泣きながら一気に書きました

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『TAKE IT TO THE LIMIT』/HINDER 『テイク・イット・トゥ・ザ・リミット』/ヒンダー

Hinder - Take It to The Limit

徹頭徹尾、恥ずかしげもなくアメリカン・ドリームである。

といっても開拓者的な夢ではなく、パツキン姉ちゃんと夜な夜なパーティー三昧のほうのアメリカである。ちなみにCDケースを開けると、棚ぼた的にプレイメイト系全裸写真の連なりがこぼれ落ちてくる。こぼれ落ちた写真からは、さらに乳房がこぼれ落ちている。いくらなんでもこぼし過ぎである。帯にもどこにも何も書いていないが、袋とじ的エロス特典である。こいつら徹底している。

音の間を生かしたミドルテンポの楽曲と、大衆的バラードが交互に繰り出される。“Kickstart My Heart”のような疾走曲がひとつでもあればアルバム全体の格がもう一段上がるように思うが、アメリカ向けには必要ないのかもしれない。だがヨーロッパや日本でブレイクするには、その手の曲も欲しいところ。

疾走感のないグルーヴィーなアメリカン・ロックには退屈なものが多いが、彼らの場合それは当てはまらない。度を越えてハスキーなVo.の個性で聴かせてしまう部分もあるが、実はバッキング・ギターのセンスによるところが大きいように思う。隙間の多い演奏を縫うように奏でられるギターの単音リフやオブリガートが、定型のアメリカン・ロックに自由度を与えている。ノリ重視の楽曲さえも思いがけずメロディアスに感じるのは、ひとえにこのギター・アレンジの賜物である。むしろギタリスト達が自由に弾くスペースを確保するために、速い曲をやりたがらないのかもしれない。

何ごとも極端なまでにやりきれば面白い、という典型である。たとえありがちなスタイルであっても、突き詰めればおのずと個性は出てくるものだ。一聴した印象はさほどでもなかったが、聴き込むほどに味が出る、意外と小技の効いたアルバムである。

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