泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

赤井英和は、なぜあんなに大きくなったのか?

「アリという小さきものの象徴を社名に掲げながら、逆にとんでもなく大きな存在(と業績)になっている」といういわば逆説をさりげなく伝えたがっているように見える例の引越社のCM。

しかし「逆に」がうまいことハマッている場合それは最も疑うべき事態であることが多く、この場合も実はさほど「逆に」ではない。

その理由は、デカくなっているのがアリではなく、元からそこそこ大きいイメージのある赤井英和(178cm、82kg)だからで、大きいものがさらに大きくなるのは「逆に」ではなく「やりすぎ」である。

となると、なぜそんなに「やりすぎ」てまで赤井英和がさらに大きくなってしまったのか疑問が残る。しかも当の赤井英和本人がCM内で「どうしてそんなに大きくなっちゃったんですか?」との質問に対し、「なんでやろな?」と首をひねっているではないか。

そのあと最終的にはなんだか、作業員の「真面目にやってきたからじゃないですか?」という至極アバウトな発言によりその場は大納得の空気に包まれるが、もし真面目な人間が本当に巨大化するのであれば、みんなあんな巨人になるのは不便で嫌だから、誰も真面目を目指さなくなってしまって世の中は不真面目天国生き地獄で大変なことになる。

だからそんなことではないのだ。「真面目」というのは具体的な理由を隠すための大雑把な目くらましであり、何か言えない本当の、とんでもない理由があるに違いない。ではその具体的な理由とは何か? それはたとえばこういうことなのではないだろうか。

「食べすぎ」

いやしかし食べてあれだけ縦に伸びることはないのだろうが、そういえば近ごろ熊が山から降りてきてあちこちで騒動を起こしているのは、あれは山がどんぐり不足であるから餌を求めて降りてきているらしい。熊がどんぐりを食うイメージはまったくなかったのだが、てことは熊はどんぐりをハチミツに浸して食っているのか。もしくはハチミツをかぶりながらドングリを剥いているのか、あるいはハチミツを体中に塗りたくってどんぐりを全身にペトリペトリと貼りつけ、それを誰かにひとつひとつ強めにはじき取ってもらうことに至上の喜びを感じているのか…(どうしてもハチミツ)。

熊はどうでもよくて赤井英和が大きくなった理由を考えなければならない。そもそも生物は、どんなときに大きくなるものなのか?

キリンは高いところにあるものを食べたくて首が長くなったという説があるが、あれは別に首じゃなくて胴が長くなってもいいんじゃないかと思う。いやしかし、「高いところに何か魅力的なものがあったから」という理由は充分に検討に値する。

けれどもだとすると、さすがに一朝一夕に巨大化するわけにはいかず、何世代もの遺伝を通じて大きくなってゆくのだろうから、CMの赤井英和は本当の赤井英和から何百世代も後の赤井英和なのかもしれない。となると今それを観ている僕らも、本来の僕らからすると何百世代も後の僕らだということになり、つまり赤井英和が大きくなった本当の、そして隠されなければならなかった理由とは、つまり僕らがとんでもない未来人だということなのである。藤原紀香が「未来形で!」とか言っていたのはこれのことだったのだ。

だけど不思議なのは、そんな巨大化した赤井英和を観ている何百世代も後の自分がちっとも巨大化していないことで、それは無理に高いところにあるものを取ろうなどとせず、常に目の前にあるようなちんまりしたものばかり食べている成果と言えよう。

生物の進化を止めた手応えをいま、全身に感じている。

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