泣きながら一気に書きました

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EURO2024日記~22日目~(了)

1ヶ月に渡る欧州の熱戦は、スペインの優勝で幕を閉じた。

前半は中盤でのボールの奪いあいが続き、互いになかなかシュートまでたどり着けないという、いかにも強豪同士の決勝戦らしい展開。しかし局面ごとの強度が高いため、退屈さは感じない。

緊迫した前半のあとには良くあることだが、後半開始直後にふと緩んだ隙を逃さず、絶賛売り出し中のヤマル×ウィリアムズという若手コンビが躍動してスペインが先制。なにしろ観ているこちらも油断していて、気づいたらネットにボールが吸い込まれていた。

イングランドは満を持してルーク・ショーを先発起用。これで左利きを左サイドバックに持ってくるという、ある種当たり前の布陣がようやく可能になった。特に前半はショーが難敵ヤマルを見事に封じており、イングランドは決勝戦にしてようやくベストな陣容にたどり着いたかに見えた。

しかし試合が後半に入ると、ショーが徐々に突破を許すようになり、同様に右サイドでウィリアムズを必死に食い止めていたウォーカーもこらえきれなくなってしまった。ショーは怪我明けでやはりコンディションの問題があったのだろうし、ウォーカーは前に出るタスクをより強く求められてもいたのだろう。

だがもっと問題があるように見えたのは、トップのケインだった。今大会の彼は明らかに運動量が落ちており、いつもいてほしいところに彼はいない。準決勝で彼を途中交代させることにより勝利したのはサウスゲイトの英断だったが、それで前例ができたためか、この決勝ではさらに早く、61分でキャプテンをベンチに下げた。

サウスゲイトの采配にはメンバー選考も含めて疑問が多いが、このあたりは名将っぽい決断力を感じさせた。そして同じく途中投入したパーマーが鮮やかな同点弾を決め、さらにその名将感はにわかに増すことに。

しかし結局はスペインのほうも、途中から入ったオヤルサバルが決勝点を決めたのだから、まあ皆が疲れた状況で投入される交代カードとは本来そういうものかと、再びサウスゲイトの評価がそれなりの監督に戻ったところで試合終了。すなわち大会終了。そのままEUROロス。

スペインはセンターバックゴールキーパーのクオリティが他のポジションに比べて一段二段低いように感じていたが、それを両脇からカバーする両サイドバックの献身的な働きと、その門前でフィルターをかけるロドリの気の利きっぷりが見事だった。前線の若手が躍動できたのも、彼らが後方でもたらしてくれた安心感あってこそだろう。

そうして弱点を集団で的確に補う動きも含めて、やはりチームとしての完成度はスペインのほうが高かった。いまだにGKに関しては、ラヤのほうが良いと思ってはいるけれども。

というわけで、自分で勝手に義務化してつけてきたこのEURO2024日記も本日にて終了。幸いにして書くことがないということもなく、しかしさして意味のある内容を書いてきたという手応えもなく。また何かについてこういう連続ものをやるかもしれないし、やらないかもしれない。

そんな気ままな文章を読んでくださった方々に向けて感謝のきなこ棒を捧げつつ、いつかこの日記を読み返す日が来るのだろうかと、高々と掲げた手を粉まみれにして。

EURO2024日記~21日目~

準決勝2試合目はイングランド対オランダ。どちらも監督の采配に方針があるのかないのか良くわからないまま、しかしなんだか結果的に勝ち上がってきた両チーム。もちろん個のクオリティの高さが前提ではあるわけだが。

イングランドはてっきりルーク・ショー先発で来るかと思いきや、相変わらず本職右サイドバックのトリッピアーを左に置いて機能不全。前戦から3バックにしてフォーデンの動きは改善されたものの、彼が中にいるぶんだけトリッピアーが左で孤立する場面が増えている。

しかし孤立しているということはスペースがあるということでもあって、彼にボールを出したくなる場面も結構あるのだが、そのたびにトリッピアーの位置が高すぎたり低すぎたりして、いつもちょうど良い位置に彼はいないので出し損になる。高すぎればオフサイドに引っかかるし、低すぎれば単なるバックパスにしかならず攻撃につながらない。

