泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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【もしもシリーズ】もしもドラクエの防具屋にあの有名人の装備があったら

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国民的RPGである『ドラゴンクエスト』シリーズには様々な武器や防具が登場する。

中にはかなり入手困難なものもあって、しかし本当にレアな装備とは、有名人が実際に身につけている一点物ということになるのではないか。

というわけで、(どういうわけ?)今回はドラクエ防具屋で売っていそうな有名人の装備を考えてみることにした。なぜ考えてみることにしたのかはわからない。完全に無駄な時間と頭の使いかたである。


【サチコの大衣装】
しゅび力 +8
すばやさ -92
みりょく +34
こうげき魔力 -21
メダパニーマの効果(敵全体を混乱させる)

天井まで届くほどの、他を威圧する派手な巨大ステージ衣装。年末の歌唱バトルイベントクリア後、年始に開かれるバザー内の防具屋で購入可能。

装備すると、1ターン目で自動的に国民全体を混乱させる。
しゅび力は、たびびとの服より若干高い程度。しょせんは服であり、その点は期待すべきではない。

こうげき魔力は上がりそうなものだが、結果としてむしろ低下してしまうのは、衣装のインパクトに目を奪われ、発せられる呪文(歌)の印象が薄まってしまうため。

実際のところ、歌唱イベント後の年始に話題にのぼるのは、身につけていた大衣装のことばかりであり、何が唱えられたかを話題にする者は少ない。

物語中盤にはさらに大きな「サチコのメガ衣装」、終盤には画面からはみ出すサイズの「サチコのギガ衣装」が入手可能。

衣装のスケールが大きくなればなるほど各数値は上がるが、輪をかけてすばやさがなくなるため、必ず先制攻撃を喰らうことになる。そうなればもともと服程度の防御力しか持ち合わせていないため、敵の攻撃力が大きくなる終盤においては、最初に受けた一撃がすなわち致命傷になることが多く、実用性に乏しい。

序盤~中盤の敵には有効だがその時期にはまだ入手不可能で、終盤になれば手に入るがそのころには必要がない。そのうえ受注生産であるため非常に高価という、おそろしくタイミングとコスパの悪い防具である。


【ゾゾの宇宙服】
しゅび力 +14
すばやさ -10
みりょく +8
バーハの効果(味方1人のブレス系ダメージを軽減する)
お金贈りの効果(1戦闘ごとに所持金 -1,000,000)

正確には「元ゾゾの」と言うべきだろう。前澤氏が宇宙を旅する際に着用した宇宙服。

しゅび力は至って平凡だが、「天空の城」等の飛行物体に乗り込んだ際には、着用するとそれっぽい雰囲気は出る。

最大の特徴は、戦闘時に装備しているキャラクターが、敵に所持金百万を自動的に献上してしまうという点。ゆえに所持金が百万以下の場合、着用することができない。

そこまでして着用する意味が、あるのかどうか。そこに夢があるのならば、きっとあるのだろう。


【きんにの胸あて】
しゅび力 +3
すばやさ -4
みりょく +6
フールの効果(敵1体のかしこさを下げる)
きんにくルーレットの効果(こうげきの発動率が50%になる)
アナウンサー系へのダメージ +120%
アナウンサー系にのみマホトーンの効果(敵1グループの呪文を封じる)

なかやまきんに君の胸筋を模した、リアルなウレタン製の胸パッド。

しゅび力はほぼ皆無だが、戦闘中に使用すると「きんにくルーレット」が発動。その結果次第で、ランダムで攻撃をしたりしなかったりする。つまり結果的には、単純に攻撃の機会が減少するだけというマイナスの効果。

だが特筆すべきは、自らの筋肉に話しかけることにより、敵のかしこさを下げるフールの効果。加えて、特にかしこさの高いアナウンサー系モンスターが敵である場合、噴き出させることにより攻撃呪文の記された原稿を読めなくさせる特殊効果を持つ。

アナウンサー系の敵が頻出する放送局近辺のエリアへ足を踏み入れる前に、ぜひとも手に入れておきたい。


2021年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・ソング10選

1位「Everafter (feat. Tommi “Tuple” Salmela)」/CIRCUS OF ROCK

Come One, Come All

Come One, Come All

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フィンランドのKING COMPANYのドラマー、ミルカ・ランタネンが立ち上げたプロジェクト作より、心温まるメロディを持つこの曲を。

