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泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

『DIZZY MIZZ LIZZY』/DIZZY MIZZ LIZZY 『ディジー・ミズ・リジー』/ディジー・ミズ・リジー

音楽レビュー(HR/HM) 音楽レビュー(ROCK)

どうあがいたところで、グランジの台頭がロックシーン全体に与えた影響は大きかった。時を経た今となってみれば、グランジを通過したからこそ生まれ得たと言える良質なヘヴィ・ロック(たとえばNICKELBACKやSHINEDOWNのような)の登場が、かのムーヴメントへのポジティブな解釈を可能にしてくれる。しかし90年代当時のHR/HMシーンにおいて「グランジの影響」とはつまり、ほぼ例外なく「悪影響」を意味した。「実験作」という名のもとに、スピードからグルーヴへの安易な乗り換えが横行し、文字通り「失速」するバンドが相次いだ。流行の真っ只中にいた米国産スラッシュ勢の変節はまだ予想できたにしても、「DEF LEPPARDよ、お前もか!」といったあたりまでその影響力は浸透していたのだから、少なくともその強烈な感染力は認めざるを得ない。

DIZZY MIZZ LIZZYの登場は、未だグランジの影響下にあったHR/HMシーンの中で、例外的に希望と展望をもたらしてくれるものだった。当時日本で受け入れられたHR/HMバンドの多くは、完全にアメリカの流行から断絶したところで伝統的手法を死守する者たちにほぼ限られ、とても前向きな状況とは言い難かった。そんな中、若干20歳の青年たちによりデンマークから届けられた本作には、まともにグランジという流行音楽と向き合った上でさらに前進を試みる姿勢が見え、非常に頼もしく思えたのだった。
 
THE BEATLESの曲名をもじったバンド名からわかる通り、主にメロディにおいてその影響は少なくない。だが一方でNIRVANAALICE IN CHAINSなどグランジ勢からの影響も大きく、うねるようなグルーヴはもちろん、湿度の高い旋律にまでそのエッセンスは染み込んでいる。だがALICE IN CHAINSが「鬱病ビートルズ」の異名を取っていたことからも明らかなように、当時のグランジ勢には、旋律的な部分におけるTHE BEATLESからの影響は大きかった。だからこの今昔二方向からの影響というのはまったく矛盾せず、彼らはそこに北欧的美意識を行きわたらせることで、見事なオリジナリティを確立してみせた。
 
彼らがグランジという、当時のHR/HMバンドがこぞって消化不良を起こしていた音楽を見事に消化できたのは、もちろん才能の賜物ではあるが、地理的にも世代的にも、流行の本拠地から隔てられていたということも大きいだろう。内側にいると見えぬ長所が、外側から見るとピンポイントで見えるというのはよくある話で、新しい物を作る人は常に外部の視点を持つべきであるというのもまた重要な点である。

もっとも一方では、田舎の女子高生の方が流行に過剰反応してヤマンバ出現率が高いとか、みのもんたが勧めたココアが地方へ行けば行くほど品切れ続出とか、外側へ行けば行くほど意味不明な事態になるケースもわりと頻繁にあるのだが。
 
バンドは本作に続く好盤『ROTATOR』を出した後に解散。中心人物であったVo.のティム・クリステンセンはその後もソロ活動を続けており、昨年末にも新作『SUPERIOR』を発表している。

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