泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

ザッケローニ日本代表新監督を派手にする試み

人は見た目が9割』という本がひとむかし前に売れたが、この人は10割なんじゃないかと不安になる。日本代表新監督ザッケローニの地味さがハンパない。見れば見るほど、「窓際族」という言葉しか思い浮かばない。しかしこれからの日本代表を背負って立つ人物がそんなことでは駄目だ。こちらが勝手に駄目な印象を持っているだけだが駄目なものは駄目だ。そこで僕が立ち上がろうと思う。

何が問題かと言えばまずはそのルックスである。特に格好良くも悪くもなく、チョイ悪でも好々爺でもなく、シャープでもマイルドでもワイルドでもない。つまりは教頭先生的な中庸感が支配的なわけだが、教頭先生といえば学校内で名前を覚えてもらえない人物No.1でお馴染みの存在である。『金八先生』のアゴなし教頭などまだメジャー感あふれるほうで、「アゴ皆無」&「震えるヴォイス」という二大特徴があるだけでも教頭にあるまじきキャラの濃さであると言える。教頭界とは、「出る杭は打たれる」を地で行く世界なのだ。目の前に「校長」という最高峰のアンパンがぶら下がっているからこそ、そこから目を背け目を泳がせ見て見ぬふりを決め込まなければならない。そんな消極的姿勢が、教頭の地味なキャラクター形成に大きな影響を与えているのは言うまでもない。その地味さには立派な必然性があるのだ。

しかし監督には、地味さなど必要ないのである。ザッケローニ監督がどのようにして地味さを身につけたのかどうかはわからないし興味ないが、彼は地味である必要がない。ちなみに彼の地味さはルックスに限ったことではなく、たとえば「バランスの取れたチームを目指す」という所信表明の、毒にも薬にもならない地味さはどうだろう。そして約10年前に、わりと優勝慣れしているチームを優勝させたというその実績。10年という期間がもたらす遠き日の風化具合と、世界的に有名なチームを順当に優勝させたというこの手柄のボヤけ具合がどうにも地味に感じられてしまう。いや本当は十二分に凄いことであるはずなのに…。

そんな彼に対し僕らができることは、せめてその名を派手にしてやることだけだ。というわけで、なるだけ派手なあだ名を考えてあげようと思う。今のところ本人の希望は「ザック」のようだが、そんな本人の希望を鵜呑みにしては駄目だ。松井秀喜だって、「ゴジラ」という愛称を最初は嫌がっていたのだ。本人が嫌がるくらいのインパクトがなければ、ニックネームは定着しない。そういうわけで、嫌がらせのつもりで考えてみたいと思う。念のため言うが、つもりなだけで嫌がらせではない。

まずはその響きから考えてみる。「ザッケローニ」という響きに内在している日本語成分として顕著なのは、「ふざけろ」「バカヤロー」「コノヤロー」という三つの罵倒用語である。これはかなり攻撃的で派手な予感がするが、どう組み合わせても不謹慎になる。「ザッケローニ」に一番近い響きで意味を通せるのは「ふざけんなバカヤロー」で、いちおう「ニ」を補って「ふざけんなバカヤロー2」とすると、昔あった映画「バカヤロー!2」成分が入ってしまい紛らわしい。これではすっかりオムニバス映画だと思われてしまう。人々はスタジアムではなく映画館(しかも小さめ)に集結してしまう。こんなことではいけない。

ここで思い出すべきは、彼がイタリア人だということで、そういえば「ザッケローニ」という名前の中には、イタリアっぽさがちゃんと含まれているではないか。「ローニ」部分が漂わす「マカロニ感」である。これを生かさない手はない。「ふざけマカロニ」はどうだろう? まるで『ドラクエ』の「おどる宝石」のような生き生きした響きがそこにはないだろうか? 穴のあいたマカロニがふざけている。おそらくあの卒業証書入れの筒をスポンスポン鳴らすような「穴ふざけ」だ。穴にキュウリを詰めてみたり、あるいはもっとあくどいことに食べられないもの(靴ひもなど)を詰めたりなんかもしちゃうかもしれない。そんなことではいけない。

他にも響きからすると、「オーザック」「ケロヨン」「ケロロ軍曹」「パピヨン」などがあり得るが、商品名やキャラクター名は権利関係がややこしいので却下。本人希望の「ザック」を縮めて「ザク」にするとこれもガンダムのキャラクター名で、シャア専用かというとそういう感じもないから量産型ザクになってしまい、これだとむしろ地味の極致になってしまう。「パピヨン」てなんだ。

いっそその名を漢字にしてみればどうなるかというと、「酒浪人」「雑居牢人」「独居老人」「懺悔老人」「The毛漏Ⅱ」…などとなってしまい、地味を飛び越えてすっかり落ち武者感が漂いはじめる。

というわけで万策尽きて、僕はザッケローニのために何もできぬことを悔やみつつ、彼のことを心の中で「教頭」と呼び続けるだろう。「教頭」は外国人の好きな日本の古都「Kyoto」に響きが近いから、案外気に入ってくれるかもしれない。

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