1位『WE ARE THE NIGHT』/MAGNUS KARLSSON'S FREE FALL
- アーティスト:マグナス・カールソンズ・フリー・フォール
- 発売日: 2020/06/10
- メディア: CD
敏腕職人ギタリストと新旧実力派ヴォーカリストたちの共演。正統派HR/HMの新たなる教科書的作品。
全方位的にバランスが取れすぎていて、それゆえ決め手に欠けるように見えてしまう向きもあるだろう。だがけっして小さくまとまっているわけではなく、ソングライティングもアレンジも技術も、すべてにおいて突出した結果としての全方位型。
とは言いつつも、やはり特筆すべきはマグナス・カールソンが本気を出したときの楽曲クオリティの高さ。あちこちに楽曲提供しすぎてさすがに枯れたかと思いきや、自身の名を冠したプロジェクトではきっちりと至高のメロディを叩き出してくるあたり、案外食えない男なのかもしれない。
DIRTY SHIRLEYのディノ・ジェルシックとELECTRIC MOBのレナン・ゾンタという、新世代のブルージーな歌い手が様式美路線でも見事通用することを証明している点においても、ジャンルの未来に貢献する圧巻の一枚。
Magnus Karlsson's Free Fall - "Dreams and Scars" feat. Renan Zonta - Official Music Video
2位『MIDNIGHT EMPIRE』/ONE DESIRE
- アーティスト:One Desire
- 発売日: 2020/05/22
- メディア: CD
欧州HMと米国HRの理想的折衷案がフィンランドから。ポップと哀愁の甘酸っぱい配合比率の妙。
欧州的哀愁とアメリカンな爽快感の両立は、『ELECTRIFIED』以降のPINK CREAM 69を思わせる。
詳細は以下のディスクレビューにて。
One Desire - "Godsent Xtasy" - Official Audio
3位『MIRROR STAR』/SINNER'S BLOOD
ザ・ミラー・スター(未知の強豪デビュー作!チリやアルゼンチンのバンドを渡り歩いて来たというハメス・ロブレードのパワフルかつエモーショナルな歌声は必聴)(CD/日本語解説書封入/歌詞対訳付)
- アーティスト:シナーズ・ブラッド
- 発売日: 2020/10/07
- メディア: CD
南米の細長き国チリより現れし新星。だが特にチリらしいというわけではない。というかチリらしい音楽というものを、メタルファンの多くはまだ知らないだろう。
これまたHR/HMどちらもいける楽曲群の充実。今年は正統派に良い作品が多かったというべきか、僕が個人的にそういうものを積極的に求める気分であったのか、その両方か。
ヴォーカルのパワフルな歌唱が光るが、楽曲のアレンジにも気が利いており聴きどころは多い。③「Never Again」のように、グルーヴィーな楽曲までメロディアスに聴かせ切るところにスケールの大きさを感じる。
今後にさらなる期待が高まる要注目のデビュー作。
Sinner's Blood - "The Mirror" - Official Music Video
4位『ALCHEMY OF SOULS -PART Ⅰ-』/LORDS OF BLACK
- アーティスト:Lords of Black
- 発売日: 2020/11/06
- メディア: CD
前作リリース後、引く手あまたの歌い手ロニー・ロメロをいったん手放したうえで呼び戻すという、カムバック・サーモン的手順を経て放たれた充実作。いやロメロは川に放つまでもなく、とっくに完成した立派な鮭ではあったんだけれども。
だがさすがにわざわざ呼び戻しただけはある。これまでのように、「いい線いってるけど痒いところにまでは手が届かない」寸止めレベルの楽曲からひと皮剥けて、いよいよバンドとしての真価を発揮しはじめたように感じる。雨降って地固まる、ということか。
そしてひと皮剥けた結果、表に出てきたのが従来の正統派HM成分というよりは、よりブルータルかつソリッドなARCH ENEMY風の耽美的ギター・フレーズだというのが面白い。一曲目の冒頭から、マイケル・アモット風味のキラー・フレーズが次々と切れ込んでくる気持ち良さ。
これまでよりも明確な輪郭を手に入れて、いよいよロメロの実力にふさわしいバンドになってきた。
Lords Of Black - "Dying To Live Again" - Official Music Video
5位『Ⅲ: PENTECOST』/WYTCH HAZEL
- アーティスト:Wytch Hazel
- 発売日: 2020/11/06
- メディア: CD
70年代の英国ハード・ロックを思わせるレトロで暖かみのあるサウンド。
特に懐古趣味などない聴き手にも、GHOSTとこのバンドは楽曲の質で古さをむしろ新鮮に響かせることができる。
暖かみの背景にある荘厳。その組み合わせの妙が、ここへ来ていよいよポップと感じられるレベルにまで高まっている。
WYTCH HAZEL "I Am Redeemed" (Official Video)
6位『ULTIMATE DEMISE』/WILDNESS
- アーティスト:Wildness
- 発売日: 2020/11/13
- メディア: CD
こんなダサいジャケットを採用した奴らが、良質な音楽を作れるわけがない!
