人生の半分というのは、思いのほか小さな分量であるらしい。
「ピクルス食べないの? それ人生の半分損してるよ」
酢漬けの半生。
「おしぼりで顔拭かないの? それ人生の半分損してるよ」
なのに脇は拭くのね。
「『ターミネーター』の1観たのに2観てないの? それ人生の半分損してるよ」
シュワちゃんが幼稚園の先生になる映画は観てるのに。
「『いいとも』のタモリしか観たことないの? それ人生の半分損してるよ」
ズル休みすると会える人。
「今までずっと口呼吸してたの? それ人生の半分損してるよ」
異臭騒ぎにひとり気づかぬ張本人。
「歌詞カード見ながら曲聴いたことないの? それ人生の半分損してるよ」
読んでますます意味わからず。
「サスペンダーしたことないの? それ人生の半分損してるよ」
背面の三叉路。人生のハーネス。
「賞味期限切れの食品、全部捨ててたの? それ人生の半分損してるよ」
「消費期限」のほうならばさらにボーナス加点。
「ボクサーブリーフの前についてるボタン、一度も使ったことないの? それ人生の半分損してるよ」
不便な玄関。メインは勝手口。
「半チャーハンふたつ頼んだの? それ人生の半分損してるよ」
結果、割高の並盛り。
「パーカーのフード、一回もかぶったことないの? それ人生の半分損してるよ」
乾きにくいおもり。
「毎日きっちり十二時間寝てるの? それ人生の半分損してるよ」
文字どおり。
これらの公式を複合的に検討することにより、測りがたい人生というものの全体量を割り出すことができるかもしれない。