それにしてもイングランドはいったいなんなのか。
これまでよりも少しだけ良くなったのは中盤のメイヌーのところくらいで、彼と周囲との連携は、少なくともアーノルドの中盤起用に比べればだいぶマシになったようには感じる。
だがそれ以外は相変わらず連動性に乏しく、観ていて面白いとも強いとも言いがたい。しかし結果こうして勝ちきってしまうのだから、強いことは強いということになるのだろうか。
その土壇場同点ゴールを決めたベリンガムは、動きが重いわりには初戦から王様感が漂っていて、彼があんなスーパーなオーバーヘッドキックを決めたことすらも、なんだか自然なストーリーとして受け容れられる感がある。
そして途中からパーマーを投入したことにより、サカは左サイドバックへ。そういえばアーセナルでは、彼はもともと左サイドバックとして出場機会を得たのだった。もはや遠い思い出。
メイヌーの件もそうだが、案外メディアの指摘どおりに変更してみたりするのは、サウスゲイトの憎めないところかもしれない。素直なのか無策なのか。たぶんどっちもだと思う。
とりあえずタレント軍団がここで消えなくて良かったが、しかし決勝トーナメントに入ったからといって、特にギアが上がるというわけでもないようだ。
一方でスペインはさすがの圧勝。といっても先制点を取られたときはどうなることかと思ったが、特に停滞したイングランドを観た直後だと、その全体の流麗さに圧倒される。
両サイドのヤマルとウィリアムズのスピードに、引き続き上手さを見せつけたファビアン・ルイス。同点ゴールを決めたロドリのファーストタッチからシュートへの流れはさすがだし、左サイドバックからどこにでも顔を出すククレジャのポジショニングは終始気が利いていて効果的。
そうなると物足りないのはやはりトップのモラタとGKのシモン、あとセンターバックあたりだが、全体の流れを阻害するほどではないか。チームに哲学とスタイルがあり、間違いなく優勝候補と言っていいだろう。
ベルギーにもイングランド以上に改善の兆しはないが、はたしてフランス相手にまともにボールを持てるのか。
ポルトガルは前戦こそいまいちだったが、フェルナンデス、シウバ、レオンあたりをスタメンに戻せば再びゲームを支配できるはず。
スロベニアは特段の印象はないが、とりあえずアーセナルを袖にしたっぽいシェシュコに引き続き注目しておこう。いまのところ活躍している様子はないので、むしろ獲れなくて良かったというモードではあるのだが、本物ならばここらへんで何かしらのポテンシャルを見せてくれるはず。