泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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2009-01-01から1年間の記事一覧

「ヌード・マン」(『愛と癒しと殺人に欠けた小説集』所収)/伊井直行

裸で街を歩きまわる男になどまったく共感などできないのに、面白いうえに感動さえできてしまうというのは、一体どういうことなのだろうか。そんなことがありえるのだろうか。おそらくは作者でさえ、この小説の主人公である細川には、基本的に共感できていな…

『THE ROOT OF ALL EVIL』/ARCH ENEMY 『ルート・オブ・オール・イーヴィル』/アーク・エネミー

過去を全面的に洗い直すことによって、現在のバンドが抱える問題点をはからずも浮き彫りにしてしまった作品。だが彼ら自身は、その問題点には気づいていないのだろう。気づいていたら発表していないはず。アンジェラ加入以前の初期三枚からの楽曲をリ・レコ…

つけ髭をつけてつけ髭屋に行ってはならない

ずっと新しい眼鏡を買いたいと思っているのだが、眼鏡を買いに行くにはコンタクトレンズをしていかなければならないということを、羨ましき視力サンコンの皆様はご存じだろうか。なぜならば眼鏡をして眼鏡屋に行ってしまうと、お店の眼鏡をかけるためにはま…

ペンキ塗りたての壁に手形を

明日9/19(土)に発売される『ROCKIN'ON JAPAN』10月号の「JAPAN REVIEW」というページに、NICO Touches the Wallsについて書いた3500字くらいの文章が掲載されています。先日発売された“ホログラム”という妙にキャッチーな楽曲を軸に、音楽への「入口」と…

『ENDGAME』/MEGADETH 『エンドゲーム』/メガデス

自らの美点を謙虚に捉え直すことで、いつの間にか身についていた不純物たちを計画的に排除することに、かなりの程度成功した力作。もちろん完全に音楽的方向性をコントロールすることなど、どんなに知的なアーティストにも不可能なことであるから、意識的に…

大量破壊兵器と野球熊のメルヘン

最近聴いているものや読んでいるもの。 願わくば毛穴から浸透させたいもの。【洋楽】 ★『ENDGAME』/MEGADETH 最近こればかり聴いていて他が聴けない。 初期のスピードと奇天烈さをかなり取り戻した力作。 もちろん「完全に」ではない。 「原点回帰作」とい…

しんぼる方程式

松本人志監督作品『しんぼる』の前売り券を購入したので、明日観にいくことを目指す。★映画『しんぼる』予告編&主題歌(希望) しんぼる×ロック=梅辰 ∴梅辰÷ロック=しんぼるおそらく『しんぼる』とはそういう映画だ。

ヘヴィ・ロック不平等条約

ようやくNICKELBACKの来日公演が決定したらしい。http://www.barks.jp/news/?id=1000052971しかし話題性に乏しいタイミング、STUDIO COASTという箱の規模と立地、そして何よりも日本での彼らの人気度を考えあわせると、8500円+ドリンク代という価格設定は、…

様子見リマスター

もちろんTHE BEATLESもだけど、ついにHR/HM界の重要二作品がリマスター再発される。RIOTの『THUNDERSTEEL』(10/7発売)と、LOUDNESSの『SOLDIER OF FORTUNE』(11/25発売)。前者はもちろんすでにHMリスナーのバイブルだが、後者は長いバンドの歴史の中…

『LEAVE THIS TOWN』/DAUGHTRY 『リーヴ・ディス・タウン』/ドートリー

日本では最も認められづらいタイプの「地味いい」アルバムであり、だからこそ僕らは耳を傾ける必要がある。こういう良質なアーティストを見逃し続けてきたことが、いまの日本の洋楽シーンを痩せ細ったものにしてしまっているのだから。全米年間No.1ヒットを…

『MIND CONTROL』/TANTRIC

1st『TANTRIC』を100万枚売って勢いよく飛び出したものの、2nd『AFTER WE GO』20万枚、3rd『THE END BEGINS』7万枚と、順当に売上曲線を降下させているアメリカン・ヘヴィ・ロック・バンドの4作目(1st以外は日本未発売)。ちなみにメンバーはすでにVo以外総…

近頃小耳チラ見目録

いま聴いているもの読んでいるもの、それでいてまだ理解が半熟状態であるもの。【洋楽】 ★『LEAVE THIS TOWN』/DAUGHTRY 第一印象は、1stに比べるとだいぶ地味。 しかし聴き込めば良くなる予感はある。 全体に起伏に乏しく、当初は似たような曲が続く印象を…

【歌詞】「ナイスミドラー」

星空見上げたつもりが チョビ髭降りそそぐ異常気象 ご自慢のステッキで場外ホームラン 髭空の下のディスタンス胸板鳴らしてご婦人に道を尋ねれば 答え聞くまでもなくステップ&ターン タップシューズの音で猛犬を威嚇 靴底に潜むレジスタンスマジシャンじゃ…

『IN10SITY』/PINK CREAM 69 『インテンシティ』/ピンク・クリーム69

正直マンネリ感は否めないものの、狭い範囲内での健闘を見せるPINK CREAM 69の10作目。デイヴィッド・リードマン加入後の名盤『ELECTRIFIED』で新たな基準を打ち立てて以降、すっかり型に嵌って長いトンネルに入った感が拭えない彼らだったが、結局のところ…

『DESTROY THE WAR MACHINE』/WARRIOR SOUL

グランジ前夜からパンクとHR/HMを融合させた音楽をやっていたにもかかわらず、流行の波に乗ることなく地道な活動を続けてきたWARRIOR SOUL。あえて乗らなかったのか、乗れなかったのか、あるいはどちらでも良かったのか? 今となっては打ち明けてほしいとこ…

