これは「化けた」と言っていいと思う。2006年から活動しているベテランにそのような言葉はふさわしくないかもしれないが、これまでとは明らかに楽曲の持つキャッチーさのレベルが違う。人間、化けるのに早いも遅いもないということを改めて思い知らされる。フィンランド産メロディアス・ハード、4年ぶり6枚目のアルバムである。
その変化/進化の背景にある要因は、残念ながら2022年に訪れた前Voの死というマイナス要因であったかもしれない。だがそのように変わることを余儀なくされる苦境の中、新Voを迎えて制作された本作は、まさに起死回生の一作と言っていい。
これまでも彼らの音楽には、ところどころ光るフレーズがあった。だがウェルメイドであることがむしろ平均的な印象を与えてしまっているのか、全体にどこか地味な印象は否めず、繰り返し聴きたくなるような押しの強さに欠けていたように思う。
それがここへ来て、一気に楽曲の強度を高めてきた感触がある。あるいは強制的に変化を求められる状況がある種の開き直りを促したのか、曲中の盛り上がりどころを摑まえる精度が各段に向上しており、あらゆるフレーズがこれまでよりも遥かに確信を持って演奏されているように響く。着実に打率を高めつつも、芯を捕らえることによって同時に本塁打数も伸ばしてきたような、根本的なスケールアップが実現されている。
メロディの質感的にはいわゆる北欧というよりは、終始どこか英国的な煮え切らなさと湿り気を帯びており、MAGNUM全盛期の『ON A STORYTELLER'S NIGHT』あたりを彷彿とさせる。そこにやや現代的なエッジを与え、さらに弦楽器を加えたような按配。
そのうえでDIO風味の⑥「All Seeing Eye」やパワー・メタル系に振り切ったASTRAL DOORS風の⑦「King Ghidorah」のような楽曲もあり、ハード・ロックとヘヴィ・メタルの中間地点から、ややメタル寄りに足を踏み入れてきたようなバランス感。
全⑧曲とコンパクトにまとめてきたことも功を奏しており、ラストに待つプログレ寄りの長尺タイトル曲⑧「Gravity」でやや間延びする感はあるものの、この手のメロディ重視作にありがちな中だるみは避けられている。
ジャケットのシンプルな図柄もあいまって地味な印象を受けるかもしれないが(PINK FLOYDを意識?)、ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの中でもメロディを軸として聴く向きならば、聴いてみる価値は間違いなくあるだろう。