泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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【タイプ別】「メタルはメタリカしか聴かない」という人が次に聴くべき名盤5選

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METALLICAというバンドは、間違いなくハード・ロックヘヴィ・メタルという音楽を世界中に行き渡らせることに貢献してきた。特に2000万枚以上を売り上げ、いまだビルボードにチャートインしている91年作『METALLICA』(通称「ブラックアルバム」)をきっかけにメタルを知ったという人は多いだろう。

しかし一方で、いやだからこそ、「メタルはMETALLICAしか聴かない」という音楽ファンも多い。たしかに『METALLICA』は圧倒的な完成度を誇るアルバムであるし、またMETALLICAというバンドは、その時期ごとに大きく姿を変えながら多面的な魅力を放ってきた。そういう意味ではMETALLICAが「代えのきかないバンド」であることは間違いない。

だがあらゆる魅力を兼ね備えているからこそ、METALLICAはリスナーにとって、様々なバンドへの橋渡し役となり得る。ここを入口として、ぜひ勇気を持ってメタルの世界へと足を踏み入れてみることをおすすめしたい。

今回はこのような観点から、《「メタルはメタリカしか聴かない」という人が次に聴くべき名盤5選》を挙げてみる。本当は彼らのルーツ的なバンドも取り上げたいところだが、残念ながらその時代のMVがあまり残っておらず、また現代リスナーには音質面でハードルが高いと判断し、なるべく古さを感じさせない90年代以降の楽曲を取り上げることにした。

本当はもう少し音楽的に距離のあるアーティストも取り上げたかったが、今回は入門編として位置づけ、あくまでも「近く、入りやすい入口」を意識したチョイスになっている。マニアックなアーティストに関しては、いずれまた機会があれば。

前述したように、METALLICAというバンドは多彩な魅力を持っている。それゆえ彼らのどこに魅力を感じているのかは、聴き手によって千差万別だろう。その点も踏まえて、今回はMETALLICAの魅力をあえて抽象化して振り分け、それぞれ冒頭にキーワードを設定。そのキーワードにフィットするおすすめ作をそれぞれ挙げる、という形式を取ってみた。

自分がMETALLICAのどこに魅力を感じるかによって、次の一歩が決まる。そのようにして聴く音楽の趣味を広げたり深めたりしてみるのも、音楽を聴く醍醐味ではないかと思う。


【重さ】


「Them Bones」/ALICE IN CHAINS(アルバム『DIRT』収録曲)

重く陰鬱で、引きずるような重さ。90年代初頭、NIRVANAPEARL JAMとともにグランジ・ムーヴメントを牽引したALICE IN CHAINSMETALLICAの名盤『METALLICA』は、そんなグランジ包囲網の中心へと投下され、爆発的大ヒットを記録した。

グランジ系バンドの中でも、ALICE IN CHAINSは最もメタル寄りの音楽性を持つ。しかしその核にあるのは、「鬱病ビートルズ」と称されたことからもわかるように、意外なほどにキャッチーで、時にポップとさえ言える旋律である。凄絶な重さの中に、メロディの宝を探す楽しみ。

DIRT

DIRT


【エッジ】


「Primal Concrete Sledge」/PANTERA(アルバム『COWBOYS FROM HELL』収録曲)

Cowboys from Hell

Cowboys from Hell

その見た目も含め、すべてにおいて暴力的でエッジが立っている。しかしやはり強烈に印象に残るのは、限界を超えたギターのディストーションと魂の咆哮のマッチング。

一方でその根底をなす哀感あふれるメロディには、JUDAS PRIESTら英国勢の影響を強く感じさせる。


【歌い回し】


『How You Remind Me』/NICKELBACK(アルバム『SILVER SIDE UP』収録曲)

Silver Side Up

Silver Side Up

METALLICAのジェイムズ・ヘットフィールドのヴォーカルには、独特なクセというか「節回し」がある。METALLICAといえば、特にその初期においては華やかな楽器陣の演奏に注目が集まりがちだが、特に『METALLICA』以降の作品においては歌に重心を置いた曲が目に見えて増えた。

そのジェイムズ特有の歌い回し(「歌メロ」というよりは、「歌い回し」と言う方がふさわしい)を、最も聴きやすい形に昇華させてみせたのが、このNICKELBACKのチャド・クルーガーだろう。

音楽性としては、METALLICAが『LOAD』『RELOAD』で目指した「やや土臭いヘヴィ・ロック」をよりポピュラーな形に磨き上げた形。しかし正直その2作に比べると、NICKELBACKのほうが楽曲の平均クオリティは高い。そのぶんやや小さくまとまっている感はあるが、聴きやすくもある。そこは前例を参照できるフォロワーの利点であり宿命か。


【展開美】


「Pull Me Under」/DREAM THEATER(アルバム『IMAGES AND WORDS』収録曲)

Images & Words

Images & Words

METALLICAの2nd『RIDE THE LIGHTNING』~4th『…AND JUSTICE FOR ALL』あたりは、変拍子や曲展開が多く、プログレッシヴ・ロックの影響が強く見られる。METALLICAのヘヴィネスをその音像に取り入れつつ、プログレ的展開美をもう一段階推し進めたのが、DREAM THEATERであると言えるかもしれない。

