泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

『バクマン。』1/大場つぐみ・小畑健

言わずと知れた『DEATH NOTE』コンビによる二作目。漫画家を目指す主人公たちを描く現代版『まんが道』だが、もちろんその趣は大きく異なる。

ストーリーを走らせるには「キャラクター」と「動機」を二本柱として機能させる必要があるが、この作品の場合、明らかに後者偏重である。明確な特徴を打ち出せていないキャラを、「故人の遺志」と「結婚の約束」というダブル動機で強引に走らせるという構図。展開の巧みさがその強引さを感じさせないのは流石だが、あくまでキャラの魅力で読者を惹きつける往年の少年誌作品と比べ、大いにバランスが異なっている。

一般に、作品を「面白い」と評価する場合、そこにはかなりの確率で「上手さ」を混入させてしまう傾向にあるが、その二つは本来あまり関係がない。絵も構成も下手なのに面白い漫画は確実に存在するし、絵と構成だけが抜群に上手くてつまらない作品は山ほどある。

1巻を読む限り、痒いところに手が届く(届きすぎてあざとくもある)展開は非常に気が利いているが、それが面白さには直結していない。キャラクターが面白くないと、結局のところ上手さは面白さの上積みにはならない。まさしくそれは砂上の楼閣のようなもので、構造としては「キャラ」が「地盤」で、「絵」と「構成」は「建物(うわもの)」であるからだ。

読んでいて危ういのは、最高と秋人の主役二人が作り上げてゆく作品が、どうも面白そうに思えないこと。それはやはり、二人がそもそも面白味のない人間に見えているからで、つまるところ二人の会話が面白くないからだ。優等生であるというキャラ設定がむしろ災いして、優等生特有の面白味のなさが前面に出てしまっている。

「キャラ」というのは、「動機」とともに物語を走らせるエンジンである。本作においては、前者のエンジンがほぼ機能停止状態であるため、後者を二台設置して動力を稼いでいるのは、とても賢明な補強策に思える。しかしやはり土台となるべきメイン・エンジンを欠いているため、物語進行にどうしても強引な手段が必要となる。

そういったストーリー展開のターボ・チャージャーとして本作に導入されているのが、「DNA」と「運命」という要素で、これは「才能」と「運」と言い替えてもいい。たしかにこの二つの要素を加味すれば、物語は無理にでも動き出す。困ったとき、停滞したときは、才能と運さえあればたいがいのことは打開できる。だがそれは、ある種のドーピングでもあって、何度も使われると、読んでいるほうは無力感に襲われるという副作用がある。運と才能だけで切り開かれる物語に、いったい何の魅力があるのかと。そこには夢も希望もありはしない。読み手はただ自らの不遇を嘆くことしかできない。

そもそもそこに自力解決の感覚を持ち込んだのが、「友情と努力」で「勝利」を手にするという、ジャンプの基本精神であったはずである。その形式からの脱却をあらゆる作品が試みているけれど、結果として生まれたのは、才能と運命のみで都合良く展開するバトル漫画ばかりである。もっと人間の力が見たい。

主役二人の台詞から読み取れる漫画観、女性観など、共感できぬ点は多々あるものの、全体としての出来はレベルをクリアしており、話題性も大きい作品なので、今後のキャラ強化に期待したい。

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