泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

『THE RESISTANCE』/MUSE 『ザ・レジスタンス』/ミューズ

MUSEは基本的にメタル・バンドだと思う。もちろんそれっぽいルックスではないし、音楽性も多岐に渡るため簡単に括ることができないのは承知の上で。

壮大さへの志向、演奏技術の高さ、クラシック音楽の導入、泣きメロ重視の姿勢など、彼らの基本的な趣味趣向が典型的なメタル・バンドのそれなのである。前作にはまるで「KING OF METAL」ことMANOWARを彷彿とさせる派手派手しい“Knights Of Cydonia”があったし、同じく前作収録の“City Of Delusion”あたりは、DREAM THEATERを彷彿とさせるプログレ・メタルな構成要素を備えた楽曲だった。

一方で彼らをメタル外へと連れ出しているのは、主にリズム面における工夫と電子音の大胆な導入であって、これらは本来メタルとは相性が悪いと思われがちな要素である。四角四面でない字余り的でダンサブルなリズムは緻密な構築美を損なう原因となるし、安っぽい電子音は壮大重厚な音世界を光沢だけのメッキ世界に見せてしまう。

しかしこの二点の欠如が、メタルという音楽領域の拡大を妨げてきたのもまた事実で、そういう意味では、メタルファンがたとえばこのMUSEの新作を聴くと、何かしら可能性を感じることができるはずだ。メタル特有の威厳とスケール感を維持しながらも、同時にUKロック的な繊細さと優美さ、そしてグラム・ロックやニュー・ウェイヴ由来の洒脱なイメージを成立させるというアクロバティックな方法論を、MUSEは常に追求しているように見える。

そしてその試みが最終的にスマートに仕上がっているという点が、このバンドがメタルに分類されない最大の要因であり、メタル勢に決定的に欠けている部分でもある。やはり仕上がりの格好良さというのは、ファッションも音像も演奏スタイルも含めて、ないよりはあったほうが入口が広がるのでいい。

だから本作は、メタル・ファンにとってはそこから外へと飛び出す出口(いや入口か?)として機能するし、逆に非メタル派にとっては、メタル世界へと通ずる自動ドアとなり得るだろう。

本作はコンセプト・アルバムであるが、思ったほど構えた雰囲気はなく、シンプルなロック・ソングの①からすんなり入れる仕組みになっている。その後もバリエーションの豊富さを見せつけながらも、前作に比べれば充分にわかりやすい楽曲が続く。前作ファンの中には、その流れに物足りなさを感じる向きもあると思うが、中盤の⑥あたりではさすがのダイナミズムを見せる。

その一方で話題性の高い後半⑨〜⑪の組曲に関しては、正直「壮大なアウトロ」的な印象もあり、楽曲というよりは作品全体としてのスケール演出を重視したような仕上がり。欲を言えばここまでクラシックまんまな曲にするのではなく、もっと随所にロック的激情を注ぎ込んで破綻させてほしかったが、これはこれでコンセプト・アルバムのまとめとしては機能している。

全11曲54分(最後の3曲は組曲のため実質的には全9曲)とけっして長大な作品ではないが、聴後の満腹感は2枚組レベルのものがある。

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