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ディスクレビュー『THE TESTAMENT』/SEVENTH WONDER

ザ・テスタメント

ザ・テスタメント

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より輪郭を明確にした歌メロの充実が、バンドの格をさらなるメジャー・フィールドへ押し上げるに違いない。そう確信させるに充分な、スウェーデンプログレッシヴ・メタル・バンドの6th。

前作『TIARA』も全方位的に開放感を増した素晴らしいアルバムで、明らかな成長を感じさせる作品だった。当ブログでも、年間ベストアルバムの7位に選んでいる。

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だがその作品としての完成度の高さは、あとほかにどこへ伸びしろが残されているのかわからない状態を示してもいた。そしてプログレ・メタル系バンドの場合、最後の砦となるのは、やはり歌メロのフックということになりがちであるとも感じていた。複雑な演奏の中に、キャッチーな歌メロで一本明確な筋を通せるか否か。

その一番の成功例は、もちろんDREAM THEATERの名盤2nd『IMAGES AND WORDS』であり、それがあの作品が彼らの他の作品と比べても頭ひとつ抜けた評価を受けている理由でもある。

そして幸いなことにこのSEVENTH WONDERは、KAMELOTの官能的な楽曲を完璧に歌いこなすトミー・カレヴィックという強力な武器を持っている。その歌唱力に関しては、前作の時点に置いても充分に発揮されていたように感じていたが、彼がなぞる歌メロに関しては、まだ改善の余地が少なからずあったということなのだろう。それは本作を聴いて初めてわかる贅沢な不満であり、彼の歌うKAMELOTの近作と比べることによっても見えてくる部分がある。

僕は彼がKAMELOTに加入して以降の作品に関して、好きな楽曲はいくつもあるがアルバム単位で大満足はしていない。もちろんその歌唱力に関しては、むしろ前任者のカーンに比べて安定しているとも認めてはいるし、バラードにおけるそのヴィブラートが放つ色気は、まさしく色気の権化であったカーンをも凌ぐ瞬間すらあると感じている。『SILVERTHORN』に収録されたピアノ・バラード「Song For Jolee」における繊細かつ情感豊かな歌唱など、圧巻のひとことである。

しかしこと歌メロのクオリティに関しては、カレヴィック加入後の作品はいずれも、カーン時代の名盤である三枚『THE FOURTH LEGACY』『KARMA』『EPICA』のレベルには届いていない。それはもちろん、新加入ヴォーカルの責任というだけでなく、メイン・ソングライターであるトーマス・ヤングブラッドの責任は大きいだろうし、なんなら武器であるメロディを失いつつあったカーン在籍時末期のアルバムに比べたら、カレヴィックが加入したことでバンドは再生したといってもいい。

だが歌メロのクオリティがかつてほどでないことは事実であったし、だから僕はカレヴィックにこれ以上の歌メロの改善を望むのは無理筋なのだと、勝手に限界を設定して納得しているようなところもあった。

もちろん本作における歌メロの質の向上が、歌い手であるカレヴィックのみによるものなのか、バンド全体によるものなのかはわからない。バンドにおいては、何がどう作用するかは本人らにもわからないのかもしれない。だが結果として、これまで以上に歌メロがフィーチャーされた作品になっているのは事実だ。

そしてなによりも、カレヴィックの歌メロにまだまだポテンシャルがあるということが判明したのが嬉しい。おかげでKAMELOTのほうにも、この先その向上が見込めるかもしれないからだ。むろん、彼ひとりの力でバンドをどこまで変えられるのかは、わからないけれど。

それにしても②「The Light」や⑦「Mindkiller」における節回しには惚れ惚れする。繊細なヴィブラートを完璧にコントロールし、いったいどこでブレスすればいいのかわからないほどに息の長い数珠つなぎのメロディーを、見事に歌い切ってみせる。

プログレッシヴな楽曲の場合、往々にしてその展開の複雑さゆえに歌メロの焦点がぼやけ、なんとなく楽器陣の演奏に歌が追随するようなケースも少なくない。だが本作で歌われる彼の旋律には楽曲の核心を担うたしかな矜持が感じられ、むしろテクニカルな楽器陣を先頭に立って引っ張ってゆくようなリーダーシップをも感じさせる。

バンドを確実にネクスト・ステージへと昇格させると同時に、この段階にしてさらにレベルを上げてきたという事実が、さらなる成長の余地をも感じさせる。彼らはいよいよ、プログレ・メタルというジャンルを牽引してゆくべき存在になってきた。


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