「笑い」に忠誠を誓う男

『TVBros.』最新号に、天久聖一の手による電気グルーヴのインタビュー企画が掲載されている。「手による」というのは、読んでいてまさに「手による」という感じがするからで、もちろん単なるインタビューではない。この組み合わせはもうすっかり恒例になって…

【歌詞】「暮らしの手帖」

ねずみ花火に誘われて おびき出されたタレント住職 木魚のリズムに腹が減り メインディッシュは賽銭丼貧乏ゆすりに煽られて 目覚めた阿呆の超能力 一円玉を無限に増やし 無駄に散らかる逮捕劇バナナの皮で転んでは 受け身上達柔の道 猿でも金と言い張って メ…

『SIN-DECADE』/PRETTY MAIDS 『シン・ディケイド』/プリティ・メイズ

美しさと力強さを奇跡的なバランスで融合させた、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの美点をすべて凝縮した一枚である。メロディ、スピード、ヘヴィネスの三拍子だろうが、もの悲しい美旋律とアッパーなハイテンションの二律背反だろうが、明るさと暗さだろう…

『バクマン。』4/大場つぐみ・小畑健

つくづく男同士の友情ってのは面倒くさいもんだなと思う。だがその面倒くさい部分を取り逃さずに描き切るのが、少年漫画最大の魅力でもある。たとえば『スラムダンク』における三井のバスケに対する複雑な思いとか、『ドラゴンボール』でのベジータの立ち位…

SUMMER SONIC 09 8/8(土) ライヴレポート

◆HOLLYWOOD UNDEAD 覆面&大人数でSLIPKNOTのパクりかと思いきや、メロディの感触もラップから歌へのつなぎも、明確に初期LINKIN PARK。パフォーマンスも大人しく、覆面をしていることの凄みも皆無。特別派手なアクションもないので、どうしてもステージ上で…

サマーソニックの道、略して「サ道」(前日記参照)

SUMMER SONIC 09 8/8(土)観戦スケジュール。覚えられない覚え書き。覚えられるものなら覚えてしまえ。【MARINE STAGE】 11:30 HOLLYWOOD UNDEAD 12:35 MASTODON(移動)【SONIC STAGE】 13:40 LITTLE BOOTS(途中で次へ移動)(移動)【MOUNTAIN STAGE】 1…

「サ」になんて、興味なかった。いや正確に言うと、今でも特別興味があるわけではない。だって「サ」だから。字でいえば「ザ」のほうが好きだ。急に大御所感でるし。だけど「ジ」はアルフィーだから駄目。いや、アルフィー結構いい曲あるけども。メリアンて…

『GLYDER』/GLYDER 『グライダー』/グライダー

アイルランド出身の4人組によるデビュー作。英国の音楽誌『KERRANG!』でいきなりの高評価を得たことが評判を呼び、日本でも輸入盤である程度話題になったものの、その後日本盤が出たころにはあまり取り沙汰されることもなくなってしまっていた。しかし中古盤…

そっちから来ないならこっちから行く

「虫コナーズ」の「ズ」の部分に、メーカーはよくOKを出したものだと思う。複数形でもないのに。だがたしかに、「虫コナー」だと語尾が流れてしまい落ち着かない。伝説のクソ野球ゲー『燃えろプロ野球』での理不尽きわまりないバントホームランでお馴染みの…

『THROWING SHAPE』/STRATUS

PRAYNG MANTISのトロイ兄弟が、クライヴ・バーやバーニー・ショウと結成したバンドの唯一のアルバム。'84年リリース。PRAYING MANTISで辛酸を舐めた反省から、当時の売れ線ポップ路線を狙ったとの噂は聞いていたが、予想以上に軽快な音像。感触としては後期K…

『ニッポンの思想』/佐々木敦

批評が外部から行われる行為だとするならば、批評家でありながら「思想」を本業としない作者の立ち位置は、「思想」を俯瞰するうえで絶好の視界を確保していると思われる。特に難しい物事を解きほぐして語るときほど外部の視点が必要となるもので、本書に挙…

圧倒的売り上げのみが作りだすことのできる渦、好き嫌いを越えて〜村上春樹『1Q84』を聴く〜

村上春樹『1Q84』に関して、すでに書評集のようなものも出ていますが、とりあえず無料でいろいろな意見を聴きたいという方は、以下の仲俣暁生氏のブログで紹介されている2つのポッドキャストを聴くと良いと思います。(いちおうここでもポッドキャストへのリ…

『SANCTUARY』/PRAYING MANTIS 『サンクチュアリ』/プレイング・マンティス

忘却の彼方から舞い降りた「哀愁の権化」6年ぶりの新作は、予想外の充実作となった。6th『NOWHERE TO HIDE』がその前の名作5th『FOREVER IN TIME』の焼き直しであったあたりから見えていた行き詰まりの予感は、前作にあたる7th『THE JOURNEY GOES ON』におけ…

『OCTAHEDRON』/THE MARS VOLTA 『八面体』/ザ・マーズ・ヴォルタ

この圧倒的な静けさを前に、「進化」や「新境地」といった言葉をつい使いたくなるが、そういった印象は言葉として便利なだけで、実際のところ非常に疑わしく、何も言っていないに等しい。たとえば本作が、RADIOHEADにとっての『OK COMPUTER』であるかと言え…

『1Q84』/村上春樹 追記

村上春樹の『1Q84』はたしかに力作なのだが、今という時代において彼の言葉から匂い立つ「致命的なダサさ」についての批判がなさすぎると感じている。相変わらずのレモンドロップ&自作サンドウィッチといい、ジャズやクラシックを賛美しロックを無条件に見…

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