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2021年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・ソング10選

1位「Everafter (feat. Tommi “Tuple” Salmela)」/CIRCUS OF ROCK

Come One, Come All

Come One, Come All

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フィンランドのKING COMPANYのドラマー、ミルカ・ランタネンが立ち上げたプロジェクト作より、心温まるメロディを持つこの曲を。

アルバム『COME ONE, COME ALL』には、他にもジョニー・ジョエリ(HARDLINE、AXEL RUDI PELL)、ダニー・ヴォーン(TYKETTO)、マルコ・ヒエタラ(TAROT、NIGHTWISH)など、有名どころの実力派ヴォーカリストが名を連ねているが、そんな中で異彩を放っていたのがこの曲。

歌い手はトミ・サルメラ――という曲名のフィーチャリング表記を見て一瞬「誰だっけ?」となったが、フィンランドのTAROTのメンバーである。

といってももちろん、TAROTのヴォーカルと言えば、このアルバムにも参加し(③「Sheriff of Ghost (feat. Marco Hietala)」)、NIGHTWISHで有名になったマルコ・ヒエタラがいるわけで、彼の歌声はあまり記憶になかった。TAROTでは、バックボーカル兼サンプラー担当ということになるだろうか。

そんな彼がメイン・ヴォーカルを務めるのが、この「Everafter」という楽曲である。その歌声の、なんと温かく優しいことか。

系統としてはジョン・ウェットンやフィル・モグのような、ブリティッシュな湿り気を存分に感じさせる歌声で、けっして上手さでねじ伏せるようなタイプではない。しかしこのまろやかな独特の声質が、楽曲の持つ叙情性を見事に引き出している。

とはいえ1位からさっそくだがYouTubeに公式動画がないあたり、やはりネームバリュー的にも楽曲的にも地味だと見なされている感がある。だがプロジェクト・アルバムの片隅に埋もれさせておくにはもったいない、秀逸なメロディに心奪われる一曲。


2位「Wild and Free」/ART OF ILLUSION

エックス・マークス・ザ・スポット

エックス・マークス・ザ・スポット

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年間ベストアルバム1位に選んだ作品『X MARKS THE SPOT』から、冒頭を飾る一曲を。

といっても、良質な楽曲が並び立つアルバムであるがゆえ、どの曲を入れるか悩んだ。このバンドの魅力全部入りという意味では、QUEEN風味の強い③「My Loveless Lullaby」を選ぶべきだし、⑩「Catch You If I Can」のポップな節まわしも捨て難い。

だが最終的には、とにかくサビの歌メロが頭に残るこの曲に。軽やかに弾む一音一音の上下動に合わせて、聴き手であるこちらの感情も、気持ち良く揺り動かされるようなメロディ。同居する爽快感と哀愁。

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3位「Wait For Me」/PLATENS

オヴ・ポエトリー・アンド・サイレント・マスタリー

オヴ・ポエトリー・アンド・サイレント・マスタリー

  • アーティスト:プラテンズ
  • マーキー・インコーポレイティドビクター
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続いて、年間ベストアルバム2位に選んだ作品『OF POETRY AND SILENT MASTERY』から。やはり良いアルバムには良い楽曲が詰まっているもので(だからこそ良いアルバムなのだが)、こちらも選曲で悩んだ。

こちらは2位のART OF ILLUSIONとは逆で、歌メロがより強く印象に残っていたのは①「Conspiracy」のほうだったが、歌メロだけでなくイントロのギター・フレーズ等も含む総合力を評価して②「Wait For Me」を。

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4位「Hypersonic」/LIQUID TENSION EXPERIMENT

