泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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『SHALLOW LIFE』/LACUNA COIL 『シャロウ・ライフ』/ラクーナ・コイル

各種保険が効きまくっていて、凄まじく安全な音である。

イタリア産ゴシック・メタル・バンドの5作目だが、もはやイタリア感もゴシック臭もあまりない。そもそもイタリア感は当初から希薄だが。で、イタリア感って何?(不明)

つまりはアーティスト・サイド(レコード会社含む)が、イタリアもゴシックもたいした売りにはならぬと判断したわけで、結果としてはおそらくその思惑通り、普遍的な「メタル」としての要素が残ったと言える。「メタル」といっても伝統的ヘヴィ・メタルのことではなく、今様アメリカン・ヘヴィ・ロックとしての「メタル」である。だからインダストリアル要素もゴージャスなキーボード演出も普通に含まれる。

プロデュースにLINKIN PARKを手掛けたドン・ギルモアを迎えたことが何よりの安心保険で、それが当然のように機能しているのは流石である。このレベルならば地井武男も安心してオススメできる。このバンドにとっては、メジャーなプロデューサーを迎えアメリカ向けにシフト・チェンジすることは大英断だったのかもしれないが、アメリカを中心とする音楽シーン側から捉えれば至極標準的な選択肢でしかない。

つまりは「LINKIN PARK以降のヘヴィ・ロック」として非常に良くできていて、つまりはメイン・ストリームど真ん中の音である。女性Vo.と男性Vo.の混声というのもすでに珍しくはなく、LINKIN PARKの影響を女性Vo.で調理したEVANESCENCE路線そのまんまと言える。

欧州からそちらへ方向転換した前例としては、WITHIN TEMPTATIONが挙げられるが、よりヘヴィ・ロック然としているぶん、あちらに比べればこのLACUNA COILのほうが潔く魂を売っている。WITHIN TEMPTATIONは、現段階ではまだバラード系の楽曲が多く、メタル・ファンからすると音圧不足な場面も少なくないが、こちらは全編にわたって重さが確保されている。

EVANESCENCEと比較するならば、音像的にはちょうど1stと2ndの間で、曲のクオリティもその中間レベルには達している。メイン・ソングライターを失ってストレートなヘヴィ・ロック路線に進んだ2ndに比べれば、メロディの質は高い。もちろんあの美メロ大洪水の名盤1st『FALLEN』には遠く及ばないが、もうあのクオリティが期待できそうにないEVANESCENCEよりは、こちらに期待したほうが今後も収穫が見込めるのも事実。

流行に乗るにはワンテンポあるいはツーテンポ遅い気はするが、普遍的なクオリティはあるので見込みどおりファン層は拡大するだろう。

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