アルバム『COME ONE, COME ALL』には、他にもジョニー・ジョエリ(HARDLINE、AXEL RUDI PELL)、ダニー・ヴォーン(TYKETTO)、マルコ・ヒエタラ(TAROT、NIGHTWISH)など、有名どころの実力派ヴォーカリストが名を連ねているが、そんな中で異彩を放っていたのがこの曲。

歌い手はトミ・サルメラ――という曲名のフィーチャリング表記を見て一瞬「誰だっけ?」となったが、フィンランドのTAROTのメンバーである。

といってももちろん、TAROTのヴォーカルと言えば、このアルバムにも参加し(③「Sheriff of Ghost (feat. Marco Hietala)」)、NIGHTWISHで有名になったマルコ・ヒエタラがいるわけで、彼の歌声はあまり記憶になかった。TAROTでは、バックボーカル兼サンプラー担当ということになるだろうか。

そんな彼がメイン・ヴォーカルを務めるのが、この「Everafter」という楽曲である。その歌声の、なんと温かく優しいことか。

系統としてはジョン・ウェットンやフィル・モグのような、ブリティッシュな湿り気を存分に感じさせる歌声で、けっして上手さでねじ伏せるようなタイプではない。しかしこのまろやかな独特の声質が、楽曲の持つ叙情性を見事に引き出している。

とはいえ1位からさっそくだがYouTubeに公式動画がないあたり、やはりネームバリュー的にも楽曲的にも地味だと見なされている感がある。だがプロジェクト・アルバムの片隅に埋もれさせておくにはもったいない、秀逸なメロディに心奪われる一曲。


2位「Wild and Free」/ART OF ILLUSION

エックス・マークス・ザ・スポット

エックス・マークス・ザ・スポット

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年間ベストアルバム1位に選んだ作品『X MARKS THE SPOT』から、冒頭を飾る一曲を。

といっても、良質な楽曲が並び立つアルバムであるがゆえ、どの曲を入れるか悩んだ。このバンドの魅力全部入りという意味では、QUEEN風味の強い③「My Loveless Lullaby」を選ぶべきだし、⑩「Catch You If I Can」のポップな節まわしも捨て難い。

だが最終的には、とにかくサビの歌メロが頭に残るこの曲に。軽やかに弾む一音一音の上下動に合わせて、聴き手であるこちらの感情も、気持ち良く揺り動かされるようなメロディ。同居する爽快感と哀愁。

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3位「Wait For Me」/PLATENS

オヴ・ポエトリー・アンド・サイレント・マスタリー

オヴ・ポエトリー・アンド・サイレント・マスタリー

  • アーティスト:プラテンズ
  • マーキー・インコーポレイティドビクター
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続いて、年間ベストアルバム2位に選んだ作品『OF POETRY AND SILENT MASTERY』から。やはり良いアルバムには良い楽曲が詰まっているもので(だからこそ良いアルバムなのだが)、こちらも選曲で悩んだ。

こちらは2位のART OF ILLUSIONとは逆で、歌メロがより強く印象に残っていたのは①「Conspiracy」のほうだったが、歌メロだけでなくイントロのギター・フレーズ等も含む総合力を評価して②「Wait For Me」を。

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4位「Hypersonic」/LIQUID TENSION EXPERIMENT

僕の中では毎度「竜頭蛇尾」でお馴染みのLIQUID TENSION EXPERIMENT。今回も1曲目が群を抜いて格好いい。

「縦横無尽」「大胆不敵」「自由自在」「跳梁跋扈」――彼らの奏でる疾走曲には、なぜか四字熟語がよく似合う。

こちらはもちろんインスト楽曲だが、文字どおりテンション漲るこの曲が、本家DREAM THEATERの新作に収録されているどの曲よりも魅力的であるという皮肉。

例によってその緊張感は以降続かないわけだが、いまのDREAM THEATERに欠けているものが、この一曲に集約されているような気がしてならない。DREAM THEATERの新作も、悪くはないのだが……。

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5位「The Rumble (Never Say Die)」/KENT HILLI

Rumble

Rumble

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PERFECT PLANのVo.によるソロ作の幕を開ける一曲。

音楽性とはイメージの異なるジャケットのせいでだいぶ損しているような気がするが、中身はSURVIVOR路線の王道ハード・ポップ。SURVIVORといえば『ロッキー』の主題歌「Eye Of The Tiger」、その影響でこのタイトルとジャケットに――ということなのだろうか……?

