泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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2019年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・アルバム10選

1位『PARADIGM』/ECLIPSE

Paradigm

Paradigm

  • アーティスト:Eclipse
  • 出版社/メーカー: Frontiers
  • 発売日: 2019/10/11
  • メディア: CD

まさか彼らがこの段階で化けるとは思わなかった。スウェーデン産中堅ハード・ロック・バンドの7枚目。

北欧古来の美旋律ハード・ロックジョン・サイクスアメリカナイズされた英国ギターを加えたスタイルに、前作からはさらにそのサイクスのルーツでもあるゲイリー・ムーアアイルランド的郷愁を追加したことで、ここに別次元のケミストリーが生まれた。

それにしても今作はエリック・モーテンソンの歌の巧さが際立っている。その格段にエモーショナルさを増した歌声は、GOTTHARDの今は亡きスティーヴ・リーを思わせる。

アンセムとも言うべき冒頭の「Viva La Victoria」が描き出す壮大なメロディは、このアルバムでひと皮剥けたバンドの圧倒的なスケール感を象徴している。一方で北欧美旋律を炸裂させる⑧「.38 Or .44」のような哀愁曲も、さらにメロディの強度を増している。

聴けば聴くほど沁み入る至高のメロディ。今年はこればかり聴いていた。

詳細は以下ディスクレビューにて。

tmykinoue.hatenablog.com

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2位『THE COFFIN TRAIN』/DIAMOND HEAD

Coffin Train

Coffin Train

  • アーティスト:Diamond Head
  • 出版社/メーカー: Silver Lining Music
  • 発売日: 2019/05/24
  • メディア: CD

まさか彼らがこの段階で化けるとは思わなかったPart 2。いやその経歴を考えると、こちらのほうが遥かに「まさか今になって!?」なのだが。なにしろ1976年結成だから、43年目の超絶大ベテランである。なにしろあのMETALLICAのルーツなのであって。

それがここへ来て、明らかな最高傑作を生み出したのだから驚きである。これまでも楽曲単位では、それこそMETALLICAがカヴァーした楽曲群があるし、僕などは初めてMETALLICAの『…AND JUSTICE FOR ALL』を聴いた際には、「The Prince」が一番格好いいと思い、のちにそれがカヴァーだと判明して少なからずガッカリしたものだ。しかしアルバム単位で見れば、本作の充実ぶりは圧倒的だろう。

楽曲の方向性としては、往年の感触を踏襲しつつも、より英国的な湿り気を増している。疾走感のなかにも、「メタル」というよりはやはり「ロック」と言うべき角の丸さと温度感がある。

しかしこのある種ブルージーな感触が、単にレイドバックした古典的なものではなく、むしろ「レトロモダン」とも言うべき新鮮さを感じさせるのが面白い。たとえばGRETA VAN FLEETのような若手が、先駆者たちを最大限リスペクトしてそこへ新たな息吹を吹き込んでゆくようなタッチ。

この快作を聴いてラーズ・ウルリッヒはどんな顔してるだろう。自らの足下を見つめ直して、またスリリングなアルバムを作ろうと気合を入れ直してくれやしないか。そんな光景まで想像させてしまうインパクトを持った作品である。

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3位『SHEHILI』/MYRATH

シェヒーリ【CD(日本語歌唱による日本盤ボーナストラック収録/日本語解説書封入/歌詞対訳付)】

シェヒーリ【CD(日本語歌唱による日本盤ボーナストラック収録/日本語解説書封入/歌詞対訳付)】

  • アーティスト:ミラス
  • 出版社/メーカー: ワードレコーズ
  • 発売日: 2019/04/26
  • メディア: CD

前作『LEGACY』でプチブレイクしたチュニジアのメタル・バンドの5枚目。前作からの順当な成長を感じさせる充実の楽曲群。

一方で、前作で突如訪れた進化に比べると、やや順当すぎるステップと見える部分もある。特徴であるアラビアンな旋律は依然として効果的に用いられているが、楽曲の普遍性を求めるがゆえに、その分量がやや抑え気味になってきているのが少し気にはなってくる。

たとえばIN FLAMESアメリカ進出とともに北欧成分を減退させていったように、やはりメジャー性と地域性はトレードオフの関係になってしまうのか、という普遍的命題がここにはある。彼らもすでにその段階に来ているということだ。

そういう意味では前作と今作あたりがおそらくベスト・バランスであり、これ以上メジャー化しようとすれば個性が目減りするという危惧はある。もちろんまったく別の方向に伸びてゆく可能性もないことはないのだけれど。

といったこの先の心配ばかりしてしまうくらいに、現状の充実っぷりを伝える本作。④「Dance」のイントロの心地好い違和感は、欧米のバンドには真似のできない唯一無二の個性を放っている。

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4位『FROM HELL WITH LOVE』/BEAST IN BLACK

フロム・ヘル・ウィズ・ラヴ【CD(日本語解説書封入/歌詞対訳付)】

フロム・ヘル・ウィズ・ラヴ【CD(日本語解説書封入/歌詞対訳付)】

安っぽいディスコティックな電子音が気になることは気になるのだが、そんな気がかりをあっさりと吹き飛ばしてくれるくらいに高品質なメロディがそこかしこに充満した正統派ヘヴィ・メタル・アルバム。素直に「ポップなメタル」という世間的には二律背反と思われている(全然そんなことはないのだが)魅力に思いきり身を委ねることができる。

