泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

短篇小説「河童の一日~其ノ十八~」

 近ごろ妙にヘッドソーサーが膨らんできたので、今日は街のiPhone修理屋へ行った。

 知らない人も多い(そして知らない河童はいない)と思うが、河童の頭皿交換はiPhoneの修理屋で行ってもらえることになっている。もちろん裏メニューだが、要領はバッテリー交換と同じらしく、「寿命が来ると膨張する」という物理的特性も共通しているからだろう。

 僕のヘッドソーサーもスマホのバッテリー同様、約二年で水分含有量が著しく落ちてくるため、定期的に交換してもらっている。バッテリーにおける電力にあたるものがヘッドソーサの場合水分であるわけだけれど、これもやはりバッテリーの充電と同じく、こまめに水分補給をすると劣化が早まるので注意が必要だ。

 つまり、なるべく乾ききってから水分補給したほうが皿の寿命は伸びるのだが、河童の場合、ヘッドソーサーが完全に乾いてしまうと死に直結するため、ギリギリまで粘るのは危険極まりない。乾燥すなわち死あるのみである。

 ネット上では、「劣化したヘッドソーサーを冷蔵庫で冷やすと復活する」とか、「自力でヘッドソーサーを交換したほうが安上がり」とかいったウマい話が転がっているけれど、そうはいってもヘッドソーサは河童にとってはいちおう臓器のひとつだから、そう簡単にチャレンジングな手法に手を出すわけにもいかない。

 でもとにかくヘッドソーサーが僕の頭上ですっかり膨らみきっていて、なおかつ水分補給した際の発熱も激しく、水をかけてやってもすぐに蒸発してしまうその様は、まるでお好み焼きの鉄板のようで。しかも焼けるのは皿だけであって、美味しいお好みが食べられるわけでも、かつお節が優雅に躍るわけでもない。

 もちろん修理を依頼するならば街の修理屋よりも正規店がベストなわけで、たとえばiPhoneであればアップルストアで修理してもらうのが一番安心である。のちに下取りしてもらう場合なんかにも、非正規店で修理したものは改造品と見なされて下取りしてもらえないといった不利益もある。

 ただし正規店のデメリットとしては、たかがバッテリー交換程度の作業でも、本体を丸ごと二週間程度は預けなければならないということで、つまり河童の本体がどこぞの工場に二週間ものあいだ軟禁されることになる。

 といって、じゃあ河童の正規店はどこかと問われればそんなものはなくて、そもそも河童に正規品も非正規品もない。だからそもそも二週間隔離されるという修理法もなくて、とにかく街のiPhone修理店に持ち込むという以外に選択肢はないのである。
 
 今日はネットのカッパペッパービューティーで初回限定割引クーポンを見つけたので、初めての修理店に行ってみた。若い茶髪のヤンキーみたいな店員で不安だったけれど、これが意外と親切に色々と教えてくれるうえに、

「ソーサー交換するついでに、プラス千円で容量を倍に増やせますよ」とお得な増量サービスの提案までしてくれた。

 ヘッドソーサーの交換代が四千円、そこにたった千円を上乗せするだけで容量が倍増するとなると、これは頼まないほうが損に決まってる。そう判断した僕は、二つ返事で「じゃあお願いします!」と言って、十五分ほどの施術を受けて「倍増河童」に生まれ変わったのであった。

 そして家に帰ると、フル充電よろしくお風呂で経口補水液を1リットルほど浴びてフルに水分補給してから、寝る前にこの日記を書いている。しかしなんだか妙に頭が重いような気がするのは、気のせいだろうか。なんというか、ちょうどこれまでの倍くらい重いような気が。


www.youtube.com

tmykinoue.hatenablog.com

tmykinoue.hatenablog.com

Copyright © 2008 泣きながら一気に書きました All Rights Reserved.