開放感のあるメロディと、余裕すら感じさせる伸びやかな歌唱。かつての王道は、いまのリスナーにはどう響くのだろう。


6位「Lost Chapter」/PENTAKILL

何奴かと思えば、オンラインゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』内に登場する架空のメタル・バンドらしい。

しかしとにかくこの曲に関しては、聴けば誰が歌っているのかは、HR/HMファンならば一発でわかる。ヨルン・ランデである。

かつてデイヴィッド・カヴァーデールのそっくりさんと呼ばれ、ディオのフォロワーでもあった彼だが、いまやすっかりひとりの強い個性を持つシンガーとして認識されていることだろう。そんな事実に改めて気づかされるが、彼の歌唱にはすでに間違いのない唯一無二の凄味が宿っている。

企画アルバムながらも、ヨルン独特の粘っこい節まわしが容赦なく炸裂。圧倒される。

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7位「Back into Light」/SPEKTRA

Overload

Overload

  • アーティスト:Spektra
  • Frontiers
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ブラジル人ヴォーカリストのBJをジェフ・スコット・ソートとアレッサンドロ・デル・ヴェッキオが共同プロデュースしたデビュー作『OVERLOAD』から。

その音楽性は、二人のプロデューサーからイメージする音楽性そのままのメロディアス・ハード・ロックで、やはりジェフが歌いそうなメロディがそこかしこに登場する。

ゆえについ「もしこれをジェフが歌ったら」と想像したくもなるが、このBJというシンガーの歌唱力にも確かなものがあり、魅力的な楽曲を遜色なく聴かせてくれる。


8位「Codebreaker」/TEMPERANCE

ディアマンティ

ディアマンティ

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徹頭徹尾、豪奢に攻め立てるイタリアン・パワー・メタルの真骨頂。

戦隊ヒーローものの主題歌を思わせる、押せ押せの過剰アレンジが気持ちいいパワー・チューン。

『千鳥のクセがスゴいネタGP』でお馴染みの、佐久間一行扮する日谷ヒロノリが歌いそうなクセスゴアレンジにクラクラする。

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9位「Breakout」/NIGHT RANGER

まさか彼らのような大ベテランが、いまになってこんな繊細なギター・フレーズを生み出してくるとは。

アメリカン・ハード・ロックの王道と、テクニカルかつトリッキーなギターの絶妙な配合比率。

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10位「Don't Let It End」/JEFF SCOTT SOTO

新曲ではないので反則気味だが、10位ならば許されると解釈したうえで。ジェフ・スコット・ソートのセルフカバー・デュエット・アルバムより、イングヴェイ時代の名曲を。

カヴァー曲を選ぼうとなったときに、ジェフ・スコット・ソートがこの名曲を選んでくれたことが何より嬉しい。

そしてデュエットの相方は実力者ディノ・ジェルシック(DIRTY SHIRLEY)。途中で歌唱パートを受け渡す際に、「ディノ!」と子分を呼びつけるように放たれるジェフの掛け声が微笑ましい。何度聴いても痺れる芸術的美旋律の氾濫。


2021年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・アルバム10選

1位『X MARKS THE SPOT』/ART OF ILLUSION

エックス・マークス・ザ・スポット

エックス・マークス・ザ・スポット

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今年のはじめにこの作品のレビューを書いた時点で、すでに2021年のベストはこのアルバムになるだろうと半ば確信していたが、やはりその通りになった。これはやはり、年に何枚も出てくるレベルの作品ではない。

ROBBY VALENTINEの1stで達成された「北欧美旋律+QUEEN」という図式を、隅から隅まで行き渡らせてある豪華絢爛な逸品。

メンバー構成は、GRAND ILLUSION、WORK OF ART、LIONVILLEという手練れの融合体だが、それぞれのバンドのいまいち煮え切らない部分を、文字通りの化学反応により昇華させ、見事に突き抜けてみせた。

詳細は以下レビューにて。メロディを愛するすべての人へ届くべき傑作。ファンタジックな北欧美旋律の理想郷。

tmykinoue.hatenablog.com

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2位『OF POETRY AND SILENT MASTERY』/PLATENS

オヴ・ポエトリー・アンド・サイレント・マスタリー

オヴ・ポエトリー・アンド・サイレント・マスタリー

  • アーティスト:プラテンズ
  • マーキー・インコーポレイティドビクター
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どこを切っても泣きのメロディが横溢している。まさに「琴線に触れる」という言葉がふさわしい楽曲群。

イタリア産バンドの3rdだが、かの国らしいオペラティックな壮大さというよりは、とにかく芯にある旋律のクオリティの高さが心に残る。その点、むしろ北欧のバンドに近い繊細さを感じさせる。

