泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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『LOUD PARK 09』 10/17(土) ライヴレポート

まず評価の前提として言っておかなければならないのは、今回はとにかく音が悪いということ。こもるボヤける跳ね返る。会場の問題なのか音作りの問題なのか。

とにかくどのバンドもギター・リフが不明瞭で、ものすごく遠くのさらにモヤの向こうで鳴っているような感触。初日は特にリフで勝負するバンドが多かったから、これは大きなハンデとして考えてあげるべきだろう。基本的には、リフが高速かつ複雑であればあるほど、何をやっているのかわからなくなり不利だったように思う。

【 】内は満足度(ABCDEの5段階)。

●BLESSED BY A BROKEN HEART 【D】
全体に意外と地味で普通。
Voに特徴がないのが厳しい。格好良いわけでも、声が良いわけでも、歌が特に上手いわけでも、動きが面白いわけでもなく。
演奏は安定しており、特にツイン・リードは明確な武器として機能していた。

●STEEL PANTHER 【/】
観ずに昼飯。そして襲い来る疲れの兆候。早くも予定外の動き。

●OUTRAGE 【B】
まず全体の堂々たる佇まいが素晴らしく、それだけで外国勢と互角に渡り合える威圧感があった。このへんは国際経験が物を言うのだろうか。
Voの橋本はけっして格好良いタイプではないが、全身を使って表現するそのパフォーマンスには、ブルース・ディッキンソン的な頼もしさがある。
音が悪いためリフが判別しづらいのと、もう少し『THE FINAL DAY』からの曲(特に“Wings”)をやって欲しかった。
11月発売のニュー・アルバムから新曲を1曲やっており、静かに始まりやがて疾走する劇的展開が新境地を感じさせた。

FIREBIRD 【/】
チラ観 and away。
佇まいがクールなのを確認。
すっかり疲れて外で休憩。

LOUDNESS 【C】
他のバンド達が苦戦する中、なぜか高崎晃のギター・サウンドだけはいつも通り鋭かった。さすが。
昔の名曲を多くやってくれたのは良かったが、やはり高崎のギター・ソロが、部分部分スポンテニアスに変えられているのが相変わらず気になった。
しかし実はもっと気になるのはVo二井原の軽すぎる歌い方で、コロコロとしたコミカルなルックスとも相まって、どうも威厳に欠ける。声の出し方も、昔ほど振り絞る感じではなく、楽に高音を出す方法を会得した感じで、それが妙な軽さ明るさにつながっている。
しかし高崎の佇まいはカリスマ性がありすぎる。

DOKKEN 【E】
とにかくドン・ドッケンの歌が酷い酷い。
1曲目“Kiss Of Death”なんて、頭から尻まで全編もれなくフェイク三昧。全部歌メロ変えたらそれはもはや別の曲です。音程は終始外しっぱなし、それを誤魔化すためにフェイクした歌メロもあさっての方向、そして声量は驚きの中山美穂レベル。すっかり太ってメタボ&数重アゴな体型も含め、何か深刻な病を抱えているのかと心配に。
彼の場合、以前からライヴでの上ずり加減は指摘されていたが、さすがに数年前まではここまで酷くはなかった。それがここまでになってしまったきっかけが、何かしらあるはず。
曲目は頭から昔の作品中心のベスト選曲だけに、逆にそのぶち壊し具合が浮き彫りに。
さすがに聴いているのが辛くなり、3曲目で退散。多くのファンもそう感じたようで、逃散してゆく一つの大きな流れがフロアに出来ていた。
その後からジョージ・リンチが出てきて“Tooth And Nail”をやって盛り上がったらしいが、この歌で聴きたいとは思わない。

ANTHRAX 【A】
音だけでなく動きも含めて、生粋のライヴ・バンドであることを証明。特にVoジョン・ブッシュの何気ない一挙手一投足が常にグルーヴを感じさせ、歌メロもリズミックで本当にセンスのいい人だと再確認。字余り、字足らずのコントロールが抜群。アンジェラのARCH ENEMYに足りないのは、こういう跳ねるような歌メロのリズム・センスだろう。
スコット・イアン(G)のヘッドバンギング&回るステップも躍動感を感じさせ、チャーリー・ベナンテのドラムはタイトかつ小技だらけで凄まじい。
特に“Only”のジョン・ブッシュにしか歌えない個性的な歌メロと、“Room For One More”の「ドラム・リフ」が素晴らしかった。
音はやはり良くなかったが、グルーヴで乗り切った。

ARCH ENEMY 【C】
アンジェラが加入した直後に比べ、明らかに彼女自身のテンションが落ちているように感じられた。どうも動きが少なく、女王的カリスマ性が陰を潜めているような気が。ひょっとしたら、音の悪さのせいでやる気を削がれていたのかもしれないが。
今回は初期セルフ・カヴァー集発売直後のタイミングということで、やはり初期楽曲中心の構成。となると、いつもとあまり変わらないわけで、やはりここは最新作からの楽曲を多く聴きたかった。
この日もっとも音の悪さの影響を受けていたのがこのARCH ENEMYで、複雑な高速リフの分離が悪く引っ込みがちで、突如前に出てくるリードのメロディでようやく曲を判別できるような状態。特に初期楽曲には同じようなテンポ・構成の曲が多いため、余計にそうなってしまっていた。もともとあまりライヴの音作りが上手いバンドではないが、今回はかなり厳しかった。

MEGADETH 【A】
特に派手なステージ・アクションなどなくとも、ただ優れた楽曲とひたむきな演奏のみで観客を圧倒することができるということを、彼らのライヴはいつも証明してくれる。とにかく圧巻としか言いようがない。
注目の新ギタリストのクリスは、やはり特にこれといった特徴は見出せないものの、かなり余裕のあるテクニックを随所に見せつけており、非常に頼もしい印象。ムステインもそれに引っ張られていつも以上に一生懸命に弾いているように見えた。
問題点を挙げるとすればそのムステインの声が思いのほか出ていなかったことだが、これが音響のせいなのか彼本体のコンディションの問題なのかはわからない。特に難易度の高いリフを弾きながら歌う場面ではほとんど声が出ておらず、やや余裕のなさを感じた。逆に“Symphony Of Destruction”のようにシンプルなリフの楽曲においては、普通に声が出ていて何の問題もなかったのだが。
とはいえMEGADETHにとって歌はさほど重要な要素ではなく、充分にメロディアスなギター・フレーズの連打で見事に押し切ってみせた。

JUDAS PRIEST 【/】
ここまでずっと立ちづくしで疲労困憊により、頭3曲しか観ず帰路に。
アルバム『BRITHISH STEEL』完全再現とのことだったが、その冒頭の3曲を聴いたところで、自分はこの作品をあまり良いと思っていないということに突如気づく。僕にとってのプリーストとはすなわち聖典PAINKILLER』ただ一枚であり、もちろんそれ以外のアルバムにも好きな曲は散見されるのだが、どうしても常にそことの比較になってしまう。
というわけで、2曲目に演奏された、ただそのタイトルがいかにも象徴的であるというだけの駄曲“Metal Gods”を聴かされた時点で、この特別な瞬間を目撃する価値をすっかり見失ってしまったのだった。やはり個人的にはアルバム単位で評価できる作品ではなかったということだ。
いくら貫禄充分とはいえほぼ動きなく淡々と演奏する姿に心動かされることもなく、彼らに付随する物語を特に持ち合わせていない自分のようなリスナーにはあまり魅力的な企画には思えなかった。

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