泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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2019-01-01から1年間の記事一覧

短篇小説「マジックカッター健」

マジックカッター健はどこからでも切れる。彼を切れさせるのに、切り込みなど必要ない。お肌だってツルツルだ。 マジックカッター健は、端から見れば何ひとつ原因が見当たらないのに切れる。しかし実を言うと、健には本当に切り込みがないのではない。彼の切…

書評『黄泥街』/残雪

「中国のカフカ」こと残雪による第一長編。作者名を聴いて、まずはイルカの名曲「なごり雪」が頭に流れる。カフカを彷彿とさせる不条理な予感は、冒頭の一文からして十二分に漂っている。《あの町のはずれには黄泥街という通りがあった。まざまざと覚えてい…

短篇小説「マウント屋」

仕事で大きなプロジェクトを成し遂げた翌日、私は必ずマウント屋へ行くことにしている。今日の私があるのは、すべてマウント屋のおかげだと思っている。 今夜も私は、任務達成の悦びと抜けきらない疲れに酔いしれた身体を引っさげて、会社帰りにマウント屋を…

短篇小説「つまらな先生」

つまらな先生はすなわちつまらないからつまらな先生と呼ばれているのであり、もしも一片でも彼に面白味のようなものがあったなら、そう呼ばれてはいないだろう。 つまらな先生の授業は、やはり滅法つまらない。しかし彼は自分の授業がつまらないのではなく、…

短篇小説「フェイク・オフィス」

六本木の高層階にあるオフィスで、振介は今日も働くフリをすることに忙しかった。 具体的にいえば振介はいま、プリントアウトした資料を見るフリをしながら、そこに書いてあるデータをノートPCに打ち込むフリをしている。 もっといえばその「資料」とはプリ…

日本十大あけましておめでとうございます2019

せめて年の初めくらいは、真面目にごあいさつをと思い。(思う自由) あけましておめでとうございます!(偉人の棺桶を)あけましておめでとうございます!(ようやく半熟になったかさぶたを)あけましておめでとうございます!(選挙ポスターの目に画鋲で穴…

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