僕の中では毎度「竜頭蛇尾」でお馴染みのLIQUID TENSION EXPERIMENT。今回も1曲目が群を抜いて格好いい。

「縦横無尽」「大胆不敵」「自由自在」「跳梁跋扈」――彼らの奏でる疾走曲には、なぜか四字熟語がよく似合う。

こちらはもちろんインスト楽曲だが、文字どおりテンション漲るこの曲が、本家DREAM THEATERの新作に収録されているどの曲よりも魅力的であるという皮肉。

例によってその緊張感は以降続かないわけだが、いまのDREAM THEATERに欠けているものが、この一曲に集約されているような気がしてならない。DREAM THEATERの新作も、悪くはないのだが……。

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5位「The Rumble (Never Say Die)」/KENT HILLI

Rumble

Rumble

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PERFECT PLANのVo.によるソロ作の幕を開ける一曲。

音楽性とはイメージの異なるジャケットのせいでだいぶ損しているような気がするが、中身はSURVIVOR路線の王道ハード・ポップ。SURVIVORといえば『ロッキー』の主題歌「Eye Of The Tiger」、その影響でこのタイトルとジャケットに――ということなのだろうか……?

開放感のあるメロディと、余裕すら感じさせる伸びやかな歌唱。かつての王道は、いまのリスナーにはどう響くのだろう。


6位「Lost Chapter」/PENTAKILL

何奴かと思えば、オンラインゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』内に登場する架空のメタル・バンドらしい。

しかしとにかくこの曲に関しては、聴けば誰が歌っているのかは、HR/HMファンならば一発でわかる。ヨルン・ランデである。

かつてデイヴィッド・カヴァーデールのそっくりさんと呼ばれ、ディオのフォロワーでもあった彼だが、いまやすっかりひとりの強い個性を持つシンガーとして認識されていることだろう。そんな事実に改めて気づかされるが、彼の歌唱にはすでに間違いのない唯一無二の凄味が宿っている。

企画アルバムながらも、ヨルン独特の粘っこい節まわしが容赦なく炸裂。圧倒される。

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7位「Back into Light」/SPEKTRA

Overload

Overload

  • アーティスト:Spektra
  • Frontiers
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ブラジル人ヴォーカリストのBJをジェフ・スコット・ソートとアレッサンドロ・デル・ヴェッキオが共同プロデュースしたデビュー作『OVERLOAD』から。

その音楽性は、二人のプロデューサーからイメージする音楽性そのままのメロディアス・ハード・ロックで、やはりジェフが歌いそうなメロディがそこかしこに登場する。

ゆえについ「もしこれをジェフが歌ったら」と想像したくもなるが、このBJというシンガーの歌唱力にも確かなものがあり、魅力的な楽曲を遜色なく聴かせてくれる。


8位「Codebreaker」/TEMPERANCE

ディアマンティ

ディアマンティ

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徹頭徹尾、豪奢に攻め立てるイタリアン・パワー・メタルの真骨頂。

戦隊ヒーローものの主題歌を思わせる、押せ押せの過剰アレンジが気持ちいいパワー・チューン。

『千鳥のクセがスゴいネタGP』でお馴染みの、佐久間一行扮する日谷ヒロノリが歌いそうなクセスゴアレンジにクラクラする。

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9位「Breakout」/NIGHT RANGER

まさか彼らのような大ベテランが、いまになってこんな繊細なギター・フレーズを生み出してくるとは。

アメリカン・ハード・ロックの王道と、テクニカルかつトリッキーなギターの絶妙な配合比率。

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10位「Don't Let It End」/JEFF SCOTT SOTO

新曲ではないので反則気味だが、10位ならば許されると解釈したうえで。ジェフ・スコット・ソートのセルフカバー・デュエット・アルバムより、イングヴェイ時代の名曲を。

カヴァー曲を選ぼうとなったときに、ジェフ・スコット・ソートがこの名曲を選んでくれたことが何より嬉しい。

そしてデュエットの相方は実力者ディノ・ジェルシック(DIRTY SHIRLEY)。途中で歌唱パートを受け渡す際に、「ディノ!」と子分を呼びつけるように放たれるジェフの掛け声が微笑ましい。何度聴いても痺れる芸術的美旋律の氾濫。


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