泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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2018-01-01から1年間の記事一覧

短篇小説「ハズキルーペがハズかない」

「今日も私は精一杯、力の限りハズけていたのだろうか? あるいは楽をして、中途半端に七割方ハズいたあたりで、満足してしまっていやしないだろうか?」 近ごろ私は、仕事を終えた帰りの電車内で、毎日そう考えている。それはもちろん、私が最近ハズキルー…

やばたにえん無闇応用型短篇小説「えぶりたにえん」

後楽園と豊島園の中間地点にある高校に合格した谷園子は、入学初日に世紀の朝寝坊をしてしまい非常にやばたにえんであった。「ちょっとお母さん、なんでおこたにえんしてくれなかったの! お蔭で初日から大ちこたにえんじゃない!」 顔をあらたにえんする暇…

越えられない壁

「努力は必ず報われる」などという甘言に騙されてはならない。 この世には、誰が何をどう頑張っても絶対に「越えられない壁」というものがある。 エコバッグ<プラダのバッグ<エルメスのバッグ<<<<<(越えられない壁)<<<<<クワマンのセカンドバ…

短篇小説「無効フラグ放題」

よく風の鳴る嵐の夜だった。マンションの一室の床にひとりの男がうつ伏せに倒れている。男を取り囲むように、火のついた百八本のロウソクが配置されている。いつから燃えているのかはわからない。 男の頭上にある窓ガラスが風を受けてビリビリと頻回に震えて…

アレクサにお願いしたいけどできない7つのこと

「アレクサ、ちょっとセカンドバッグ見張ってて!」 →どんな守護神でも、クワマンのセカンドバッグだけは守れない。その上、クワマンに窃盗の疑いまでかけられたアレクサがひと言、「それでもボクはやってない!」「アレクサ、新築のカラオケボックスにカラ…

短篇小説「割引人間クーポンマン」

たった一枚の紙切れが、ひとりの人生をすっかり変えてしまうことは珍しくない。たとえば、戦時下における召集令状。第一志望校からの合格通知。あるいは、勇気を振りしぼって書かれた一通のラブレター。紙切れの持つ意味あいこそ違えど、場合によってはそれ…

短篇小説「一理あらまほしき男」

ある朝、壱村理太郎が満員の通勤列車内で老人男性に席を譲るため立ち上がると、老人は理太郎のつま先を杖で小突きながら烈火のごとく怒りを表明したのであった。「ワシはこうやって、すっかり曲がってしまった腰を伸ばしているのだ! 誰の手先だか知らんが、…

短篇小説「冒険老婆」

男が街の小さな煙草屋を訪れ、窓口に座る老婆に声をかけた。よく晴れた春の日だった。「今日はあいにくの天気ですね」 「いやまったく、そうだねぇ」 老婆はおもむろに立ち上がると、窓口の脇にある勝手口の戸を開いた。男は身をかがめてそこから中へと入っ…

短篇小説「挟まれたい男」

ある朝男はマットレスと掛け布団のあいだ、いわゆる冷静と情熱のあいだに挟まれた状態で目が覚めた。つまり至って標準的な起床であったということになる。ただこの日に限っては、なぜか布団を上から「掛けている」というのではなく、上は布団から、下はマッ…

短篇小説「もしも氏」

我が愛すべき喪師喪史郎は、朝起きて顔を洗い朝食を摂って歯を磨くと、スーツに着替えて満員電車に飛び乗った。もしも彼がサラリーマンであったとすればだが。 しかし実際のところ史郎はサラリーマンではなかったので、歯を磨くまでは一緒だがユニフォームに…

二度手間侍の牛乳茶

「二度手間侍」とは、二度手間をものともしない侍のことである。それが昨日、カフェに現れた。まずは脳内に、そして眼前に。といってもわけがわからないだろうがそれでいい。「二度手間侍」とはその昔、『アンタッチャブルのシカゴマンゴ』というラジオ番組…

短篇小説「愚問の多い料理店」

料理をいただくというのは、ただ料理を食べるということではないらしい。わたしは先日訪れたある店で、その事実をこれでもかと思い知らされた。「家に帰るまでが遠足」と学校の先生が言うのなら、「食べる前が食事である」と今のわたしは言いたい。もし言え…

短篇小説「弔問の多い料理店」

行列のできる料理店など今どき珍しくもないが、その列をなす人々がもれなく同じ色の服を身に纏っているとなれば話は別だ。しかもそれが、もれなく沈鬱な面をひっさげた喪服と来れば。 私がその料理店に初めて足を運んだのは、たまたまその日の私が、知人の葬…

短篇小説「河童の一日~其ノ十七~」

今日はインフルエンザで一日じゅう寝ていた。インフルエンザといっても河童用インフルエンザであって、河童から河童へと感染するのみだから安心してほしい。今のところ人間に感染した事例はないから、もしうつったとしたら、その人は少なくとも何割かは河童…

日本十大あけましておめでとうございます2018

あけましておめでとうございます!(靴下に穴を)あけましておめでとうございます!(よく振ったコーラの蓋を)あけましておめでとうございます!(上司のボトルを無断で)あけましておめでとうございます!(適切な車間距離を)あけましておめでとうござい…

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