ジャケットの絵柄と書体のイメージから、いかにもな「クサメタル系」を想像するかもしれないが、そこまで過剰演出頼みのマッチョな音楽性ではなく、アコギ一本で歌っても映えるであろう主旋律の強度がある。①「Conspiracy」のようなミドルテンポの楽曲も、メロディの展開力できっちり聴かせ切る頼もしさ。

逆に言えば、音質やアレンジにはまだ改善の余地があるように思えて、もうひとまわり予算をかけてプロデュースされた作品を聴いてみたくなる。そうなると現状ある純朴さはやや引っ込むかもしれないが、この歌メロの強靱さは、より大きな舞台を求めているように思われる。

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3位『II』/CREYE

クレイII

クレイII

  • アーティスト:クレイ
  • マーキー・インコーポレイティドビクター
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空気感はプログレ、メロディはポップでありキャッチー、エッジはそれなりにハード・ロック。ではこれをなんと呼ぶべきかとなると、「北欧プログレ・ハード」あたりの表現がふさわしいだろうか。そんなスウェーデン産バンド、充実の2nd。

プログレと言っても楽曲はどれも3分程度のコンパクトなものであり、複雑さや難解さはあまり感じられない。そういう意味ではJOURNEYやKANSASを連想させる部分もあるが、そのメロディには繊細ながらより開放的な感触があって、ロックやメタルというよりは、いっそAORと言ったほうが近いかもしれない。

とはいえそこには当然、北欧ならではの哀愁も多分に含まれてくるため、純粋なAORには反応しないHR/HMファンも、この芳醇なメロディには反応せざるを得ないだろう。やや明るめの、爽快感を伴った哀感。

全体に統一された雰囲気があるため、アルバムとしての完成度が高く、逆に言えば当初はどの楽曲も似通っているように感じられもする。それゆえもう少し重さや速さも取り込んで、強弱や緩急のメリハリをつけてほしいと感じる瞬間もあるが、そこは聴き込んでいくにつれて、個々の楽曲の良質さが徐々に沁み渡ってくるという按配。

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4位『DELIRIUM』/SEVENTH CRYSTAL

デリリウム

デリリウム

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やや乾いた、グランジ以降のアメリカン・ヘヴィ・ロックの音像に、スウェーデンのバンドならではのナイーヴな旋律が乗ることで、ある種独特のねじれた響きが生まれている。

全体の感触としてはいわゆる北欧ハード・ポップというよりも、かつてアメリカで大ブレイクを果たした3 DOORS DOWNあたりに近いものがある。やや陰鬱な重さを伴う美旋律。その陰りが、その他大勢の北欧勢と一線を画する個性として際立っている。

それをこのデビュー作ですでに確立しているというのが末恐ろしい。この先どう変化/進化していくのかにも注目したい。

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5位『SILVER LAKE BY ESA HOLOPAINEN』/SILVER LAKE BY ESA HOLOPAINEN

メロディック・デス・メタル黎明期から活躍を続けるAMORPHISのギタリスト、エサ・ホロパイネンによるソロ・プロジェクト

その音楽性は、まさしくAMORPHISの音楽からデス・ヴォイスを取り除いたような内容で、AMORPHISの中枢にあった北欧の民族音楽という核心部分のみを、すっかり抽出して煮詰めたような濃厚な旋律が凝縮されている。

それによりAMORPHISというバンドが持っていた元来のメロディがより際立つ結果になっているうえ、ニュー・ウェイヴ由来の退廃的な美しさもより前面に出てきており、「バンドに所属するミュージシャンにとっての理想的なソロ・プロジェクト」といった趣がある。

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6位『KINGS IN THE NORTH』/CROWNE

キングズ・イン・ザ・ノース

キングズ・イン・ザ・ノース

  • アーティスト:クラウン
  • マーキー・インコーポレイティドビクター
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ART NATION、DYNAZTY、EUROPE、THE POODLES、H.E.A.Tといったスウェーデン人脈によるプロジェクト。

同じスウェーデン出身のハード・ロック・バンドという共通点があるとはいえ、それぞれの音楽性には少なからず違いがあるため、このバンド名の並びから音楽性を想像するのは案外簡単ではない。しかし聴いてみれば、たしかにそれらのちょうど真ん中であるといえばそうであるようなバランスに仕上がっている。

とはいえ、やはりヴォーカルという楽曲の中心を担うパートの存在感は強く、ART NATIONの溌剌とした、跳ねるような躍動感が全体を牽引している。そこにDYNAZTYの煌びやかなメロディ・センスが繊細さをもたらし、この二人を中心に北欧らしい王道ハード・ロックが組み立てられているといった様子。

だが後半やや飽きが来るという点においては、ART NATIONの諸作品と同等の「竜頭蛇尾」感があり、やはりこのプロジェクトの軸になっているのはART NATIONのサウンドなのだということを、改めて感じた次第。

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7位『RETRANSMISSION』/W.E.T.