とにかく口ずさみたくなるフレーズが満載で、常にタイトな密度を感じさせる。快感原則を知り尽くした楽曲の組み立ては、さほどアーティスティックではないがエンターテインメントとしての完成度はすこぶる高い。

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5位『DEMONS』/SAVAGE MESSIAH

DEMONS

DEMONS

  • アーティスト:SAVAGE MESSIAH
  • 出版社/メーカー: (株)トゥルーパー・エンタテインメント
  • 発売日: 2019/05/10
  • メディア: CD

NWOBHMスラッシュ・メタルの融合によりすっかりBULLET FOR MY VALENTINE化。しかしそれが妙にしっくり来ている。まるで最近のヘヴィ・ロック化したBFMVが空けた穴を埋めるが如く。

疾走するギター・リフのスピード感を損なわない歌メロの絡ませかたに独自のセンスを感じる。

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6位『VERKLIGHETEN』/SOILWORK

現実/ヴァルケヒエッテン【CD(日本語解説書封入/歌詞対訳付)】

現実/ヴァルケヒエッテン【CD(日本語解説書封入/歌詞対訳付)】

  • アーティスト:ソイルワーク
  • 出版社/メーカー: ワードレコーズ
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: CD

相変わらず『NATURAL BORN CHAOS』以降の、攻撃性と浮遊感を同居させた作風ではあるのだが、聴けば聴くほどギターのメロディが際立つ。一聴して派手な曲は少ないが、はじまりが地味な曲でも、必ず中盤以降にギターが主役に立つ聴きどころが表れる。

歌メロには全体にビョーン(Vo)の別バンドであるTHE NIGHT FLIGHT ORCHESTRAのクラシック・ロック成分が混入。今のところそれは良い方向に作用している。

華麗に舞うギター・フレーズと古典ポップ的な歌メロという、それら二要素が見事に結合した⑨「Witan」は白眉。

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7位『HEXED』/CHILDREN OF BODOM

個人的には2003年の4th『HATE CREW DEATHROLL』で終わっていたバンドが、15年超の長い時を経て再び充実作を放ったという印象。

音楽的方向性といい旋律のクオリティといい、メロディック・デス・メタルをポップかつロールさせることに成功した『HATE CREW DEATHROLL』の次にリリースされるべきは本作のような作品だったのではないか。

豊富なギター・リフのアイデアが連なってゆくことにより生み出される波状攻撃。逆になぜこれを早くやってくれなかったのか、という謎は残る。

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8位『WHEN ALL THE HEROES ARE DEAD』/VISION DIVINE

驚異の歌唱力を持つミケーレ・ルッピを擁した名盤3rd『STREAM OF CONSCIOUSNESS』を彷彿とさせる作風と品質。

新ヴォーカルのイヴァン・ジャンニーニも確かな歌唱力を感じさせ、なおかつスタイルもルッピに近い。というか、何も知らずに聴いたらルッピだと思うかもしれないがそれがいい。

個人的には今年リリースされた同じくイタリアン・メタルのRHAPSODY系2作(どっちが「本家」かわからなくなってきた。片方が「本家」でもう一方は「元祖」?)よりも、こちらのほうが琴線に触れた。

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9位『ASCENSION』/PALADIN

Ascension

Ascension

  • アーティスト:PALADIN
  • 出版社/メーカー: Bickee Music
  • 発売日: 2019/06/19
  • メディア: CD

ジャケットの圧倒的B級感から導き出される予感は、半分あたり半分はずれることになる。若く荒削りな楽曲構成はまさにB級だが、フレーズ単位のクオリティとポテンシャルは非常に高い。アメリカから現れたスラッシュ系メロディック・パワー・メタル?の新人。

冒頭のギター・フレーズがあまりにジャパニーズ・メタルすぎて面食らうが、GALNERYUSの影響を受けているとのことで納得。

とにかくメロディックに容赦なく弾きまくるギター・フレーズの洪水が凄まじい。一方でスラッシュ成分の導入具合は『CITY OF EVIL』までのAVENGED SEVENFOLDを思わせる。そういう意味では、「欧州HMへのアメリカからの回答」というひとつの典型なのかもしれない。

全体の完成度というよりは、部分部分に発見の多い作品。今後の成長が見ものだ。

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10位『LINE OF FIRE』/FIRST SIGNAL

ライン・オヴ・ファイア

ライン・オヴ・ファイア

  • アーティスト:ファースト・シグナル
  • 出版社/メーカー: マーキー・インコーポレイティド
  • 発売日: 2019/05/08
  • メディア: CD

かつてHAREM SCAREMで輝いていたハリー・ヘスの秀逸な歌メロが帰ってきた。

バンドは3作目にして、ようやく彼のハスキー・ヴォイスに相応しいメロディの最適解を見出したらしい。HAREM SCAREM全盛期に比べると、演奏陣のアレンジこそやや物足りないが、歌メロのクオリティはかなり接近している。

今のHAREM SCAREMよりも、こちらのほうに期待してしまうくらいには。

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