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短篇小説「なにがなんだか飛翔体」

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 隣国から正体不明の飛翔体が発射されたまさにそのとき、前日のフットサルで起きたアクシデントにより負傷体となった翔平は、強くひねった右の足首体が発する激しい痛みのせいで、予定より一時間も早く起床体となった。

 だが足首体が石膏体によりすっかり固定体となっていることを思考体に入れれば、今日はいつもよりも早めに木造体の建築体であるところの多面体を出るべきであるとちょうど考えてもいた。 

 そして鉄道体が所有する建造体から、電気体による駆動体であるキハやらモハやらと楷書体で書き込まれた直方体の移動体へと、すみやかに乗り込んでひとりの乗客体となりたいところだ。

 しかし医療体の判断により装着された石膏体のせいで、動作体である足首体の動きが相当なまでに限定されるうえ、松葉体に拵えられた木杖体で路面体を突いて進むことしかできぬ負傷体による歩行は困難を極めた。その歩く姿はまるで御老体の疲労体。
 
 翔平はほうほうの体で鉄道体の所有する建造体に到着すると、車掌体の操作によって開く開閉体から、電気体により駆動する直方体の移動体へと乗り込んだ。

 負傷体の翔平が揺動体であるところの移動体の中で立錐体であり続けるのは困難であると思われるため、できれば座席体を確保しスムーズに着席体となりたいところではあった。

 とはいえこの建造体に至るまでに、不慣れな木杖体により負傷体を支えての歩行に思いのほか時間がかかってしまったせいで、早めに出たはずがそろそろ通勤ラッシュの時間帯に差しかかっていた。乗り込んだ移動体の中はすでに満員体に近く、開放体となっているのはわずかに御老体向けの銀座体が一席残されているのみであった。

 思いがけぬ体力の消耗からすでに余裕体ではなくなっていた翔平は、必死体の形相で銀座体唯一の空席体にその負傷体をねじ込んだ。すると隣席体に恬然と座っていた高校体へ通う女子体が、あからさまに嫌な表情体を浮かべつつ長舌体を鳴らして不快感を表明してきた。

 高校体へ通う女子体は電話体の液晶体を頻繁にチェックしつつも、鏡面体を見ながら黒液体やら白粉体を顔面に塗りたくることにより、ものの15分で素貧体から化粧体へと見事な変貌を遂げてみせた。こうなるともはや完全な別人体というほかない。

 いっぽうで隣から高校体へ通う女子体のスマホを覗き込んだ翔平は、その液晶体の画面体に映し出されているカレンダーの日付が、自身が通う会社体の創業記念日であることにふと気づいた。

 つまり今日は会社体の全体が休業体であり、わざわざ負傷体を押して移動体に乗り込み、必死体に座席体を求めて着席体になってまで通勤体になる必要など皆無体の、まるっきりの休日体であったというわけだ。

 とはいえ、今さらすぐに降車体そして乗換体さらに折返体となる元気など翔平にはもう残っていなかった。とりあえず翔平は、なにもかもなかったことにする忘却体となって、移動体と線路体が弾きだす心地よい律動体に身を委ねつつ、首振体兼垂涎体であるところの睡眠体となったのであっ体。

 
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