、ひどく疲れた顔をしていたのかもしれない。だがたしかにお腹は空いていたがまったく痛くはなかったので…
その日は朝から、いつもとは違う風が吹いていたように思う。 朝の食卓につくと、いつもは半熟の目玉焼きの真ん中を箸で突き破ってから食べる父が、白身から黄身の周囲を丁寧にくり抜いてから口に運んでいた。どういう風の吹きまわしであろうか。 ちなみに父…
想田佑介は、いつも自分ばかり叱られているような気がした。周囲とまったく同じようなことをしているつもりなのに、いつだってなぜか自分だけが叱られる。しかもそのときに言われる台詞は、なぜかいつも決まっているのだった。 つい先日もそんなことがあった…
いつのまにやら本数が増えすぎて自分でも把握できなくなってきたので、とりあえずリストを作ってみました。上のほうが新しく、下にいくほど古いものになります。電子書籍にしか掲載していないものもありますが、そちらも一番下のリンクから無料でダウンロー…
ドキュメンタリー番組の最後は、「とは」に対する答えで締めくくるのがお約束というものだ。だが超一流の投打二刀流日本人メジャーリーガーが登場したこの日の『激熱大陸』は、惜しげもなくその質問から幕を開けたのだった。「あなたにとって、〈野球〉とは…
その朝、私は学校へは行かなかった。だがそれは、私が学生ではないからではなかった。だからといって会社へ行ったわけでもない。 もちろんそれは、その日出かけなかったという意味でもなかった。とはいえ私は海にも行かなかったし、スキー場にも行かなかった…
「ようこそ、ポリクルベリーの町へ!」 初めて足を踏み入れた町で最初にそう話しかけてきたのは、トレンチコートの襟を立てたいかにも怪しげな男であった。その言葉とは裏腹に、笑顔など微塵もない。それどころか男は眉間に深い皺を寄せ、警察手帳らしきもの…
新米刑事の未村が、コンビニであんパンと牛乳を買ってパトカーへと駆け戻ってきた。しかしそのタイミングは、実に間が抜けていた。それらは彼が影響を受けたテレビドラマによれば、あくまでも張り込み中における定番の食事ということになっている。しかしこ…
(※これはどうすれば風が吹くだけで桶屋が儲かるのかという、その道筋を考えるためだけに書かれた実験小説の第二弾である) 一陣の風が、吹いた。 山から降りてきたその風はアスファルトの上を滑り、大量のスギ花粉を運んだ。その花粉をめいっぱい吸い込んだ…
こつこつと書き溜めた短篇小説をなんとか自力で電子書籍化した『悪戯短篇小説集 耳毛に憧れたって駄目』。いまやその後に書いたものもこのブログに続々と蓄積されていっているけれど、そういえばあれっていつ出したんだっけ?――そう思ってAmazonのページで確…
「わかりみが深いわね」 辛子が頷きながらそう言うと、甘彦は小さく首をひねりながら、 「でもおかしみはないよね」と言った。 それはけっして楽しい話題ではなかったが、そんな中にも常におかしみを求めるのが甘彦だった。昼飯時のファミレスは混雑していて…
令和の米騒動の影響により給食にアサイーボウルばかり出てくるようになったアザラシ幼稚園に、裏金問題により江戸幕府界隈を追われた侍タイムスリッパーが保父として採用された。時に人殺しさえ厭わない幕府の過酷な労働に比べれば、それが明らかなホワイト…
ある日、男がコンビニで万引きの容疑をかけられた。昭和の工場長のような店長にバックヤードへ連れ込まれた男は、席に着くなり持っていたトートバックを丸ごとひっくり返される。十数個の菓子パンが、テーブルの上へ脱獄囚のように飛び出した。それを見た店…
テレビドラマ『ビーチボーイズ』の再放送を録りためていたやつを一気に観た。河童だってドラマは観るし、反町にも竹野内にも憧れるよねこんな世の中じゃPOISON。いや竹野内のほうは非POISON。 だけど耐水性を考えれば、むしろ水辺に生息する僕こそが「ビーチ…
【※以下の小説は、私がふと思いついた題名で小説を書くようChatGPTに依頼し、さらにはいくつかのリクエストを繰り返しながら複数のバージョンを出してもらい、それらを当方で比較検討しつつそれらを編集、融合、加筆訂正した結果、最終的にもっともらしい一…
初めて日本の空港に降り立ったボブは、ロビーですれ違ったマダムが携えていたなんでもない花柄のエコバッグにすっかり目を奪われると、青い瞳を溺れるほど潤ませて歓喜の声を上げた。「なんて美しい花! なんという大自然! 僕はもう感動でどうにも涙が止ま…
迅内はとにかくシゴデキな男だった。彼はいつもナルハヤであらゆるムリナンをゼンクリしてゆく。その鮮やかなシゴプリはまるでヨクデキのスパコンのようであると、社内ではウワモチである。 だがシゴデキな人間によくありがちなことだが、彼はオモガケな凡ミ…
うちの店には優秀な「子」がたくさんいる。子沢山という意味ではない。なぜならば主語は親ではなく店であるからだ。もちろん子供が働いているという意味でもない。そんなことをして労働基準法を堂々と犯すわけにもいかないし、その必要もない。みな立派に成…
薄暗いバーのカウンター席で、グラスを掲げた男が見知らぬ女の目の中を覗き込んで言った。「君の瞳に、乾杯!」 テーブルの上で蝋燭の炎が揺れた。女の心も同じように揺れることを、男はひそかに期待していた。「ずいぶんと歯の浮くような台詞ね」――女はそう…