もちろんDREAM THEATERの方が遥かにプログレからの影響が強いが、METALLICAの曲展開を好ましく感じる向きには、トライしてみる価値は充分にあるだろう。METALLICAの「荒くれ感」を重視する人にはおすすめしないが、その激しさの中に美しさを見出す聴き手には、必聴の名盤である。


【混沌】


「People=Shit」/SLIPKNOT(アルバム『IOWA』収録曲)

Iowa

Iowa

METALLICAは展開美を持つバンドであると同時に、この世の混沌を具現化してみせたバンドでもある。矛盾しているように聞こえるかもしれないが、魅力的な作品の多くは、こういった逆説を孕んでいる。

そしてその混沌をより煮詰めて濃厚に凝縮したものが、SLIPKNOTの音楽である。もちろんここにはメタルに限らず、その他あらゆる要素がごった煮状態に盛り込まれているが、その混沌の手触りはやはりMETALLICAに通じるものがある。

それは「美しさ」と「混沌」が楽曲の中で相通じている感触がたしかにあるからで、この混沌にもまた間違いなく緻密さが宿っている。


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短篇小説「RP爺」

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ヒント爺は、今日もRPGの世界を旅する勇者たちに情報を与えるためだけに生きている。

この世界はすっかり荒廃してしまった。しかしそれがなぜなのかは、ヒント爺風情にはわからない。彼に与えられている情報は、あまりにも少ないからだ。

いまヒント爺の住んでいる村では、昨年から水不足が続いている。もう一年あまりも雨が降っていないのである。そんな村に旅人が来ることはもはや滅多にないのだが、昨日は珍しく剣と盾を持った典型的な勇者が訪れた。盾が皮製だったところを見ると、まださほど冒険は進んでいないようだ。

勇者はずかずかと村に入ると、目についた村人に片っ端から話しかけていた。まるでナンパ師のように見境がないが、情報に飢えているのだから大目に見てやろう。村の名称や近隣の地形など、基本的なことは人に訊ねる前に「ググれカス!」と撥ねのけたくなる気持ちはやまやまだが、彼らはデジタルな世界の中に生きているにもかかわらず、ネットには随分と疎いらしい。

勇者という生き物は、どうやら「人に訊く」以外に物を調べる手段を知らない。そしてどういうわけか、挨拶のできない奴が多い。それどころか、いきなり無言で民家に入り込んできて、無断で壺を破砕したりクローゼットをおっぴろげて中の物を持ち出したりもする。そうやって手に入れた盗品を、道具屋に持ち込んで換金までするというから呆れた勇気だ。

昨日出会った勇者も、挨拶なしにいきなり話しかけてきた。しかしヒント爺は特に驚きもせずに言った。

「東の川を渡った先に、火山があってな。あれが噴火してから、この村にはすっかり雨が降らなくなっちまって」

勇者は足踏みをしながら聴いている。思いのほか食いつきがイマイチなので、ヒント爺はもうひと押しすることにした。

「村の若い衆が何人も様子を見に行ったんじゃが、誰ひとり帰って来んのじゃよ…」

しかしこの男、どうも相当にレベルの低い勇者のようで、そこまで言ってやってもまだボーッと話の続きを待っている。これが噂に聞くゆとり世代のゆとり勇者であろうか。仕方がないので、ヒント爺は最後にダメ押しの台詞をつけ加えてやることにする。

「悪いことは言わん。あそこには絶対に近づかんほうがええ」

これで火山に向かわない勇者などいるはずがない。ヒント爺の基本スタンスは、いわゆる「上島竜兵作戦」である。「押すなよ、押すなよ」と言ったら、人は必ず押す。

だからもちろん、「火山に近づくな」という警告は、「今すぐ火山へ行け」という意味に他ならない。そこへ行かないことには、クリアできないことになっているのである。

しかしこの勇者、そこまで親切に情報を振ってやったにもかかわらず、先ほどから村の入口付近をうろついているフリルの美女にばかり何度も話しかけている。あれは村の外から派遣されてきたコンパニオンであり、「ようこそ、マンダラベリー村へ」とこの村の名前を無闇に知らせることしか能のない女である。

なんと助平な勇者であろうか。そしてなんとゲーム勘の悪い勇者であろうか。ヒント爺はもう一度同じ情報を奴にくれてやろうかと思ったが、この世界ではこちらから勇者に話しかけることは固く禁じられている。

ヒント爺は勇者が話しかけやすいように、それとなく勇者に近づいてみた。しかし体が触れるほど接近してみても、勇者はいっこうに話しかけてくる様子がないのである。これではヒント爺、もはや手の打ちようがない。

やがて勇者は、明らかにHP満タン状態であるのに宿屋へと吸い込まれていった。ヒント爺は持ち場が屋外であるため、建物内に入ることはできない。無念である。

翌朝、宿屋の出口でいま一度同じヒントを再放送してやろうと待ち構えていたヒント爺には脇目も振らず、勇者はそそくさと村の外へ旅立っていった。ヒント爺は途方に暮れた。その日の夕方、村に一年ぶりの雨が降った。

「あやつ……」

ヒント爺は、自分の仕事を誇りに思っている。


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