泣きながら一気に書きました

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メロディとグルーヴの融合への挑戦者

7/21に、スウェーデンのベーシスト、マルセル・ヤコブが亡くなったとのこと。詳細はこちら↓

http://www.bounce.com/news/daily.php/20281/headlineclick

マルセル・ヤコブといえば、もちろん初期イングヴェイ・マルムスティーンを支えたベーシストとして有名だが、そこでの立場は、後に放逐され嘘つき呼ばわりされた(その恨み節をイングヴェイが楽曲化したのが名曲“Liar”)ように、充分なものではなかった。

彼のベーシストとしての個性が本当の意味で発揮されたのは、やはり同じく元イングヴェイ組のジェフ・スコット・ソートと結成したTALISMANにおいてだろう。

TALISMANの1stは、北欧美旋律の名盤として充分に価値があるが、彼らの真価が発揮されたのは、自由なベース・ラインとファンキーな歌を大胆に導入しはじめた2nd『GENESIS』以降であろう。

そこでは本来相性が悪いと思われていた、北欧美旋律とうねるグルーヴの融合が絶妙なバランスで果たされており、その鍵を握るのは間違いなく、ギター・リフを食うように弾き出されるマルセルの遠慮のかけらもない縦横無尽のベース・ラインであった。

だがそのバランスは非常に難しい統制の上に成り立っていたと思え、次作となる3rd『HUMANIMAL』&『HUMANIMAL PT2』では、グルーヴ寄りになり過ぎた音楽性が、北欧美旋律を持てあますバランスの悪さを伺わせた。

しかし4th『LIFE』において、彼らは前作での経験を生かし、2ndとはまた別次元の、グルーヴィかつメロディアスな音楽性を確立。メロディとグルーヴを適材適所に配置した印象の2ndに比べると、ここでの彼らはその二要素を全編に渡りフレーズ単位に至るまで同居させた感があり、真の意味でのメロディとグルーヴの融合は、このアルバムをもって果たされたと言えるかもしれない。

残念ながらそれ以降の作品においては、特にメロディの弱さや自他からのパクりフレーズが露呈することが多く、その音楽は一定のレベルを保ちつつも、精彩を欠いていたことは否めない。

しかしメロディック・メタル勢があらかじめ避けがちな「メロディとグルーヴの融合」という点において、TALISMANの挙げた成果は、まったくの別角度からEXTREMEが2nd『PORNOGRAFFITTI』において挙げた功績と同等に評価されるべきだと思う。R.I.P.

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