泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

「新語・流行語全部入り小説2022」

とある昼下がり、頭から色とりどりの女性用下着をかぶった顔パンツ姿の中年男性五人が、中華料理屋の回転テーブルでガチ中華を囲んでいた。そこは店の前に猫よけのペットボトルが並び、軒先にカラスよけのCDが吊されているような古びた中華屋であった。 全員…

短篇小説「行間の多い料理店」

この世でもっとも味気ない読みものは、情報を伝えるためだけに存在する文章だ。その代表と言えるのが一覧表の類であり、場所が料理店であれば、それはメニューと呼ばれることになる。 私が先日初めて訪れたレストランにも、当然メニューというものがあった。…

時事コント「まさかり問答」

空港の保安検査場。ひとりの男が、セキュリティゲートを通過する。金属探知機「ピーッ!」 保安検査員A「ちょっと失礼します。なにか金属製のものはお持ちですか?」 男「特にないよ……あ、もしかしてベルトかな?」男、再びセキュリティゲートを通過。金属探…

人生半分損してる

人生の半分というのは、思いのほか小さな分量であるらしい。「ピクルス食べないの? それ人生の半分損してるよ」 酢漬けの半生。「おしぼりで顔拭かないの? それ人生の半分損してるよ」 なのに脇は拭くのね。「『ターミネーター』の1観たのに2観てないの? …

ディスクレビュー『THE TESTAMENT』/SEVENTH WONDER

ザ・テスタメントアーティスト:セヴンス・ワンダーマーキー・インコーポレイティドビクターAmazonより輪郭を明確にした歌メロの充実が、バンドの格をさらなるメジャー・フィールドへ押し上げるに違いない。そう確信させるに充分な、スウェーデンのプログレッ…

短篇小説「二次会の二次会」

今夜も我ら「二次会」は大いに盛り上がった。「二次会」といっても正確にはまだ「二次会」の一次会で、これから我々はいよいよ「二次会」の二次会へと向かうところだ。 我々が言うところの「二次会」というのは二次的、つまり各所で副次的な役割を果たす人間…

自作短篇小説「窓のない観覧車」をマインドマップ化する試み(本末転倒)

小説を書く手段として、いわゆる「マインドマップ」というものを使ってみようと思った。いま流行っているのか、それともだいぶ前から流行っているのかもしれないが、以前お笑い芸人のかが屋がネタ作りの際に使っていると聴いて、なんとなく気になってはいた…

短篇小説「窓のない観覧車」

窓のない観覧車に、髭のない少年が乗っていた。窓のない観覧車は不粋だが、髭のない少年は不粋とは言えないだろう。少年にこの先、髭が生えてくるかどうかはわからない。 もちろん高所からの絶景など、望むべくもない。だがどれだけ待っても観覧車に窓がつか…

短篇小説「帰ってきた失礼くん」

「失礼しま~す!」 今日も失礼くんが、元気よく知らない店に入りこんでゆく。本日の訪問先はパン屋だ。しかし失礼くんは特にパンを食べたいわけでも、誰かにおつかいを頼まれているわけでもない。ただ純粋に、失礼したい一心でそう言っているのだ。「ほら僕…

最近聴読目録

最近聴いたり読んだりした/している作品についての所感。 【音楽】 ◆『MY FATHER'S SON』/JANI LIIMATAINEN マイ・ファーザーズ・サンアーティスト:ヤニ・リマタイネンマーキー・インコーポレイティドビクターAmazon 元SONATA ARCTICAのギタリストのソロ作…

短篇小説「芝生はフーリッシュ」

どうやらわたしは公園のベンチで、サングラスを掛けたまま眠り込んでいたらしい。おかげで昼か夜か、起きてすぐにはわからなかった。サングラスを外すと、これまでに見たことのないような、色とりどりの世界が目の前に広がった。色とりどりにもほどがあった…

あぶないタッチ病

長年愛用していたiPhone 6が壊れた。かもしれない。かもしれなくないかもしれない。なんといっても「6」だ。いったい何世代前の機種ということになるのか。もちろん普段から動作は重い。それが故障による症状なのか、単に性能が時代に置いてけぼりを食ってい…

ディスクレビュー『THE ENDGAME』/TREAT

どんなに方向性の近い作品にも明確な違いがあり、どんなに安定したアーティストにも少なからず質的な波はある。全曲が名曲なんてことはあり得ないし、全作品が名盤であるアーティストもまずいない。だがそんなことをあえて書いてみたくなるのは、このTREATと…

【歌詞】「痩せずもがな~聴いてるだけで痩せる歌~」

微動だにせぬぐうたらな日も 餌を求めるわがままボディ 今日から食わぬと言いながら 明日こそはと先送り ぽっちゃりとデブの境界線 気づけば赤道より太い カロリーちょっとのつもりでも 摂取したのはキロカロリーキロは1000倍 器は満杯 卓に並べば けっきょ…

言語遊戯「俳句延長戦」

これまで当ブログでは「ことわざ延長戦」と称して、ことわざに何かしらのフレーズを勝手につけ足すことで、ことあるごとにその力を無効化してきた。tmykinoue.hatenablog.comなぜそんな必要が?それはさておき、ことわざの延長が可能ならば、ほかにも延長で…

