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理想的な「三曲」を求めて――メタル史上最強のトリロジー(三部作)ベスト10

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音楽を聴取あるいは評価する単位として一般的なのは、言うまでもなく「曲単位」か「アルバム単位」だろう。特にアプリやYouTubeで聴くことが増えている昨今、その比重はだいぶ前者に寄ってきているのかもしれない。

しかしそんな「単位」は、あくまでも商品としてリリースされる際の便宜上のものにすぎない――と言ったら明らかに言いすぎだが、だとしたら他の評価単位があってもおかしくはないのではないか?

もちろん当該アーティストのリリース楽曲すべてが「捨て曲なし」であるのが理想だが、そんなことがまずあり得ないというのは、ある程度音楽を聴いてきた人間ならば誰もが痛感している。万が一あったとして、その「捨て曲なし」の中にもいくらかの優劣は必ず存在するわけで。

これは完全に個人的な経験則だが、僕の中には「最高の曲が三曲続けば奇跡」という感覚がある。なぜ三曲なのかはわからないが、もしかすると楽曲の問題ではなく、こちらの集中力がそれしか持たないということなのかもしれない。

しかし昔から「トリロジー」(三部作)という言葉があるように、「三」という単位には必然的な何かがあるような気がしている。良い曲が二曲続くことは珍しくないし、逆に四曲となると稀すぎて、そのうち一曲くらいは弱めの曲が混ざっているのでは?とつい訝しんでしまう。

というわけで、今回はあえて「三曲」という単位で名曲が連続する作品を挙げていこうと思う。

とはいえこれは厳密に「トリロジー=三部作」というワンセットの組曲を選ぶわけではなく(そもそもそういう「作り」の楽曲は少ない)、わりと単純に「良い曲が三曲続いている状態」を選ぶということにしたい。

該当する三曲の「流れ」はある程度考慮に入れることになるが、三曲の内容的な「関連性」や「つながり」は特に重要視せず、あくまでも各楽曲のクオリティに重点を置く。では。


10位『GENESIS』/TALISMAN
②「Comin’ Home」③「Mysterious(This Time It’s Serious)」④「If You Would Only Be My Friend」

Genesis: 2012 Deluxe Edition

Genesis: 2012 Deluxe Edition

北欧特有の美旋律と北欧離れしたグルーヴと小洒落たアレンジの妙。
ストレートな疾走曲②からややグルーヴィーな③、そして小粋なギター・アレンジが光る④へ。
徐々にひねりを増しながらもメロディに芯が通っているため、クオリティにブレはない。

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9位『CRIMSON』/SENTENCED
⑤「Broken」⑥「Killing Me Killing You」⑦「Dead Moon Rising」

Crimson

Crimson

全編絶望的な雰囲気に包まれたアルバムの核をなす三曲。
壮大な⑤のイントロから、哀しみのどん底にある⑥を経て⑦の遠吠えへと至る死のプロセス。
曲名内の単語にも「Broken」「Killing」「Dead」と致命的なものが並ぶこの徹底された統一感。

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8位『THESE DAYS』/BON JOVI
②「Something For The Pain」③「This Ain't A Love Song」④「These Days」

These Days

These Days

ブルージーな②、渋いラブ・バラード③、ノスタルジックな大作④。
カラフルな時期を経て現れた、モノクロームで土臭いBON JOVIの姿。
むしろここにこそ彼らの本質を見る。

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7位『COUNTDOWN TO EXTINCTION』/MEGADETH
⑥「This Was My Life」⑦「Countdown To Extinction」⑧「High Speed Dirt」

Countdown to Extinction

Countdown to Extinction

⑥で立ち上がった重さが⑦で儚い旋律を身に纏い、⑧のスピードをもって爆ぜる。
圧倒的な重苦しさの中で、終始メロディアスであろうとするバッキングのギターが生きる。

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6位『HEADLESS CROSS』/BLACK SABBATH
②「Headless Cross」③「Devil & Daughter」④「When Death Calls」

Headless Cross

Headless Cross

完璧な美しさを持つ②から躍動感のある③で得た勢いを④の重さで完膚なきまでに撃沈。
トニー・マーティンの伸びやかな歌唱と、コージー・パウエルの深いドラム・サウンドが描き出す荘厳な世界観。


