やはりこの日の注目はスペイン。といってもシャビやイニエスタがいた時代ほどではもちろんなく、ほかにもパスサッカーをやる国が増えたこともあって、近年は飛び抜けて細かなことをやっている印象もない。とはいえいざ観てみれば、やはり細かいことは細かい。
それにしても不思議なのは、いまだにワントップが大味な印象のあるモラタであることで、しかも今大会ではしっかりキャプテンマークまで巻いている。
チームの性質上、最前線の彼にも大きいわりに細かな役割が求められ、そうしているうちに色々とできるようになってきている印象もないことはないのだが、逆にサイズを生かしたダイナミックなプレーがあるかというと、あまり派手な印象は当初からない。
つまり〈帯に短したすきに長し〉の典型というイメージで、いつの時代にも「ほかに誰かいないのかよ」と言われながら、常に消去法で選ばれてきたようなところがある。
そのモラタが、タイミングの良い飛び出しからいきなり鮮やかな先制弾。これまでの印象にそぐわない活躍で、いい意味で裏切られた。
ちなみに個人的には、GKのウナイ・シモンもなぜレギュラーを張っているのかずっとわからない選手。今季はアーセナルでラヤが素晴らしかったし、足元も彼より上手い選手はなかなかいないと思うのだが、どうもチャンスはないらしい。
そうして僕は、本来チームにとってわりと肝心な最前線と最後尾の人選に疑問を感じたまま試合を観ていたのだが、いざ蓋を開けてみればそのGKウナイ・シモンまでが鮮やかにシュートを止めまくるという。
いろいろとわからないものだな、と思いながら観ていたが、さらなる驚きは中盤を支配するファビアン・ルイスの活躍っぷり。
大柄な選手の少ないスペインの中では190cm近い身長であり、ロドリに加えて「ここらへんにもうひとりくらい大きいのいたほうがいいか」という、それこそ大味枠の選手かとつい見えていた。
それがモラタの1点目をアシストした縦パスといい、2点目のシュートにつながるトリッキーなスラロームといい、「このサイズでこれほどテクニカルな選手がいるのか」というジダン的な技巧が炸裂。しかもすでに28歳。遅咲きということなのか、たまたま注目を浴びる機会がなかったのか。
あとはやはりバルサの若手勢にはいつでも注目だが、ペドリはもはやチームの中心として、ここはやはり16歳のラミン・ヤマル。
大会中に学校の宿題を持ち込んでやっている、という微笑ましいエピソードが紹介されていたが、現在イングランドで絶賛ブレイク中のサカやフォーデンを思わせるレフティーのウインガー。
右サイドから切り込んでくるその姿は、まさに上記2人と共通するものがあるが、決定力や判断の正確性という意味ではまだ2人には及ばない。
しかしこの年齢のときの2人がここまでのレベルにあったかというと、すでにそれよりも上のレベルにあるようにも見え、末恐ろしい存在であることに間違いはない。
ここから先のレベルへ行くためには、技術というよりもそれこそ宿題のほう、つまり知性や戦術理解度が鍵になってくるのかもしれない。そのためにはペップやアルテタのように、本人の努力だけではなく監督の指導方針というのも重要な要素になってくるとは思う。
というわけで結果はスペインがクロアチアに3-0の完勝。前々回W杯準優勝、前回W杯3位のクロアチアは、良くも悪くも目立ったところがなかった。さすがにモドリッチをはじめとするベテラン勢のエネルギーが落ちてきているということなのか。
その前のハンガリー対スイスは、ジャカは順当にやっていたものの、それに対抗するソボスライの活躍がないため開始まもなくBGMに。
イタリア対アルバニアは結果を知ってから観はじめて、アルバニアの先制に少しばかり心が湧いたものの、逆転したイタリアがそれ以上何も起こさないのは経験上わかっていたので、ハイライトに切り替えたら案の定逆転した16分以降の映像はほとんどなかった。昔よりはいくらか攻撃的なパスサッカー志向になっているとはいえ、やはり国民性なのか。
そして今夜の注目はやはりどうしてもイングランド。選手の豪華さと監督の控えめさが本番で上手く噛みあうのかどうか。その前に行われるオランダの試合も、CLアーセナル戦で活躍を見せたシャビ・シモンズあたりは気になるところ。