泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

書評『北京の秋』/ボリス・ヴィアン

フランス文学の異端児による奇譚。再読して改めて気づくのは、この作品がとにかく遊び心にあふれているということだ。そしてそれがなぜか哀しい。そんな作者の独特なスタンスを理解するためには、巻末の安部公房による解説にある、本作の謎めいた題名に触れ…

短篇小説「ABCマートの店内でだけ流れてるラジオ」

強く細かな雨がノイズのように降り注ぐ平日の昼下がり。差した形跡のない白い粉を吹いたビニール傘を手に、濡れそぼった姿で我がオフィスの会議室に現れた自称23歳の女は、面接官である私の目の前で、恐るべき志望動機を語ったのであった。「《ABCマートの店…

短篇小説「河童の一日~其ノ十八~」

近ごろ妙にヘッドソーサーが膨らんできたので、今日は街のiPhone修理屋へ行った。 知らない人も多い(そして知らない河童はいない)と思うが、河童の頭皿交換はiPhoneの修理屋で行ってもらえることになっている。もちろん裏メニューだが、要領はバッテリー交…

「邦ロック」の支配者

近ごろの若い人はどうやら、日本のロックのことを「邦ロック」と呼んでいる。この呼び方が、個人的には抜群に野暮ったく感じられるのだが、それはなぜか。これを真面目に考えてみたところで、正解などないことは最初からわかっている。いや先に言ってしまう…

歌詞“さくら”

さくらを見るかい?(Yeah!) さくらを見たかい?(Yet!) さくらを見たいかい?(Wanna!) さくらを見ていたいかい?(In the building!) だけどさくらは 映(ば)えるもんじゃない 見た目はほんと 単なるおばん 派手なセーター 着ちゃってさ くるくるパー…

とんがりコーンのとんがらせかた

とんがりコーンをとんがらせるのがいかに大変かという事実は、意外と知られていない。多くの人は、とんがりコーンが生まれつきとんがっていると思い込んでいることだろう。だがそれは大いなる勘違いである。生まれつきとんがっている不良がいないように、生…

ラーメン小袋攻城戦

僕らは相も変わらず「マジックカット」に翻弄されている。あの切れ目がないのに不思議と切れるマジカルな彼奴に。今日作ったカップ緬には三種類の小袋が入っていた。それが見事に(そして無駄に)三者三様で。第一の袋は、天地(上下)がギザギザになってい…

【当ブログへの入口】ウェルカム短篇小説おすすめ5選【もしかするとそのまま出口】

久しぶりに長編小説を書こうと思っていて、何かネタになるものはないかという浅ましい思いで、当ブログに書いた自作短篇小説を珍しく読み返してみたりしている。本来自分が書いたものを読み直すのは好きじゃないのだが、改めて読んでみるとまったく身に覚え…

言語遊戯「ことわざ延長戦」第3戦

「こと」ばの「わざ」というよりは、「こと」ばを「わざ」と使いにくい形にしてしまっているであろうことわざ「ちょい足し実験」も第3弾。前回までは、わりと上手いこといってやろう、という意欲がそれなりに見られたけれど、こうやって続けていくと徐々に脱…

言語遊戯「ことわざ延長戦」第2戦

前回が好評であるという思い込みに基づき、ことわざの後にフレーズを足してみたらどうなるか、ということわざ「ちょい足し実験」の第2弾をお送りしたい。こうなるといくらでもやりようはあるような気がしてきた。意味など、無理やりこねくり回していれば何か…

言語遊戯「ことわざ延長戦」

ことわざは短くまとまっているからこそ有用である。本来ならば長いこと説明しなければ伝わらないような人生の機微を、たった一行で伝えるからこそことわざには存在価値がある。きっとそうなんだろうと思う。だけどそれだけじゃないだろう。本来の言いたいこ…

スムーズに忘れるための覚え書き その1~藤原マリーゴールド

あいみょん「マリーゴールド」の歌詞にある有名な一節「麦わらの」に続くフレーズが思い出せず、つい「藤原の」と歌ってしまった場合、それに続くフレーズは「不比等」「道長」「組長」「フジモン」のいずれでも良い。また、最後の選択肢を取った場合、アー…

スマホゲームのハンドルネームどうつければいいのか問題

皆さんご存じではあると思うが、世界十大問題のひとつに「スマホゲームをプレイする際のハンドルネーム問題」というのがあって。僕はそんなにゲーム全般に常時興味があるほうでもなくて、やるゲームといったら戦国シミュレーションかサッカーかオートバイレ…

短篇小説「夢のまた夢のまた夢」

目が覚めると僕はプロ野球選手になっていた。これは僕が生まれてはじめて抱いた夢だ。寝て見る夢ではなく、起きて抱く夢だ。だからこれは夢の中の話ではなく、外の話ということになる。どちらが現実かなんて、取るに足らないことだろう。 しかしプロ野球選手…

短篇小説「過言禁止法」

SNSの流行により日本語は乱れに乱れた。どう乱れたかといえば端的に言って万事表現がオーバーになった。 短文の中で自己表現をするとなれば自然と過激な言葉に頼るようになる。さらには、ただ一方的に表現するだけでなく互いのリプライによる相乗効果も働く…

