PRAYNG MANTISのトロイ兄弟が、クライヴ・バーやバーニー・ショウと結成したバンドの唯一のアルバム。'84年リリース。
PRAYING MANTISで辛酸を舐めた反省から、当時の売れ線ポップ路線を狙ったとの噂は聞いていたが、予想以上に軽快な音像。感触としては後期KANSASを思わせるアメリカン・プログレ・ハード(いわゆる「プログレ」とは無関係)に近いが、期待していたほど徹底的にメロウなわけではなく、キーボード以外は普通のアメリカン・ロックだったりもする。NEW ENGLANDから泣きを減退させたようでもある。
何より期待はずれなのは、トロイ兄弟必殺の泣きメロが、部分的にしか発揮されていない点。中にはここらへんまで大まかに「泣き」に分類する人もいるかもしれないが、個人的にはPRAYING MANTISとは根本的にメロディの質感が異なると感じた。よって彼らのファンだからといって安易にお勧めはできない。ところどころその片鱗は伺えるものの、その予感はすぐに軽快なキーボード・サウンドに掻き消されてしまう。
キーボード主体であるというだけでなく、当時の状況を考えても音質は異様に軽い。そこからは、明らかに必要以上に「音を明るくしなきゃ」という焦りのようなものが透けて見え、彼らがいかに当時の流行路線を意識し(すぎ)ていたかがわかる。
その証拠といっては何だが、最終曲の⑨において、楽曲は我慢の糸が切れたように疾走する。「本当はこういうメタル・ソングばかりやりたかったんだよ!」と言わんばかりに。この曲のみ同時期のJUDAS PRIESTのような硬質さがあるが、これはこれでこのバンドには合っていないから問題は複雑である。
音質に関してはかなり悪く、デジタル・リマスターが施されているとの表記があるが、まったくその意味が感じ取れないレベル。音は頻繁に割れ、揺れ、ノイズは大きい。
その歴史的価値に比べると、内容は物足りない。