泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

『METAL WEEKEND 2019』9月15日(日)ライヴ・レポート

LOUDNESSが出た土曜日ではなく、HAMMERFALLがヘッドライナーを務めた日曜日のほうである。

【METAL SOULS】
NOZOMU WAKAI'S DESTINIAのアルバム『METAL SOULS』を昨年のアルバム年間ベスト10に入れた身としては、登場順は最初ながら期待は大きかった。

僕があの作品を高く評価したのは、まず何よりも楽曲のクオリティの高さ。そして今や各方面で引っ張りだことなっている現RAINBOWの歌い手、ロニー・ロメロの歌唱力であった。

中心人物であるギタリストの若井望に関しては、作曲能力と演奏技術の高さ、そして手数の多いリフには魅力を感じる一方で、ソロに関してはまだエモーションを乗せきれていないもどかしさも所々感じていた。

今回はバンド名義ではなくあくまでも特別編成とのことで、カヴァー曲中心の構成。アルバムを高く評価する身としては、オリジナルが2曲しかないのは物足りないが、今回はそういうコンセプトなので仕方ない。

カヴァー曲をやることで浮き彫りになるのが、やはりまずロニー・ロメロの圧倒的な歌唱力。LORDS OF BLACKのアルバムでも様々なカヴァーを披露しているが、彼は基本的に余計なアレンジを加えることなくオリジナルに忠実な歌い方をすることが多く、とにかく何でも歌いこなしてしまう。

しかしやはりそれでも向き不向きというものはあって、1曲目のQUEENWe Will Rock You」があまり盛り上がらないのは彼にとっても想定外であったと思う。

それは肝心の「ドンドンパ!」の部分を思いっきり省いたせいもあるが、このライヴに集まるタイプの日本のメタル・ファンとは基本的に様式美ヘヴィ・メタルのファンであって、そういうオーディエンスにとってメロディよりグルーヴを重視したあの曲は、さして人気がないというのが大きいだろう。

その点、欧米に比べると、一般ロック・ファンとメタル・ファンの間の乖離は、日本のほうがより大きいのかもしれない。「ミドル・テンポのグルーヴィーな曲のほうがライブでは盛り上がる」という欧米ファンを相手にしてきたアーティスト側の認識と、日本のファンの嗜好が一致しないことは少なくない。

日本でも映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットしたという情報をもとにした選曲だとは思うが、だとしたらやるべきは、その「Bohemian Rhapsody」はさすがに難しいにしても、同じくメロディアス路線の「Don't Stop Me Now」あたりであろうか。

続くEUROPEの「The Final Countdown」は当然のように盛り上がり、ジョン・ノーラムの速弾きパートも完全再現。

WHITESNAKE「Fool For Your Loving」では、ロメロがディオだけでなくカヴァデールにもなれることを証明してみせるが、ライヴでは力を出し切れぬ本家の歌唱に比べると、渋味はやや足りないものの明らかにこちらのほうが上手い。若井のギター・フレーズはシンプルなオリジナルVer.でも余計な味つけで名曲を台なしにしたスティーヴ・ヴァイVer.でもなく、その間のヴァンデンバーグVer.をベースにしているように感じた。

MICHAEL SCHENKER GROUP「Looking For Love」はやや地味な選曲にも思えたが、ヘタウマなヴォーカルを上質な歌唱でアップデートするという意味では意義のある選曲。ギターの見せ場も多い。

GARY MOORE「Over The Hills And Far Away」は、ここからヴァイオリン奏者を入れることを前提とした選曲か。やはり本物のヴァイオリンが入ると盛り上がるが、一方でオリジナルの朴訥とした歌唱に比べると、ロメロのパワーと技術を持て余す選曲というか、あまりフィットしていないように感じた。

そしてヴァイオリンを入れたまま、DESTINIAの最新作から「Judgement Day」「Metal Souls」の2曲で締め。この2曲に関しては、ヴァイオリンはあまり意味がなかったかもしれない。

全体にカヴァー曲は、最初の「We Will Rock You」以外は原曲に忠実なものであったため、あまり若井のギターが個性を主張する場面はなかった。とはいえ、余計なアレンジで原曲を台なしにするよりは、原曲の魅力を伝えたいというそのスタンスには共鳴する。

何よりもロメロの歌唱力が印象に残り、ラスト2曲のオリジナル曲を聴くと、ぜひ次作も若井&ロメロのコンビでアルバムを制作してもらいたいと強く思った。

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  • アーティスト: Nozomu Wakai's DESTINIA,若井望,ロニー・ロメロ,マルコ・メンドーサ,トミー・アルドリッジ
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BEAST IN BLACK】
前日の土曜日公演の時点で、Twitter上で見かけるリアクションはこのバンドを絶賛する声で溢れていた。今年リリースされた新作『FROM HELL WITH LOVE』も良質な楽曲を揃えていたため、個人的にも観てみたいと思っていたバンドのひとつ。

とにかく胸が熱くなるパフォーマンスで、特別なことは何もしていないのに胸を打たれるのは、やはり楽曲のクオリティがまんべんなく高いからなのだろうか。似た曲が多いとも言えるが、メロディの方向にブレがなく、ゆえに聴き手のテンションが下がる隙を与えない。