令和十大あけましておめでとうございます2022

あけましておめでとうございます!(開かずの扉を金と権力で)あけましておめでとうございます!(こんなとこにいるはずもないのに路地裏の窓を)あけましておめでとうございます!(ミルクボーイがネタ冒頭で客席からもらった網戸を)あけましておめでとう…

【もしもシリーズ】もしもドラクエの防具屋にあの有名人の装備があったら

国民的RPGである『ドラゴンクエスト』シリーズには様々な武器や防具が登場する。中にはかなり入手困難なものもあって、しかし本当にレアな装備とは、有名人が実際に身につけている一点物ということになるのではないか。というわけで、(どういうわけ?)今回…

2021年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・ソング10選

1位「Everafter (feat. Tommi “Tuple” Salmela)」/CIRCUS OF ROCK Come One, Come Allアーティスト:Circus of RockFrontiersAmazonフィンランドのKING COMPANYのドラマー、ミルカ・ランタネンが立ち上げたプロジェクト作より、心温まるメロディを持つこの曲…

2021年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・アルバム10選

1位『X MARKS THE SPOT』/ART OF ILLUSION エックス・マークス・ザ・スポットアーティスト:アート・オヴ・イリュージョンマーキー・インコーポレイティドAmazon今年のはじめにこの作品のレビューを書いた時点で、すでに2021年のベストはこのアルバムになる…

書評『無理ゲー社会』/橘玲

読み終えて残るのは、ディストピア小説の読後感である。だがこれは、フィクションではないようだ。この先に透けて見える未来像が現実になるかどうかはわからないが、少なくともスタート地点がいまここにある現実であることに、間違いはない。そう、残念なが…

短篇小説「感謝しかない」

今朝はあやうく寝坊するところだったが、スマホのアラームがちゃんと鳴ってくれたお蔭で予定どおり起きることができた。スマホには感謝しかない。 それ以前にベッドがあるお蔭で、僕は寝坊するほどに眠ることができている。ベッドにも感謝しかない。 もちろ…

書評『いつか深い穴に落ちるまで』/山野辺太郎

まるで任天堂のような小説だ。荒唐無稽だからこそのワクワク感がある。けっして現実的な設定ではないのに、リアリティも手応えもふんだんにある。だとすればリアリティの正体とはいったいなんなのか。読み手にそんな根源的な疑問を抱かせるというのは、それ…

短篇小説「ワンオペ村」

同期一の出世頭と目されていた業田作一郎が、ある日仕事で重大なミスを犯した。彼はその責任を負わされて、このたび離島のワンオペ村へ飛ばされることになった。ワンオペ村はその名のとおり、何から何までワンオペでおこなわれると評判の村である。彼は転勤…

【考察】城本クリニックのCMの女性は、なぜあんなに転げまわっているのか?

CMというのはよくわからないもので、時にその難解さは哲学や純文学をも超える。単に何も考えずフィーリングで撮影しているだけなのかもしれないが、それにしたって無意味ほど難解なものはない。たとえば長年に渡って流れ続けている『城本クリニック』のこのC…

短篇小説「ガチ勢とその後続」

あるコンサート会場の入場口に、開演前の行列ができていた。その先頭に並んでいる第一の集団は、もちろんガチ勢であった。 ガチ勢のうしろには、マジ勢が陣取っていた。ガチ勢とマジ勢は、どちらがよりガチのファンで、どちらがよりマジのファンかで言い争っ…

短篇小説「話半分の男」

私と話半分の男の出会いは奇妙なものだった。ある日私が近所を散歩していると、蓋のない側溝に気をつけの姿勢で、仰向けに寝そべっている男が目に入った。その中年男性は、冬なのに半袖半ズボンを着用していた。私はなるべく目を合わせないように、その脇を…

聖徳太子式三十題噺「新語・流行語全部入り小説2021」

ある雨上がりの朝、古びたカエルのマスコットキャラクターが、SDGs(粗大ごみのsサイズ)のステッカーを貼られてごみ置き場に捨てられていた。それは昨日まで近所の薬局の店頭に立っていたものだった。粗大なのにsとは、大きいのか小さいのかわからない。 学…

短篇小説「匂わせの街」

冒険の途中でふと喉の渇きをおぼえたわたしは、夕暮れどきに立ち寄った街でカフェのドアを開けた。「いらっしゃい! そういえば最近、夜中になると二階から妙な物音がするんだよ」 カウンターでカップを拭っている髭のマスターが、ありがちな挨拶に続けてな…

145字小説「駆け出しのAI」

私の自動車にはAIが搭載されている。私はその実力を試すように、崖の手前に差しかかったところでAIへ指示を出す。「アホクサ、ブレーキかけて」 「はい、かしこまり」 すると自動車のブレーキが、脱兎のごとく駆け出した。私は奈落の底へと沈みゆくマイカー…

電子書籍『悪戯短篇小説集 耳毛に憧れたって駄目』無料配布キャンペーンのお知らせ2021…夏

なんとなくの思いつきで、久々に拙著電子書籍の無料配布キャンペーンを開催することにしました。シェフの気まぐれサラダと同程度の気まぐれで。見出しの最後にちょっとだけJ-WALK感。(気づいたところで何?)どれくらい気まぐれかというと、こうして久々と…

Copyright © 2008 泣きながら一気に書きました All Rights Reserved.