泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

偽ハリウッド女優ケメ子・グレープ=フルーツ

近所に綺麗な方のスーパーと綺麗じゃない方のスーパーがある。この言いかただとどちらにも「綺麗」が入っていてなんだか紛らわしいので、綺麗な方のスーパーを「キャサリン」、綺麗じゃない方のスーパーを「ケメ子」と呼ぶことにしよう。台風にあやかって女性名をつけてみたが、特にパツキンが好きなわけでもケメ子が嫌いなわけでもない。それにしても「キャサリン・ゼタ=ジョーンズ」の「ゼタ」部分がもたらす違和感はなんなのか。「ゼタ」とはつまり「Zガンダム」の「Z=ゼータ」で、何らかの続編を意味するものなのか。そしていつも思うが欧米人の名前に入る「=」ってのはどう解釈したらいいのか。名前に突如数式を織り交ぜ公式っぽく見せることで、理知的なイメージをアピールする作戦か。

さてスーパーの話だった。どうしてもグレープフルーツを買わなければいけないような気がしたので、僕はまずケメ子へ行った。妊娠しているわけではないし特に好きなわけでもないのにグレープフルーツを必要とする日が人間にはあるものだ。

ケメ子は果実類をダンボールに入れたまま店外に放置売りする大胆なヌーディスト的スーパーだ。グレープフルーツもおそらくは百個単位でエロティックに放置してあるが、自由に持っていっていいわけではないらしく1個65円との値札がついている。

一方のキャサリンは、室内で整然と商品を売っているカマトトスーパーだ。さすがにお高く止まっておりグレープフルーツは1個126円だった。さすがに倍近い金額となるとアホらしくてキャサリンでは買う気がしない。僕は再びケメ子へと戻った。

いよいよケメ子でグレープフルーツを買おうと思い、店頭で改めてひとつひとつためつすがめつしていると、どの個体にもわりとコンスタントに青あざのような損傷が認められることに気づいた。ケメ子はDVを受けている!

僕は黒ずんだひとつのグレープフルーツを手に取り、その場でカウンセリングを開始した。もう面倒なのでこのグレープフルーツをケメ子としよう。言い忘れていたが僕の本業は果実カウンセラーである。正確に言えば「ハイパー果実カウンセラー」である。

ケメ子の身の上話は、川の上流から流れてきたところをおばあさんに見つかったところから始まった。もろもろあって最終的には鬼を退治したとのことで、ケメ子はそんな武勇伝を披露した挙げ句、この青アザは鬼に棍棒で殴られたのを防いだときにできたアザであり勲章だと自慢してきたのだった。僕は心底不快に思いケメ子を箱に戻すと、グレープフルーツ全般に対する興味を一瞬のうちにすべて失い帰宅した。

安いグレープフルーツは嘘つき(女優)なので気をつけなければならないんだよなぁ。(みつを)

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