音楽レビュー(HR/HM)
「80年代の有効利用法」を最高の形で提示した作品である。これは皮肉でもなんでもなく、紛れもない褒め言葉だ。70年代リバイバルというのは、ロックに限らず(ファッションなども含めて)あらゆるジャンルでもうすっかり定番化していて、70年代にルーツを持…
北欧ハード・ポップの新星と聞いて、過剰な期待は禁物だ。全体的にすごく惜しい。たしかにメロディアスな部分は多々あるが、全体に思いのほかアメリカン。単調なギターリフと工夫のないリズム、声質はジョーイ・テンペストなのに力みすぎて結構ラフなヴォー…
そもそも完成度の高い様式美HMというジャンルを進化させようという試み自体に無理がある。だがその無理こそが力強さと美しさを生む。無理な出発点から生まれたアイデアは、その無理をくぐり抜けてきた分だけ純粋な力を手に入れる。せめぎあう岩の隙間を通り…
器用貧乏と器用貧乏の相性が良いというのはちょっと信じがたいが、事実そうなっている組み合わせの妙。どちらもドライに技術を駆使しているのに、そこからは温度感のある音楽が生まれているこの不思議。たとえばMR.BIGの場合、技術至上主義の演奏陣を、エリ…
冒頭からいきなりカバー曲で来るとは、なんと度胸のある若武者かと思った。しかしイントロが終わり歌に入るとカバー曲でもなんでもなく、単なるパクりだと気づいて愕然。それもそのはず、リフがあまりにPRETTY MAIDSの“Future World”まんまで、キーボードと…
2枚目のジンクスというものがある。それはもちろんデビュー作が良かったアーティストにのみ当てはまる事柄であって、スタートでコケた者たちの前にそんな贅沢な壁は登場しない。デビュー作にしていきなり豪速球を正統派HMシーンのど真ん中に投げかけることに…
[確かにデスでありスラッシュであるが、これほどまでにメロディアスな音楽は全ジャンルを通じて他にないと断言したくなる泣きの名盤。 ARCH ENEMYのアモット弟ことクリストファー・アモットのギターが繰り出す哀愁のフレージング・センスは、全盛期のマイケ…
ジミ・ジェイミソン名義でありながら、実はジム・ピートリックをどう評価するかで好き嫌いが分かれる作品。 復帰後のSURVIVORとPRIDE OF LIONS、どちらに近いかと言えば、後者に近い。それはつまりジム・ピートリックが全権を握っていることを意味する。メン…
完成度はすこぶる高い。楽曲は間違いなく過去最高の出来を誇り、全体として隙がない。だが隙のなさが面白味のなさと感じられるものも世の中にはたくさんあって、この作品もそれに当てはまるように思う。問題は「隙のなさ」自体ではないのかもしれない。むし…
過小評価されているが、実はLOUDNESS史上最も楽曲粒ぞろいの名作。Vo.のみ米国人のマイク・ヴェセーラ。 一聴してまず感じるのは、英語をネイティヴスピーカーが歌うことによる絶対的安心感と安定感。 前任の二井原の粘っこい発声が、いかにこのバンドの個性…
正直ここまでやってくれるとは思わなかった。 たしかに前作で明確に化けた手応えはあったが、それはあくまでもアルバムの頭数曲の印象であって、後半流している感じは否めなかった。しかし今作は尻尾まできっちりあんこが詰まっている。もはやメタルコアの先…
ジャケ写に垣間見えるメタボリックな腹のごとく、さすがの王者も決定的な弱点をいよいよ隠しきれなくなってきた感がある。普通はそういった弱点は積極的に隠したくなるものだが、そこらへん大胆というか鈍感というだけなのか、あえて隠そうとしないのがむし…
「ジョン・サイクス期のWHITESNAKE+EUROPE」という公式で過不足なく説明できる明確な方向性。同じく欧州産でありながらアメリカで大ブレイクしたという共通点こそあるものの、この2バンドでは質感はだいぶ異なる。 しかしこの足し算は思いのほか相性が良く…
創作だのクリエイティブだの言っても誰しもが先人の影響を受けている、というのは今さら言うまでもない事実だが、ときどきどこまで遡って調べてもそのルーツが思い当たらないアーティストというのがいる。 たとえば村上春樹の文体がレイモンド・チャンドラー…
音楽の世界に限らずどのジャンルにおいても、とかく極端なものが持てはやされる傾向にあるが、では極端なものとは何か?一般にわれわれが「これは極端だなぁ」と思うのは、例えばSLAYERのように「ただ速い」とか、SLIPKNOTのように「見た目が派手」とか、チ…
けっして革命的な一枚ではない。 このアルバムがHR/HMの歴史を変えたとか、実験的アプローチで後続に多大な影響を与えたとか、のちに超有名バンドが彼らの曲をカバーしまくったとか、そういう類の作品とは言えない。 だが歴史の転換点ではなく、平穏な流れ…
EXTREMEのニューアルバム『SAUDADES DE ROCK』が、かなりいい。かなりいいが、最高ではない。なぜならば、彼らはすでにその手でこのアルバムを創造してしまっているからだ。比較対象が悪すぎる。自業自得だ。 再結成とは、この世のすべてが相対評価でしかな…
後半に続くミドルテンポの楽曲を「進化」と捉えるか、「失速」と感じるか、その一点でこのアルバムの評価は決するだろう。 前半部は前作の流れを汲む順当な内容で、勿論2ndを最高傑作とする向きにはその時点で不満もあるだろうが、問題は⑥以降。単調なリフに…