泣きながら一気に書きました

不条理短篇小説と妄言コラムと気儘批評の巣窟

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【2016年】年間ベスト・アルバム10選(ハード・ロック/ヘヴィ・メタル)

1位『SORCERESS』/OPETH

SORCERESS-DIGIPAK

SORCERESS-DIGIPAK

プログレッシヴ・ロックが追い求めてきたものは、難解さ、複雑さ、高度な技術などではなく、その先にある美しさだった、ということを改めて思い知らせてくれる耽美的傑作。

無論技術も高く、ある種の難解さも複雑さもここにはあるが、それらはあくまでも手段であって、目的ではない。すべてが至高の美に収斂している。

永くつきあえる一枚。


2位『THE PASSAGE』/DGM

パッセージ

パッセージ

かつての地味なプログレ・メタルから、洗練された様式美パワー・メタルへ。

ミケーレ・ルッピ(ex.VISION DIVINE/KILLING TOUCH他)風の伸びやかな節回しと、マグナス・カールソン(MAGNUS KARLSSON'S FREE FALL/LAST TRIBE他)を思わせる鋭利なギターの音色が、質の高いメロディを明確に伝え切る。

特に前半の流れとメロディの平均値の高さは完全に予想外のレベルで、前作も良かったがここへ来て「化けた」と言いたい。


3位『BATTLES』/IN FLAMES

イン・フレイムス『バトルズ』【通常盤CD(日本盤限定ボーナストラック/歌詞対訳付き/日本語解説書封入)】

イン・フレイムス『バトルズ』【通常盤CD(日本盤限定ボーナストラック/歌詞対訳付き/日本語解説書封入)】

けっして多くのオールド・ファンが望むような、かつての北欧メロディック・デス方向へレイドバックしたわけではない。

むしろ近作の流れを汲むアメリカナイズされた方向へと歩を進めたまま、全体を徹底して磨き抜くことで劇的にメロディの精度を向上させてきた。

HOOBASTANKDAUGHTRYを手掛けたハワード・ベンソンをプロデューサーに迎えたことが、思いがけず良い方向へ働いたということか。

近年試行錯誤を重ねてきたことがようやく実を結んだ、という結実の作。


4位『BROTHERHOOD OF THE SNAKE』/TESTAMENT

テスタメント『ブラザーフッド・オブ・ザ・スネイク』【CD(日本盤限定ボーナストラック/歌詞対訳付き/日本語解説書封入)】

テスタメント『ブラザーフッド・オブ・ザ・スネイク』【CD(日本盤限定ボーナストラック/歌詞対訳付き/日本語解説書封入)】

  • アーティスト: テスタメント,エリック・ピーターソン,アレックス・スコルニック,スティーヴ・ディジョルジオ,ジーン・ホグランチャック・ビリー
  • 出版社/メーカー: ワードレコーズ
  • 発売日: 2016/10/28
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至極攻撃的で殺傷力の高い作品。

