泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

『THE WAY OF THE FIST』/FIVE FINGER DEATH PUNCH 『ザ・ウェイ・オブ・ザ・フィスト』/ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ

SOILWORKSLIPKNOTを足して2で割って、全体に荒くした感じ。なんとも身も蓋もない言い方だが、それ以外の影響をまったく指摘せずとも、このバンドの音楽性はほぼ過不足なく説明できる。それでもある程度新鮮に聞こえるのは、上記2バンドが、ともに本来の魅力を見失いつつある時期であるからかもしれない。

この作品を前にして改めて感じるのは、SOILWORKの『NATURAL BORN CHAOS』という北欧発のアルバムが、メタル・シーン全体に与えた影響の大きさである。あの作品は、あらゆるコワモテ系メタル/ヘヴィ・ロック・バンドに、コーラスで朗々とメロディを歌い上げる勇気を与えた。今となってはむしろ不思議に思えるかもしれないが、かつて攻撃性を前面に押し出したエクストリームなメタル音楽フィールドにおいて、美旋律を歌い上げることは禁じ手というか、おそらくは恥ずかしいことだった。

厳密に言えば、それはSOILWORKの功績ではなく、かの作品のプロデュースを手掛けた奇才デヴィン・タウンゼンドの手柄であるのかもしれない。エクストリーム・ミュージックに、ある種爽快感を感じさせるコーラスワークを導入した彼のセンスは、『NATURAL BORN CHAOS』へと確実に受け継がれていた。それは叙情性一辺倒の北欧メロディックデスメタルを大きく変貌させただけでなく、そこにできる限りのアレンジを施し、ゴージャスなプロダクションで聴かせるという、全体的なスケール感の拡大をもたらした。アメリカでの実績及び評価という意味では、同じ北欧勢でもIN FLAMESのほうが格段に上だと思われるが、音楽的なターニング・ポイントとしては、SOILWORKの『NATURAL BORN CHAOS』の革新性をもっと評価すべきだろう。USメタルコア勢にも、その影響は少なからず受け継がれている。

と、すっかりSOILWORKのレビューになってしまっているのは予想通りなのだが、1曲目からリフとコーラスがまんまSOILWORKなのだから仕方ない。ちなみに2曲目はモロにSLIPKNOTである。節操がないようにも思えるが、この2バンドに対しては意外と忠実なので音楽性にさほどブレはない。結果、クオリティも安定している。インタビューなどでは80年代メタルの影響を公言しているようだが、実際そこまで遡れる要素はあまりなく、上記2バンド以外で散見される影響元はPANTERA的なリフ&リズムと、JUDAS PRIEST的なリフ&リード・ギターくらいだろう。しかしいずれもコーラス部分でSOILWORK風味にまとめ上げてくるため、結局のところSOILWORK的なのである。

だがそれは別に悪いことではなく、かといって良いことでもない。オリジナリティという面からはマイナスだが、クオリティ的にはもはや、ある種の鉄板路線である。この種のメロディアスな激音が、米国ヘヴィ・ロック・ファンの間で受け入れられているというのも頼もしい。このアルバムを気に入ったら、ぜひSOILWORKの作品(特に4th〜6th)も聴いてみてほしい。

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