歌はロメロほど圧倒的に上手いわけではないが、それでも充分に歌いこなしており、声がひっくり返ることもない。そして何より、その一生懸命さが声に乗っているというか、何かしら聴き手に突き刺さるものがある。そこには、観客への感謝の気持ちを全身全霊でなんとか伝えようとする謙虚な姿勢も、無意識のうちにこちらが評価に加えてしまっているのかもしれないが、ヴォーカルのヤニス・パパドプロスのパフォーマンスには、自然と応援したくなる要素を強く感じた。

このバンドには「力演」という言葉が何よりも相応しい。そして改めてメロディの良さを痛感した次第。

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フロム・ヘル・ウィズ・ラヴ【CD(日本語解説書封入/歌詞対訳付)】

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【MYRATH】
個人的には今回のヘッドライナーはこのバンドだというつもりで行った。2016年のアルバム年間ベスト10に前作『LEGACY』を入れて以来、ずっと観たかったバンドである。新作『SHEHILI』でさらにスケール・アップした彼らをこのタイミングで観られるのは、まさに僥倖。

開演と同時に、アラビアンな独特の旋律が一瞬にして会場の空気を変える。なんという存在感だろうか。途中からはベリーダンサーも登場し、エキゾチックな音楽的世界観に華を添える。

しかしそんな唯一無二の世界観に思う存分酔いしれることができるのは、ザヘル・ゾルガティの歌唱力と表現力が、強靱な世界観に飲み込まれることなく対等に組み合えているからだ。バンドの持つ世界観が強ければ強いほど、ヴォーカルの力は重要になる。

一緒に歌ってほしいとの意図で、入場時に「Monster In My Closet」の日本語詞が配布され、同曲が日本語ヴァージョンで披露されたのはファン・サービスということなのだろう。しかし他国と違ってこの手のサービスを日本のファンがあまり喜ばないということは、誰かが先に伝えておくべきだったと思う。日本語詞はメタルに合わないと感じているファンは少なくない。ここはオリジナルの英語詞で聴きたかった。

演奏とは関係ないが曲終わりに何度か、ザヘルが「アリガトウ、ニホン」と言うのが妙にチャーミングに感じられた。

パフォーマンスにはすでに一流の風格があり、この素晴らしい音楽はやがて世界中を魅了することになるだろう。そんな予感を確信に変えるようなパフォーマンスだった。

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シェヒーリ【CD(日本語歌唱による日本盤ボーナストラック収録/日本語解説書封入/歌詞対訳付)】

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  • アーティスト: ミラス,ザヘル・ゾルガティ,マレク・ベン・アルビア,アニス・ジュイニ,エリエス・ブシューシャ,モルガン・ベルテット
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【HAMMERFALL】
実のところこの日観た中で最も聴いてこなかったバンドがこのHAMMERFALLだった。僕の中では、正直IN FLAMESのイェスパーが結成した別バンド、というほぼスタート地点の認識で止まっている。しかしバンドはみるみるうちにヨーロッパでブレイクを果たしていたようで、その評価を裏づけるような堂に入ったパフォーマンスを見せてくれた。

一発目の出音から、とにかく音が桁違いに良いということに感銘を受けた。ここらへんはスタッフの経験やクオリティなのかバンドのそれなのか、あるいはどちらも作用しているのかはわからないが、とにかく音の分離が良く、それに伴って観客の反応も自然と鋭くなる。中には音質にわりと無頓着なミュージシャンもいるが、やはり観客を楽しませるには個々の音を明確に伝える必要があるという感覚を、バンドはヨーロッパを回る中で着実に身につけてきたのだろう。

最初の曲こそ新作の冒頭を飾る疾走曲「Never Forgive, Never Forget」で哀愁を撒き散らしてくれたものの、それ以降はミドル・テンポの楽曲が多く、個人的にはそこらへんが好みではない原因なのだと改めて感じた。

しかしそれは同時に、きっと彼らが欧州でブレイクしている要因でもあって、シンガロングを誘うミドル・チューンが会場の一体感を生みやすいのだという事実は、この日の演奏でも感じられた。日本に比べると作品よりもライブでの評価が重要視される欧米においては、彼らのようにライヴで一緒に盛り上がりやすい楽曲を多く持ったバンドが人気を博すのは理解できる。

だが個人的には、ライブでの盛り上がりよりも楽曲のクオリティを最重要視するほうなので、メロディに物足りなさを感じる場面が少なくなかったのも事実。

観客を巧みに弄るヴォーカルのヨアキム・カンスのこなれたMCっぷりも欧州における人気の一因であると思われるが、その点に関しても僕はそんな暇があったら曲をやってくれと思ってしまうほうなので、やはり自分はアーティストのキャラクターよりも楽曲至上主義なのだと改めて自覚。

だとすると、先のBEAST IN BLACKのパフォーマンスに胸が熱くなったのも、やはりヤニスのキャラクター云々ではなく、結局のところ楽曲の良さに尽きるのではないかと思いを新たに。

1曲目の「Never Forgive, Never Forget」はとても好きな曲なので、こういう北欧然とした美旋律疾走曲を量産してくれるといいのになぁ、と個人的には思いつつ。

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ドミニオン【CD(日本盤限定ボーナストラック収録/日本語解説書封入/歌詞対訳付)】

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イベント全体を通してみれば、MYRATHの独自性と完成度、BEAST IN BLACKの熱量とメロディのクオリティ、ロニー・ロメロの歌唱力、HAMMERFALLの音作りの質の高さが印象に残ったということになるだろうか。

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