全体のスピード感は初期作品を彷彿とさせるが、あの頃のナイフのような鋭利さに比べると、鉈のようなパンチ力を強く感じる。

そのぶんややリフ作りに粗さが目立つが、業師アレックス・スコルニックの流麗なギター・ソロが、そこにハッとするような彩りを添える。


5位『MOONBATHERS』/DELAIN

Moonbathers

Moonbathers

とにかく女性ヴォーカルがなぞる歌メロの美しさを際立たせるためにすべてが機能している。

これまで女性の歌を中心に据えたメタルバンドは数あれど、歌メロのキャッチーさは随一。

このバンドがここまでやるとは、正直思っていなかった。


6位『THIS HOUSE IS NOT FOR SALE』/BON JOVI

This House Is Not for Sale

This House Is Not for Sale

リッチー・サンボラの脱退がどう響くかが懸念されたが、その不在感はたしかに大きいものの、それを補って余りある歌メロ充実作。

けっして派手な作品ではないかもしれないが、聴き手がじっくりつきあった分だけたしかな収穫をもたらしてくれる、中身の詰まった作品。


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7位『DYSTOPIA』/MEGADETH

dystopia

dystopia

前半を駆け抜ける典型的MEGADETH節がやはり圧倒的だが、中盤から後半にかけてのミドルテンポの楽曲群にも、地味ながら癖のある味わいがある。

もちろん『RUST IN PEACE』までの狂気的な緊張感は望むべくもないが、竜頭蛇尾が続く近作の中では、比較的後半の緩みが少ない作品。


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8位『LEGACY』/MYRATH

Legacy

Legacy

チュニジア発の「アラビアン・メタル」は、何よりその独特の旋律が癖になって仕方ない。

音楽的にはシンフォニックかつプログレッシヴなメタルであり、正統派と言ってもいいが、この独自のメロディ・センスには「替えが効かない」魅力と可能性を感じる。


9位『PENALTY BY PERCEPTION』/ARTILLERY

Penalty By Perception

Penalty By Perception

再結成以後も良作をリリースし続けているデンマーク産スラッシュ・メタルバンドの新作。

欧州型スラッシュの理想形を提示した前作『LEGIONS』ほどではないが、疾走感とエッジとメロディ、その必須三要素の融合レベルはやはり高い。


10位『THE STAGE』/AVENGED SEVENFOLD

ザ・ステージ

ザ・ステージ

ここへ来て大きくプログレ方向へと舵を切った実験作。

やや密度や精度が足りないと感じる部分も少なくないが、ここ数作のヘヴィ・ロック寄りのミニマムな作風よりは、彼ら本来の旋律美を引き出しているように感じる。

1曲目がいきなり8分、そしてラストの曲で15分を超えるというその挑戦的なスタンスに、バンドの心意気を見る。

新語・流行語年間大賞語「神ってる」が物足りないので様々にカミらせてみる

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新語・流行語大賞2016』の年間大賞語に選ばれた「神ってる」という言葉。受賞の勢いに乗ってメディアだけでなく政治家までもがこぞって使い出しているが、これがどうにも物足りない。

そう感じるのは、そもそも意味的には「神懸かってる」という既存の言葉ですっかり事足りるからである。そこから二文字省略したことで響きに若干のポップさは出るものの、意味的には特に変わらないので新語としてのパンチが足りない。

ならばポップな響きだけ残して、意味を変えてしまえば良いのではないか。何が「良い」のかはわからないが、良いことにする。どうせ元の新語が間違った日本語なのだから、気兼ねする必要はない。

言葉の意味を変えるには、漢字を変えてみるのが手っとり早い。以下、「神ってる」という言葉を様々にカミらせた顛末を記す。「カミらせる」の意味がもうわからないのだが。


【紙ってる】

《意味》
1.メモを取ること。
2.紙の本を読むこと。
3.トイレットペーパーで臀部を拭うこと。
4.観客席からステージに向かって紙吹雪を投げること。転じて、おひねり。

1~3の意に関しては、現代というデジタルな世の中ならではの表現ということができる。

ひと昔前であれば、メモを取るのも、本を読むのも、尻を拭く際も、手に取るものはわざわざ言うまでもなく「紙」であると相場が決まっていた。

しかし今どきは、メモを取るには紙ではなくスマホ等のデバイスが、本には電子書籍が、尻にはウォシュレットという選択肢が存在する。

だからわざわざそれらの行為を、「紙に」あるいは「紙で」しているということを示す言葉が必要になってきているのである。

一方で4の意は、古き良き伝統文化から受け継がれたものである。

無論、全部ひっくるめてこんな言葉はない。以下同様。


【髪ってる】

《意味》
1.髪を切ること。
2.髪を結うこと。セットすること。
3.パーマをあてること。
4.髪を染めること。
5.増毛・植毛すること。
6.禿げていること。禿げかかっていること。
7.カツラをかぶること。
8.カツラがズレること。
9.カツラを新調すること。
10.カツラが似合うこと。

