1位『THE TESTAMENT』/SEVENTH WONDER
現KAMELOTのVo.トミー・カレヴィックの圧倒的な歌唱力が乱舞するプログレ・メタルの傑作。前作『TIARA』の時点ですでにバンドの限界点まで来たかと思われたが、そこからのさらなる歌メロの上積みっぷりには正直驚かざるを得ない。
プログレ・メタルというジャンルにおいて、歌がけっしてないがしろにされているとは思わない。だが重視されるのは歌の中でも「歌唱力」のほうで、その中身である「歌メロ」に本気の力が注がれているかというと、疑問符がつく作品は多い。このジャンルの最高峰であるDREAM THEATERですら、名作『IMAGES AND WORDS』とその他の作品の歌メロのレベル差は歴然としている。
とにかくあらゆる節まわしに濃厚な色香が漂っている。テクニカルな演奏と情感溢れる歌唱の理想的な相乗効果。
詳細は以前書いたディスクレビュー参照。
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2位『WE BELONG TO THE STARS』/GINEVRA
今年はH.E.A.T人脈やマグナス・カールソン絡みの作品がやたらに多かったが、その中でも他とは一線を画する作品。
その理由がクリスティアン・フィールの歌唱にあるのは明らかで、SEVENTH CRYSTALですでに発揮されていた彼のひねりの効いた歌メロが、北欧メタルに独特の味わいとグルーヴを与えている。
そのメロディ感覚にはHELLOWEENに対するPINK CREAM 69のようなスタンスがあり、どこかメタル外の領域とつながるルーツを感じさせる部分が歌い手の個性になっている。
派手さはないが味わい深く、聴き込み甲斐のある作品。
3位『TERRANOVA』/FALLEN SANCTUARY
初めて聴いたときには、「あの頃の(VISION DIVINEの『STREAM OF CONSCIOUSNESS』で歌っていた頃の)ミケーレ・ルッピが戻ってきた!」と感激してしまった。
もちろん実際歌っているのはSERENITYのVo.でありまったくの別人であったわけだが、声質、歌唱力はもちろんのこと、節回しまでもがかなりルッピに似ているのは間違いない。少なくともロニー・ジェイムズ・ディオとトニー・マーティンくらいには。これは最大の褒め言葉だ。
方向性としては正統派メロディック・パワー・メタルど真ん中で、疾走曲からバラードまでとにかくメロディに隙がない。逆に出来が良すぎて優等生的すぎるくらいだが、このクオリティには文句のつけようがない。
4位『THE SICK, THE DYING… AND THE DEAD!』/MEGADETH
まさかデイヴ・ムステインが、ここまで尖った作品を引っさげて帰ってきてくれるとは思わなかった。
曲数が多いため若干の中だるみ感はあるものの、METALLICAをはじめ他のベテラン勢と比べれば贅肉が圧倒的に少なく信頼できる。
まさに死の淵から蘇ったかのようだ。
5位『AUTOMATON』/CRASHDIET
彼らといえば初期の名曲「Riot In Everyone」を思い出すが、中心メンバーを失いながらも、ここへ来て作品のクオリティを劇的に向上させてきているのは興味深い。
そのベースはやはりスリージーなロックン・ロールでありながらも、哀愁漂うメロディがふんだんに投入されており、その量も質もメロディアス・ハード・ロックとして一級品。
スリージーなイメージからなんとなく忌避していた人にこそ、届いてほしい作品。
6位『GATE OF THE GODS』/NEW HORIZON
GINEVRA同様、こちらもH.E.A.T絡みのプロジェクト作。といってもH.E.A.Tに比べるとかなり骨太な正統派ヘヴィ・メタルで、現Vo.ヨニ―・リンドクヴィスト加入後のNOCTURNAL RITESにかなり近い音楽性。
つまりJUDAS PRIESTを核に置いた影響のもと、随所に北欧美旋律をきらめかせて疾走する北欧メタルだが、以下に挙げる動画に代表されるように、ミドルテンポの楽曲も飽きさせずキッチリ聴かせ切るところもPRIEST譲り。
個人的にはH.E.A.Tの音楽に対して中途半端な印象を抱き続けているので、むしろこちらのほうに集中してほしいと願う。
7位『COMING HOME』/CLEANBREAK
QUIET RIOT、RIOT、STRYPERのメンバーの集合体……といってもそれぞれ中心人物と言えるほどではなく、この手の寄せ集めバンドは期待はずれに終わることが多いが、今回は違った。特に僕のようなRIOTのファンにとっては、かなり聴き応えのある作品に仕上がっている。
今年はFALLEN SANCTUARY、NEW HORIZON、そしてこのCLEANBREAKと、再編成組による正統派HM作品が突然の豊作で、ひとつの潮流になりそうな予感がある。予感というよりは単なる期待に過ぎないかもしれないが、いずれも確実にクオリティが伴っているのが頼もしい。
8位『IMPERA』/GHOST
もはや王者の風格すら感じる――といっても最初からそういう風貌なのでそのまんまなのだが、外見に風格が追いついてきたというか。実際のところ、海外メタル各誌の年間ベストに軒並み挙げられている。(文末の海外二誌ランキング参照)
逆に言うと、ほぼメタルコア系(というかオルタナ? ハードコア? なんて言うだろうああいうの)が並ぶ向こうのメタル誌とここのランキングとの唯一の共通点がこのバンドだったりする。
前作に比べるとメロディにやや緩さが感じられ、だいぶ旋律のバリエーションがなくなってきているのが少し物足りないが、依然として他では聴くことのできない荘厳かつポップな音楽が繰り広げられている。
9位『HATE ÜBER ALLES』/KREATOR
MEGADETH同様、彼らがこのタイミングでここまで鋭利な作品を放ってくるとは。
といっても、個人的には彼らのゴシック的な側面が好きで、断トツで一番好きな作品は『ENDRAMA』だったりする。
本作はもちろん王道スラッシュ路線だが、やはりゴシック通過後の耽美的なフレーズがそこかしこにちりばめられており、それらが疾走曲にも確実な深味をもたらしている。
10位『THE ENDGAME』/TREAT
TREATに関しては、前作が良すぎて年間ベストアルバムに選んだだけに、
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この作品にはやや複雑な思いもある(詳細は以下のレビュー参照)。
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しかしメロディの質は依然として高く、自分の中のリアルな評価としてこの位置に置くことになった。良質な作品であることに間違いはない。
【次点の10枚】
『MY FATHER'S SON』/JANI LIIMATAINEN
『WITH THE MAGIC OF WINDFYRE STEEL』/POWER PALADIN
『FINAL ADVENT』/DYNAZTY
『DECEIVERS』/ARCH ENEMY
『DAYS OF THE LOST』/THE HALO EFFECT
『RESURRECTION』/WILDNESS
『ÖVERGIVENHETEN』/SOILWORK
『ONE FOR THE ROAD』/RUST N' RAGE
『TABOO』/TABOO
『NEON SUNRISE』/CAPTAIN BLACK BEARD
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