なんて思っていたところに、オランダのシャビ・シモンズが唐突に鮮やかな先制弾。ああいう理不尽なシュートを観ると、これはやっぱり才能だなぁと思ってしまう。

しかし失点の時間帯が早かったのが、イングランドにとってはまだ良かったのかもしれない。特にバタつく様子もなく、やがてなんとなく巡ってきたPKのチャンス。あの程度の接触だと少なくともプレミアリーグではPKにならないだろうが、決定的なシュートチャンスを妨げたというレッドカード的な意味あいも多少加味されての判定ではないかと思う。そんなもの単純に加味して良いものかはわからないが。

ケインは前回のW杯でPKを外したことがあったとはいえ、基本的にはいつも親の仇のように強烈なキックをぶちかましてくる。方向を読まれても手の届かない確信に満ちた完璧なPK。

同点で迎えた後半は頭からトリッピアーに変えて待望のルーク・ショーを入れて、さすがのサウスゲイトも左サイドには物足りなさを感じていたことがわかりひと安心。やはり全体の流れもスムーズになり、今大会のイングランドではもっとも良い状態であるように見えた。

とはいえやはり延長は避けがたいか……と心の準備をはじめたところに、いまさらワトキンス?と思っていたら、終了間際にあり得ない角度から腰をひねり抜いてのゲームのような決勝弾。あれができるから今季のアストン・ヴィラは強かったし、アーセナルの獲得候補にも名前が挙がっているのか――といまさら思い知らされた。

これで残る決勝はスペイン対イングランド。すでに充分にチームとして機能しているスペインと、強固な個の集まりがようやく全体として機能しはじめたイングランド。気持ち的にはアーセナルの選手がレギュラーを務めるイングランドに勝って帰ってきてほしいが、内容的に良いプレーを見せてくれたほうが勝ってほしいというのが常なる願い。

片方にスペインがいるおかげで、決勝にありがちな守りあいにはならないと思うが、だからといって攻守交代めくるめくオープンな試合にもならないか。ぜひとも歴史に残るような好ゲームを記憶に残してもらいたい。

EURO2024日記~20日目~

待ちに待った準決勝1試合目は、スペイン対フランス。

フランスのスタメンにグリーズマンがいない時点で、頭に大きめの「?」が浮かぶ。出場停止ではないようだし、後半から出てきたことを考えると怪我でもなさそうだ。コンディションの問題はいくらかあったのかもしれないが、誰が見てもこのチームの軸である彼をこの大事な一戦で外すという選択肢は、まったく想像していなかった。

このフランス代表はエムバペのチームに見せかけて、実はグリーズマンのチームであるという共通認識があるように思っていたが、少なくとも監督のデシャンにそんな考えはなかったということか。それがまず衝撃だった。

リンク役であるグリーズマンのいないフランスは、案の定後ろと前がつながらない。そうなるとそもそもつなぎが上手くプレスもサボらないスペインに、ボールを支配されるのは当然の報い。

そのスペインは、怪我人や出場停止により変更を強いられたポジションが少なくないが、控えが出てきてもその質にまったく遜色がない。特に2人を入れ替えたバックラインの守備には不安があったが、その前でロドリという番人が立ちはだかっていることもあって、大きく崩れることはなかった。

それにしてもヤマルとオルモ。ヤマルのシュート軌道は見事というほかなく、打つタイミングも含めて明らかな才能を見せつけた。メッシと比較されることも多いようだが、キックの精度に関してはむしろメッシより上かもしれない。ドリブルはもちろんあそこまで予測不能ではないが、ミドルシュートやクロスの選択肢が加わるぶん、相手にとっては厄介かもしれない。

オルモはボールコントロールが鮮やかで、いまとなっては彼が控えであったことが信じられず、10番をつけていることにも充分に納得がいく。なぜ彼がビッグクラブにいないのか、もはや不思議なレベルである。

先制されても形を崩さなかったスペインと、先制したにもかかわらず形が定まらなかったフランス。グリーズマンが最初からいればここまで無軌道な攻撃にはならなかったような気がするが、そこも含めてデシャンの采配には疑問が残った。後半の交代カードの切りかたにも、明確な得点へのイメージが描けているようには思えず。

残るイングランドとオランダを含めても、スペインの組織力と連動性は頭ひとつ抜けているように見える。どちらが上がってきても、フランスのような戦いを強いられることになるだろう。個人的にはイングランドとの決勝を見たいが、果たしてどちらが来るのか。

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