Retransmission

Retransmission

  • アーティスト:W.E.T.
  • Frontiers
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すっかり「ECLIPSEの楽曲をジェフ・スコット・ソートが歌う」ようなことになっているプロジェクトの4th。

そのわりにはいかにもTALISMAN的なリフで幕を開ける本作だが、やはり印象に残るのはジェフの、替えの効かない独特の節まわし。

あくまでその歌声を中心に置いた楽曲作りが、4作目にしてかなり熟練の度合いを増してきたというか、楽器陣が開き直って完全に脇役に徹する覚悟を固めた感があり、今回はそれが良いほうに働いている。

これと次に来る「本家」ECLIPSEのどちらを上にするかで迷ったが、楽曲のクオリティが同等であった場合、やはりジェフの歌唱分の上乗せがこちらにはあり、僅差でこちらが上であると判断した。

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8位『WIRED』/ECLIPSE

ワイアード

ワイアード

  • アーティスト:エクリプス
  • マーキー・インコーポレイティドビクター
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彼らに関しては、「前作が良すぎたから」というありがちなフォローも、今回ばかりは認めるべきだと思う。詳しくは以下、2019の年間ベスト10アルバムと前作のレビューを参照。

tmykinoue.hatenablog.com

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それに比べると本作は、「前作よりひとまわり小さい佳作」といった位置づけになる。依然として楽曲のクオリティは高いが、今回は前作に比べると、楽曲がロックンロール系とアコースティック系にはっきりと二極化している。

その二極化により作品にメリハリをつけようとの意図は感じられるものの、皮肉なことに大きく二つに分けたことにより、それぞれ同系統内にある楽曲が似通ってしまっている。それゆえ聴いているうちに、楽曲のバリエーションがやや乏しいように感じられてくる。

結果として前作と比べるとややメロディの哀感が控えめで、北欧の湿り気よりはアメリカンな明快さが強調されている。だがそのことが全体のスケールを大きくしているという感触もなく、むしろ小さくまとまる方向へと向かいはじめているように響く。それでもいまだ楽曲の質が安定しているのは間違いないため、この位置に。

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9位『EYE TO EYE』/THE DATSUNS

Eye To Eye

Eye To Eye

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ニュージーランド産爆走レトロックバンドによる7年振り7枚目の新作だが、インパクトは充分にある。

とはいえ個人的にはメロディを最重要視する人間なので、ここに入れているということは旋律のクオリティも高いということになる。

特にイントロを飾るフレーズのインパクトは随一で、印象に残る出だしがいくつもある。中でも⑤「Brain To Brain」の、哀愁と狂気を同時に感じさせる音階の並びは、脳内をグルグルまわり続ける。

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10位『COMMON GROUND』/BIG BIG TRAIN

英国産プログレッシヴ・ロック・バンドの新作。’90年台前半から活動しているベテランであり、HR/HMというよりは純粋なプログレと言うべきだが、RUSHやDREAM THEATERを通過してきたプログレ・メタル系リスナーの耳には魅力的な響きを持っていると思う。

たとえば②「All The Love We Can Give」の冒頭などでは、XTCあたりの影響も色濃く感じさせ、英国産ハード・ロックNWOBHMとはまた別の、より広い意味での豊かな英国的旋律を感じることができる。

HR/HMファン向けには、激しさという意味ではやや物足りなさもあるが、そこからちょっと背伸びしてみるには格好の位置にある、良質な大人のプログレッシヴ・ロック

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【次点の10枚】
HELLOWEEN』/HELLOWEEN
『DARK CONNECTION』/BEAST IN BLACK
『PERSONA NON GRATA』/EXODUS
『TORN ARTERIES』/CARCASS
『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』/DREAM THEATER
『VERA CRUZ』/EDU FALASCHI
『TORINO』/BE THE WOLF
『THE BATTLE AT GARDEN’S GATE』/GRETA VAN FLEET
『OUT OF THIS WORLD』/KAYAK
『OVERLOAD』/SPEKTRA


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