普通ならば秒でそう決めつけても良さそうなところだが、HR/HMのリスナーならば逆に「だからこそ」期待できるパターンもあると経験的に知っているはずだ。
というわけで、内容はジャケットと見事なまでに反比例。至極キャッチーな北欧ハード・ポップ作品であり、昔ならば間違いなくゼロ・コーポレーションが契約していたであろう爽やかな哀愁。
WILDNESS – Die Young (Official Lyric Video)
7位『MOMENT』/DARK TRANQUILLITY
- アーティスト:Dark Tranquillity
- 発売日: 2020/11/20
- メディア: CD
基本的には『PROJECTOR』期のゴシック強化路線を軸に、あろうことかクリストファー・アモットとヨハン・レインホルツという流麗かつテクニカルなツイン・ギターを導入してしまったハイブリッドな一枚。
この二人を入れるのならば2nd『THE GALLERY』のようにもっと速い曲を用意したほうが有効活用できそうな気もするが、メロディのクオリティ自体は彼らの作品中『PROJECTOR』が最も高いと僕は思っているので、方向性としてはむしろ望ましい。
二人のギタリストを存分に使い切れているかというとまだ遠慮があるような気がするが、やはり存在感は随所に。
そこらへんの化学反応に関しては、二人が本格的にバンドに馴染んでからの次作が本当の勝負かもしれない。
DARK TRANQUILLITY - Phantom Days (OFFICIAL VIDEO)
8位『SHAKE THE WORLD』/BLACK SWAN
- アーティスト:Black Swan
- 発売日: 2020/02/14
- メディア: CD
McAULEY SCHENKER GROUPの手柄はほぼ100%マイケル・シェンカーのものであり、それどころかロビン・マッコーリーはマイケルの足を引っ張っていたとすら感じている向きも少なくないと思うが、そんな評価を覆すきっかけとなる説得力を持つ作品。
ロビン特有のねじれた歌メロが、オーソドックスなハード・ロックを印象的な楽曲へと変貌させる。
結果的に、正統派というよりはオルタナティヴなムードすら漂っているが、そのぶん中毒性は高い。
Black Swan - "Immortal Souls" - Lyric Video
9位『SEVEN』/MORS PRINCIPIUM EST
- アーティスト:Mors Principium Est
- 発売日: 2020/10/23
- メディア: CD
以前からCHILDREN OF BODOMフォロワーとして期待はしていたが、なかなかその先へ突き抜けることができないように見えた彼ら。
しかし本作一曲目の複雑怪奇で息の長いギター・リフを聴いた瞬間に、バンドがようやくネクスト・レヴェルへと到達したことを確信する。
随所に妙味のあるギター・フレーズが満載で油断がならない。
MORS PRINCIPIUM EST - A Day For Redemption // Official Lyric Video // AFM Records
10位『A BOAT ON THE SEA』/MORON POLICE
とにかく楽しい遊園地的プログレ作品。ファンタジックで夢想的、ポジティヴでエネルギッシュだが変態的でもある。
プログレにもいろいろあるが、これは「陰」と「陽」でいえば明らかに「陽」寄りのプログレである。
個人的にはKING CRIMSON的な陰のあるメロディが好みだが、時にはこういう明るさも必要だと感じさせるポップな魅力が聴き手の気分を一新させる。
Moron Police - Captain Awkward (Official Music Video)
【次点の12枚(バンド名アルファベット順)】
『RIDERS OF STEEL』/ARIDA VORTEX
『ITHACA』/BLACK FATE
『EXPANSION』/BLINDMAN
『STATE OF DECEPTION』/CONCEPTION
『TRAGIC SETARATION』/DGM
『THE DARK DELIGHT』/DYNAZTY
『DISCHARGE』/ELECTRIC MOB
『RUN RIOT』/OUTRAGE
『ORDINARY MAN』/OZZY OSBOURNE
『RISE』/REVOLUTION SAINTS
『PRIDE』/THE UNITY
『REVENGE』/WARKINGS