NICKELBACKのチャドが見出したことで知られるカナダ出身の三人組。Voの頭髪はコッペパンのようなリーゼントである。
デビュー当初はVoの声質も含めてNICKELBACKの二番煎じ扱いされ、また音楽的にもまさにその通りだったと思うが、この3rdで完全に化けたというか、チャドの元から巣立つことができた印象がある。むしろ、完成度を追求した結果DEF LEPPARD化した本家の最新作『DARK HORSE』よりも、こちらの方が良いと思える点が多々ある。
本作にはクリス・ドートリーとSHINEDOWNのブレント・スミスがゲスト参加しており、音楽的にはNICKELBACKも含めた以上3バンドの系統と捉えてまず間違いがない。つまり現代ヘヴィ・ロックの中枢であり、「売れ線」という意味では、これはある意味現代の「産業ロック」なのかもしれない。それはもちろん批判的な意味ではなく、それだけこの路線の音楽がキャッチーで、大衆の心をがっちりと掴んでいる、ということが言いたい。
注目すべきは、ビルボードにおける本作のチャートアクションである。ビルボードの表記では、現時点での順位とともに、その作品の最高順位と、何周に渡って200位圏内にチャートインしているかがわかるようになっている。基本的に長期間に渡ってチャートインし続けている作品の場合、初登場で一桁順位を記録しているか、あるいは下から這い上がってきて一桁にまで昇りつめるパターンが多いように思うが、本作の場合、ピークが26位で、チャートインが現時点で67周目となっており、頂点まで盛り上がりきらないまま長いこと居座り続けるという、ある種年寄りの茶飲み友達のような、すこぶる粘り強い動きを見せている。
これは本作がセンセーショナルな話題性やただ1曲のシングルヒットによって売れた作品ではなく、アルバム全体のクオリティと地道なツアーによるライヴ・パフォーマンスがしっかりと評価されているという証拠だろう。もちろん、今はCDの売り上げだけでなく、iTunesなどのダウンロード販売もあるため単純には測れないが、本作のチャートアクションがひとつのデータとして非常に興味深い動きであるのは事実である。
音楽的には、この手のヘヴィ・ロック勢の例に違わずヘヴィ・サイドとバラード・サイドに二分されている印象で、しかし両サイドとも隙がない作りは見事である。ただし楽曲的にはほぼ二系統しかないので、飽きが来る部分もたしかにあるのだが、メロディの充実にはそれを補って余りあるものがある。
旋律の方向性としては、すっかりアメリカナイズされているNICKELBACKに比べるとむしろ田舎臭さを強く打ち出してきている感触があり、ハスキーなVoの声質も伴って、楽曲の種類にかかわらず絶妙な郷愁を感じさせてくれる。そこらへんの洗練されきらない感じが、トップへ昇りつめきれない理由でもあり、ロングセラーを記録する理由でもあるような気がする。
発売からすでに1年以上が経過しているにもかかわらず、本作の日本盤はいっこうに出る気配がない。1stが発売されていたことを考えると、おそらくそれが売れなかったためだろう。だがクオリティはデビュー当時に比べ飛躍的に向上しており、個性もしっかりと打ち出してきている。④“Not Meant To Be”に代表されるように、日本人受けする泣きメロも強烈に盛り込まれているので、次作における日本盤発売と来日公演に期待したい。