短篇小説「紙とペンともの言わぬ死体」

繁華街の路地裏で、紙とペンを持った男の死体が発見された。彼は死ぬ間際、いったい何をそこに書きつけようとしていたのか。 そこで真っ先に「遺書」と考えるのは、いかにも浅はかな素人推理である。なぜならば死体が着用していた上着のポケットからは、別に…

短篇小説「ALWAYS 二番目の銀次」

あまり知られていないが、あらゆるジャンルでコンスタントに二番手のポジションを獲得し続けてきた男がいる。男の名を銀次という。皮肉なことに、銀次はその出生からして二番目であった。だがそれは、いわゆる「次男」という意味ではなく。 山に、老夫婦が住…

短篇小説「フクロウこそすべて」

この世のすべてフクロウになったのは、いつからだったろうか。 ある日、意中の女性とデートしていた私は、一件目の盛りあがりを受けて、彼女を二件目に誘った。だがそこで彼女が発した言葉に、私は衝撃を隠せなかった。「ごめんなさい、今日はウチにフクロウ…

短篇小説「ことわざ殺人事件」

ある冬の朝、都心の路上で、腹部に餅屋の暖簾を被せられた中年男性の死体が発見された。男は一般的な背広姿、目立った外傷は見当たらず、死因は特定されていない。この不可解な死を解明するため、二名の刑事と一人の探偵が現場へと急行した。 初めにベテラン…

短篇小説「縁起者忙殺録」

幸介はとにかくかつぐ男だ。どれだけ重いものをかつぐのかといえば、彼のかつぐべきその総重量は甚だしく大きいと言わざるを得ないだろう。そう、彼は縁起をかつぐ男。成功体験の数だけ、かつぐべき縁起がある。 幸介は自身を幸福へと導く縁起を、それはもう…

短篇小説「筋肉との対話」

おい、オレの筋肉! やるのかい、やらないのかい、どっちなんだい? やるとしたらいつ、何を、どのようにやるのかい? 今すぐ、バーベルを、鬼のように上げるのかい? 今宵、ブルドーザーを、東京から大阪まで引っ張るのかい? あるいは明朝、ラジオ体操第2…

短篇小説「マジックカッター健」

マジックカッター健はどこからでも切れる。彼を切れさせるのに、切り込みなど必要ない。お肌だってツルツルだ。 マジックカッター健は、端から見れば何ひとつ原因が見当たらないのに切れる。しかし実を言うと、健には本当に切り込みがないのではない。彼の切…

書評『黄泥街』/残雪

「中国のカフカ」こと残雪による第一長編。作者名を聴いて、まずはイルカの名曲「なごり雪」が頭に流れる。カフカを彷彿とさせる不条理な予感は、冒頭の一文からして十二分に漂っている。《あの町のはずれには黄泥街という通りがあった。まざまざと覚えてい…

短篇小説「マウント屋」

仕事で大きなプロジェクトを成し遂げた翌日、私は必ずマウント屋へ行くことにしている。今日の私があるのは、すべてマウント屋のおかげだと思っている。 今夜も私は、任務達成の悦びと抜けきらない疲れに酔いしれた身体を引っさげて、会社帰りにマウント屋を…

短篇小説「つまらな先生」

つまらな先生はすなわちつまらないからつまらな先生と呼ばれているのであり、もしも一片でも彼に面白味のようなものがあったなら、そう呼ばれてはいないだろう。 つまらな先生の授業は、やはり滅法つまらない。しかし彼は自分の授業がつまらないのではなく、…

短篇小説「フェイク・オフィス」

六本木の高層階にあるオフィスで、振介は今日も働くフリをすることに忙しかった。 具体的にいえば振介はいま、プリントアウトした資料を見るフリをしながら、そこに書いてあるデータをノートPCに打ち込むフリをしている。 もっといえばその「資料」とはプリ…

日本十大あけましておめでとうございます2019

せめて年の初めくらいは、真面目にごあいさつをと思い。(思う自由) あけましておめでとうございます!(偉人の棺桶を)あけましておめでとうございます!(ようやく半熟になったかさぶたを)あけましておめでとうございます!(選挙ポスターの目に画鋲で穴…

2018年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・ソング10選

1位「Thousand Years」/BE THE WOLF弾けるポップセンスとめくるめくメロディ展開の妙。ギターと歌メロの容赦なきせめぎ合い。 現時点において、もっとも万人に開かれたハード・ロック。同じく秀逸なメロディが続けざまに放たれる「Here And Now」、冒頭を飾…

2018年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・アルバム10選

1位『TUNGUSKA』/TREAT ツングースカ【通常盤】アーティスト: トリート出版社/メーカー: FRONTIERS RECORDS Licensed by Frontiers Records s.r.l.発売日: 2018/09/05メディア: MP3 ダウンロードこの商品を含むブログを見る間違いなく、今年断トツで回数聴…

ネジゴンクエスト~真空のネジ穴~

日常には様々なミッションが潜んでいて、その規模が大きければまた達成感も大きいとは限らない。たとえば面白いゲームというのは達成感を得られるものだが、その面白さの主たる要因は何かというと、基本的には難易度設定であると思う。これは仕事でも遊びで…

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