泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

『CRACK THE SKYE』/MASTODON 『クラック・ザ・スカイ』/マストドン

凄いアルバムだと思う。

聴いていて頭の中に浮かんできた「凄い」「面白い」「好き」「完成度が高い」という4つの褒め言葉の中から、最も適切だと思う言葉を選ぶとそうなった。逆に言えば、他の3つの褒め言葉はどこかしら適切でない。

2nd「LEVIATHAN」で築き上げた独自のプログレ・メタル的スタイルを、練りに練りあげて4作目にして早くもここまで来たか、という感じである。

プログレ・メタルというと、どうしてもDREAM THEATER方面の美旋律を連想してしまうが、ここにあるのは泥臭い70年代ハード・ロックの旋律であって、感触としてはまるっきりストーナー・ロックだ。そういう意味で、本質的には「メタル」ではなく「ロック」であると感じる。あえて荒々しさを残し、現代的洗練を拒否したその音像は、SPIRITUAL BEGGARSの『MANTRAⅢ』あたりに隣接している。

聴いていて飽きないという意味では、非常に面白味がある。展開が豊富で、旋律の繋がりに必然性が見えにくいのが、聴き手にプログレ的興奮を呼び起こす。それは優れた純文学作品を読むときに感じる、文章がポキポキといちいち脱臼させられながらかろうじて繋がってゆく感触を思わせる。かと言って先がまったく読めないわけでもなく、最終的には帳尻を合わせて全体をまとめ上げてくる手腕は、メタル畑ならではの熟練技であると言える。だから面白いとは言っても、メタル的手法の内側での面白さに限定されてはいる。それゆえ、この作品に対して「面白い」という言葉を選びきることには、ある種のためらいもある。

好きか嫌いかでいうと「好き」だが、本格的にのめり込むのはかなり難しい作品でもある。メロディに「泣き」や「美しさ」が欠けていると感じるのがその主な要因で、70年代ロックの「泥臭さ」を優先すると、そこらへんはどうしても犠牲になる。これだけ泥臭く地に足のついたロックを鳴らしていながら、気宇壮大な光景を描ききってみせる飛躍力は素晴らしいが、雄大であるぶん、孤独感や繊細さが足りないと感じるのも事実。歌詞も含め、スケールが大きすぎて共感できない部分もある。前作にあったストレートな疾走感が、楽曲展開の犠牲となってやや減退しているのも少々残念。

最後に完成度について。作品コンセプトが明確であるがゆえに、つい完成度が高いように感じてしまいがちだが、実は隙が多く、まだまだ伸びしろはあるように思う。楽曲展開に隙があるのは、逆にロックならではのルーズな感触を演出するためであったりもするので必要なこともあるのだが、聴いていて「ここらへんはしばらく聞き流しても大丈夫だな」と無意識に耳が離れる瞬間が少なからずある。むしろ「散漫な展開をストーリー・コンセプトで強引にまとめ上げた」という印象もあって、それは楽曲の山場が見つけにくいという難解さにも繋がっている。

聴き手に音楽の持つ摩訶不思議さを考えさせる「凄さ」を持った作品であることは間違いない。クリエイティヴィティを激しく触発する音である。扇情力はないが、扇動力がある。そういう意味で本作は、おそらくは彼らの狙いどおり、叙情詩ではなく叙事詩である。どこまでも冷静な混沌がここにある。

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