5位『METALLICA』/METALLICA
②「Sad But True」③「Holier Than Thou」④「The Unforgiven」

Metallica

Metallica

②の物理的な重さが③のスピードで濾過されて④の精神的な重さへと変質してゆく。
スピードと引き替えに重さを手に入れたと言われた当時のMETALLICAが、一時的かつ効果的にスピードを取り戻し活用してみせた場面。

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4位『WILD FRONTIER』/GARY MOORE
①「Over The Hills And Far Away」②「Wild Frontier」③「Take A Little Time」

WILD FRONTIER

WILD FRONTIER

祖国のアイルランド民謡に立ち返る悠久の①、そこから闘いの意志を湧き起こす②、そして都会的なアレンジを見せる③へ。
唯一無二の特徴的旋律が、徐々に普遍的なロックへと接近してゆく配合比率の推移。


3位『THE PRIVILEGE OF POWER』/RIOT
⑤「Dance Of Death」⑥「Storming The Gates Of Hell」⑦「Maryanne」

The Privilege of Power

The Privilege of Power

バランスを無視して何もかもをフルパワーで注ぎ込んだようなスピード・メタル・チューン⑤⑥二連発の衝撃。
完成度という意味では名盤『THUNDERSTEEL』に軍配を上げるが、瞬間の煌めきはこの二曲のほうが上かもしれない。

そしてその二発のあとに待ち受ける「普通にいい曲」⑦。
いやこれがほんと、ある種RIOTでなくてもいいようないわゆる「いい曲」なのだが、前二曲の着地点としての役割を完遂するその献身的姿勢と、やはりメロディの質の高さで実に沁みる。


2位『TRAPPED!』/RAGE
②「Solitary Man」③「Enough Is Enough」④「Medicine」

trapped!

trapped!

まるで「Jアラート」のような不協和音が人を不安にさせつつ強烈に惹きつける②、誰がどう考えても思いつきようのない複雑なリフに取り憑かれる③、妙にタメの利いた不思議な疾走感を持つ④と、他との圧倒的な違いを見せつける三連打。
この三曲を聴くだけで、RAGEが他のアーティストとは異なる文法を持っていることは明白。
史上最も「替えがきかない」三曲。


1位『LIONSHEART』/LIONSHEART
⑤「Can't Believe」⑥「Portrait」⑦「Living In A Fantasy」

Lionsheart

Lionsheart

この三曲は本当に完璧だ。
しかし最高の楽曲が三曲も続いても、アルバム全体が良いとは限らない。そんな苦い逆説的教訓を孕んだ三曲でもある。
この三つの名曲に反して、アルバムには捨て曲が少なくなかった。他にも佳曲はいくつかあったとはいえ。

だがそれでも、この三曲が実に素晴らしいことに変わりはない。
歌メロ、リフ、アレンジ、ソロ、すべて痒いところに手が届く。
ロディアスな⑤とスピーディーな⑦で荘厳な大作⑥を挟み込む構成も、非の打ちどころがない。

軸となるのはやはり⑥で、発売当時、ラジオ『POWER ROCK TODAY』で初めてこの曲を耳にした時には、「DIOもしくはWHITESNAKEジョージ・リンチとイングヴェイ・マルムスティーンが奇跡の同時加入でもしたのか? だとしても、ロニー・ジェイムズ・ディオとデイヴィッド・カヴァデールがフュージョンしたようなこの歌は何事だ?」と大いなる衝撃を受けたものだ。

その後の来日公演ではメイン・ソングライターであるオウワーズ兄弟が脱退していて散々であったが、それでも名曲は遺る。
ましてやそれが三曲も続くとなれば。こんなに素晴らしい時間帯はない。

ちなみにアルバム1曲目が恐ろしくつまらないので、そこで「諦めないで!」と僕こと真矢ミキティーがZARDを口ずさみながら強く応援している。
(さらに言うと、続く②はCOVERDALE・PAGEくらいの凡曲、③の疾走曲でようやく「もしかして?」となるが、④でまた「やっぱり駄目か」と元の木阿弥に。最強の三曲までの道のりが、遠い)


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