泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

『SURGICAL STEEL』/CARCASS

サージカル・スティール

サージカル・スティール

すべての激音愛好家が聴くべき一枚。カオスの中に宝玉を見出すようなレベルのちまちました宝探しではなく、前人未踏のゴツゴツした岩山を登るうち、その岩山が足元からみるみるとプライスレスな絶景に姿を変えてゆくが如きアンビリバボー体験。激しさの中に美しさがあるのではなく、激しさそのものが美しい。

CARCASSの楽曲クオリティは、結局のところマイケル・アモットに左右されていると思われてきた。もちろん、初期のグラインド・コアっぷりを愛する人たちはむしろ彼を軟弱化の元凶と捉えているだろうが、4th『HEARTWORK』をバンドの最高傑作と感じた大多数のファンは、途中加入ギタリストに過ぎないマイケル・アモットの存在こそが、CARCASSの楽曲の質を保証していると感じていたはずだ。

そのようにマイケル・アモットが神格化された理由は三つある。一つ目は、彼が在籍していた二枚のアルバム(『NECROTICISM』『HEARTWORK』)でCARCASSのメロディアスな側面が開花し、一気にファン層を拡大したこと。二つ目は、彼の脱退後に作られた『SWANSONG』が、明らかにバンドの方向性を見失った作品であったこと。そして三つ目は、その後にマイケル・アモットが結成したARCH ENEMYのデビュー作の中に、名作『HEARTWORK』の芳醇なエッセンスが色濃く漂っていたことである。

時系列を考えても、この三つの点からCARCASSにマイケル・アモットが必要不可欠な存在であるという考えは、とても自然に導き出されるように思う。しかしそんな証拠充分に思えた憶測は、この一作で完璧なまでに覆されることになる。残念ながら本作にマイケル・アモットはいないが、これは紛れもない名作である。しかもARCH ENEMYとは違う意味で、確かに『HEARTWORK』の延長線上にある。ここにマイケル・アモットのギターはないが、しかしその不在に物足りなさを感じる場面はほぼ皆無と言っていい。

個人的には、高速のリフ展開が絶妙な⑥「Noncompliance To Astm F899-12 Standard」が今のところ一番のお気に入りだが、この曲のイントロは何を隠そうCOMPLEXの「恋を止めないで」に似ている。こちらは百年の恋も冷めるような楽曲だが。

17年振りの新作にして正真正銘の最高傑作である。正直なところ、楽曲単位では「Heartwork」「This Mortal Coil」といった超のつく名曲には届いていないし、リフ単位で見れば「Incarnated Solvent Abuse」ほどの振り切れた独自性は見当たらないが、アルバム単位で捉えれば本作が間違いなくベストだろう。「メロディックデスメタル」という語義矛盾を孕んだジャンルを切り拓いた開祖による、会心の一撃

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