つまり髪に関するすべて。もはや多義語である。

「部長、今日も髪ってますね~!」と言われた場合、それがどの意味に当たるかは、前後の文脈や自身の頭髪の具合、周囲からの認知度などを考慮に入れた上で、適切なリアクションを選択しなければならない。


【噛みってる】

《意味》
今まさに、ドーベルマンに噛みつかれている状況を表す。

正確には受動態で「噛みられてる」とすべきだが、どっちにしろ間違っているので大差ない。

こんなことを言う前に救急車を呼ぶべき。


【上ってる】

《意味》
「上さん=妻」が著しく機嫌を損ねている状態を指す。

「かみさんのカミナリ」というダブルミーニングから。


【仮眠ってる】

《意味》
仮眠している状態のこと。

「ごめん、いま仮眠ってるとこ」など、自らが仮眠=就寝中にこの言葉を発せられるかは謎。

「かみってる」と読み、「かみん」の「ん」は発音しない。


【カミってる】

《意味》
何かしらの秘密をカミングアウトすること。

それに対する正しいリアクションは、「だから何?」か「知らんがな」の二択。


【ケミってる】

《意味》
ケミストリー川畑式に、顎の下へサングラスをぶら下げて着用すること。

転じて、誤った行い。

もはや「カミ」ですらなく。


tmykinoue.hatenablog.com

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短篇小説「万物ファースト社会」

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果物ファーストの八百屋と珈琲ファーストの喫茶店とパーマネントファーストの美容院がショップファーストの商店街に並んでいる。いつの間にやら、この世はすっかりファーストまみれになってしまった。

果物ファーストの八百屋で野菜を買うともちろん店主に怒られる。あくまでも野菜より果物の総量が多くなるように買わなければ、レジを打ってもらえないのである。店側が「果物ファースト」を謳っている以上、当然といえば当然の所業ではある。

ちなみに客と野菜のどちらが「セカンド」なのかも定かではなく、あるいはそれらはとんでもなく下位に、たとえば「店主の嫁が脱ぎ捨てた靴下」の次あたりにランクインしているのかもしれない。

珈琲ファーストの喫茶店で紅茶を頼んだりしたら大変なことになる。いちおう紅茶もメニューに書いてはある(しかもセイロン、ダージリン、アールグレイの三種類!)のだが、だからといって頼むのは勇者の蛮勇、愚の骨頂である。この店では、紅茶一杯につき珈琲が二杯ついてくるシステムになっているからだ。もちろん料金は三杯分取られるのは言うまでもない。

店主はなによりも、「ファースト」の地位にある珈琲が機嫌を損ねてしまうことを恐れているのだ。この喫茶店における客の地位は、入口でカランコロンカランと鳴るドアベルの次であると言われている。

パーマネントファーストの美容院でパーマをかけないと人間扱いされない。ここではシャンプーよりもカウンセリングよりも先にまず、クルクル巻かれ球体をかぶせられる。

では天然パーマの客が訪れた場合どうなるのかというと、これは逆方向に曲げられる。この店ではそれを「カウンターパーマ」と呼んでいる。単にクセを伸ばすストレートパーマどころではなく、むしろクセ毛のカーブにカウンターを当てるように、同じだけ逆方向へクセをつけ返してやるのである。

なぜわざわざそんなことをするのかといえば、そのほうが「パーマかけてる感」を強く味わえるからである。美容師が感じる「パーマかけてる感」はパーマネントそれ自体の「やりがい」につながり、パーマネントは自分が「ファースト扱い」されていることをたしかに実感することができるというわけだ。

ちなみに薄毛の客は、足りないぶん他の毛を曲げられる。ゆえに曲げる対象となる毛を求めて、薄毛の客が店内で全裸にさせられるというのもよくある話だ。

そしてつい先日、このショップファーストの商店街の入口にある交差点で、カーファーストの自動車とバイシクルファーストの自転車とウォーキングファーストの歩行者が衝突するアクシデントファーストの事故が発生した。そこへポリスファーストの警官とドクターファーストの医者が駆けつけ、近いうちに裁判官ファーストの裁判が行われるという。


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