泣きながら一気に書きました

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ディスクレビュー『NIGHTBLAZE』/NIGHTBLAZE

Nightblaze

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とにかくジャケットをなんとかしてほしい。それを言えばバンド名だってなんとかしてほしいのだが、どちらもこの美しい音楽性にはそぐわない。――という部分まで含めて、もはや逆にお約束になりつつあるというか、むしろ事前に香ばしさを感じるくらいの嗅覚はこちらも身につけてはいるのだが、それにしても。

こう見えて本作は、ジャケットとバンド名からイメージされるバッド・ボーイズ・ロックンロールなどではもちろんなく、繊細なメロディを丁寧に紡ぐ美旋律ハード・ロックである。それもそのはず、このバンドは、あのPLATENSのグリロ兄弟が率いるバンドであるのだから。

と言われても、彼らは「あの」と言うほど有名ではないかもしれない。しかし当ブログでは、2021年の年間ベスト・アルバム2位に、PLATENSの作品を挙げていた。『OF POETRY AND SILENT MASTERY』というそのアルバムは、隅から隅まで泣きの美旋律がゆき届いた、メロディ愛好家にはたまらない作品であった。

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しかし中心人物が共通しているとはいえ、もちろんわざわざ別のバンドを立ち上げたのだから、音楽性にもそれなりの違いはある。

音像的にはそこまでヘヴィではないにしても、メロディの重厚さは様式美メタル寄りであったPLATENSと比べると、こちらのNIGHTBLAZEにはハード・ロック~ハード・ポップ、もっと言えばAOR寄りの軽快さがある。

そのメロディの感触は、奇しくも同じく2021年の1位と3位に選んだART OF ILLUSIONやCREYEにも通じるものがあり、イタリア産ではあるが「北欧プログレ・ハード」に分類してみたくなる。

個人的なハイライトは、泣きの歌メロが際立っている③「You're Gone」。ほかの曲もおしなべて質は高いが、哀感の強さでは頭ひとつ抜けている印象がある。

全体のクオリティとしては、さすがにPLATENSの名作『OF POETRY AND SILENT MASTERY』には及ばないが、こちらのハード・ポップ的な領域でも充分な可能性を感じさせる。けっして派手な部類ではなく、あるいはそこを補うためにこんなジャケットにしてみたのかもしれない。だとしたら、明らかに補う方向性を間違っているのだが。

ちなみに⑦「Carry On」の曲中に、突如MR.BIGの「Daddy, Brother, Lover, Little Boy (The Electric Drill Song)」のフレーズがチラッと出てくるのはご愛嬌。

そういえば曲名が全体にありがちすぎるのも気になってはいて、「Take On Me」という曲名をカヴァーでもないのにいまさら使うというのは、なんとなくこの音楽性にこのジャケットをあてがってしまう微妙な感性に通じなくもない。

そこらへんも含めて、もう少し洗練されたイメージを加味することができれば、もっと幅広くアピールできる音楽であるとは思う。だがむしろこの垢抜けなさこそを、愛嬌とみなすべきか。


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