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泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

YES,何も言わず抱きしめて…夏

夢日記

夢の中の僕は、なぜかJ-WALKの「何も言えなくて…夏」というあの超有名曲の歌メロが、何かの明確なパクりであるように思いはじめる。もちろん、起きてみると特にそうは思わないし、そもそもそれについて考える必要をまったく感じない。

だが夢の中の僕は、音楽に対するそんな生半可な姿勢を許さない。主に洋楽を中心に、持っているCDを次々と聴き、その中にJの影(というよりこの場合むしろ「Jが影」だが)を探し求めるが、いっこうに見つかる様子がない。

言っておくが現実の僕はそもそもJ-WALK本体のCDを1枚も持っていない。特にファンではないからだが、しかしなぜこの曲のことが気になるかはわかっている。昔からラジオや雑誌のハガキ投稿ネタや日常会話のネタとして特に馴染み深かったからで、いまだにというか、むしろ最近のほうが、一周して日常会話に登場する頻度は高いくらいかもしれない。同様の意味ではアルフィー関係も汎用性が高い。

探しても探してもJのネタ元が見つからず、諦めかけていた夢の中の僕の脳内に、ふと「何も言えなくて…夏」のメロディにそっくりな、まったく別の日本語曲が流れはじめる。かつてCMソングとして大ヒットした、KATSUMIの「YES,抱きしめて」である。なぜこの曲が浮かんだかというと、これは現実の僕がCDを持っているからである。往年の縦長ジャケットに装填された8cmシングルを。当時妙に好きだったのだから仕方ない。いまだに良い曲だと思っている。

夢の中の僕は、脳内を巡る「YES,抱きしめて」のメロディと「何も言えなくて…夏」のメロディを照合し、確信を深める。この二つは間違いなく同じ曲であり、すなわちJ-WALKがKATSUMIをパクッたのであると。まったく根拠はないし、どちらが先にリリースされたのかもわからぬまま、なぜかその逆は考えにも及ばなかったのは、おそらく僕の持っているCDがKATSUMIのほうだけだったからだろう。

改めて調べてみると、この2曲はほぼ同時期にリリースされている。「YES,抱きしめて」は1990年11月21日、「何も言えなくて…夏」は1991年7月21日発売だが、後者は1990年12月16日に出た『DOWN TOWN STORIES』というアルバムに収録された「何も言えなくて」という楽曲のリメイクらしいので、実質的にはわずか1ヶ月の遅れということになる。

もちろんリリース直前に作曲したとは限らないから、いずれにしろ何月何日に作曲されたものかなどわかるはずもない。ただ、夢の中で下した僕の判断が、思いがけずギリギリのライン上にあったというだけだ。とはいえ基本的には、「自分の持っているほうを本物と判断した」というだけのことだろうが。

と、日付までわざわざ調べ上げるまでもなく、夢の中の僕は「YES,抱きしめて」のシングルCDを実際(夢の中の実際)に掛けることで、Jの元ネタはこの曲であると即座に結論を下す。そして目が覚めた現実の僕は、「YES,抱きしめて」の、辛うじて憶えている箇所だけを何度も口ずさみ、不信感ばかりを募らせる。

だってこの2曲、まったく似ていないから。

とりあえず鏡を見て、「猛烈に髭が濃くなっている」等の副作用がないことを確認して、ようやく本当に目が覚めたのだった。

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