泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

越えられない壁

「努力は必ず報われる」などという甘言に騙されてはならない。 この世には、誰が何をどう頑張っても絶対に「越えられない壁」というものがある。 エコバッグ<プラダのバッグ<エルメスのバッグ<<<<<(越えられない壁)<<<<<クワマンのセカンドバ…

短篇小説『無効フラグ放題』

よく風の鳴る嵐の夜だった。マンションの一室の床にひとりの男がうつ伏せに倒れている。男を取り囲むように、火のついた百八本のロウソクが配置されている。いつから燃えているのかはわからない。 男の頭上にある窓ガラスが風を受けてビリビリと頻回に震えて…

アレクサにお願いしたいけどできない7つのこと

「アレクサ、ちょっとセカンドバッグ見張ってて!」 →どんな守護神でも、クワマンのセカンドバッグだけは守れない。その上、クワマンに窃盗の疑いまでかけられたアレクサがひと言、「それでもボクはやってない!」「アレクサ、新築のカラオケボックスにカラ…

短篇小説「割引人間クーポンマン」

たった一枚の紙切れが、ひとりの人生をすっかり変えてしまうことは珍しくない。たとえば、戦時下における召集令状。第一志望校からの合格通知。あるいは、勇気を振りしぼって書かれた一通のラブレター。紙切れの持つ意味あいこそ違えど、場合によってはそれ…

短篇小説「一理あらまほしき男」

ある朝、壱村理太郎が満員の通勤列車内で老人男性に席を譲るため立ち上がると、老人は理太郎のつま先を杖で小突きながら烈火のごとく怒りを表明したのであった。「ワシはこうやって、すっかり曲がってしまった腰を伸ばしているのだ! 誰の手先だか知らんが、…

短篇小説「冒険老婆」

男が街の小さな煙草屋を訪れ、窓口に座る老婆に声をかけた。よく晴れた春の日だった。「今日はあいにくの天気ですね」 「いやまったく、そうだねぇ」 老婆はおもむろに立ち上がると、窓口の脇にある勝手口の戸を開いた。男は身をかがめてそこから中へと入っ…

短篇小説「挟まれたい男」

ある朝男はマットレスと掛け布団のあいだ、いわゆる冷静と情熱のあいだに挟まれた状態で目が覚めた。つまり至って標準的な起床であったということになる。ただこの日に限っては、なぜか布団を上から「掛けている」というのではなく、上は布団から、下はマッ…

短篇小説「もしも氏」

我が愛すべき喪師喪史郎は、朝起きて顔を洗い朝食を摂って歯を磨くと、スーツに着替えて満員電車に飛び乗った。もしも彼がサラリーマンであったとすればだが。 しかし実際のところ史郎はサラリーマンではなかったので、歯を磨くまでは一緒だがユニフォームに…

二度手間侍の牛乳茶

「二度手間侍」とは、二度手間をものともしない侍のことである。それが昨日、カフェに現れた。まずは脳内に、そして眼前に。といってもわけがわからないだろうがそれでいい。「二度手間侍」とはその昔、『アンタッチャブルのシカゴマンゴ』というラジオ番組…

短篇小説「愚問の多い料理店」

料理をいただくというのは、ただ料理を食べるということではないらしい。わたしは先日訪れたある店で、その事実をこれでもかと思い知らされた。「家に帰るまでが遠足」と学校の先生が言うのなら、「食べる前が食事である」と今のわたしは言いたい。もし言え…

短篇小説「弔問の多い料理店」

行列のできる料理店など今どき珍しくもないが、その列をなす人々がもれなく同じ色の服を身に纏っているとなれば話は別だ。しかもそれが、もれなく沈鬱な面をひっさげた喪服と来れば。 私がその料理店に初めて足を運んだのは、たまたまその日の私が、知人の葬…

短篇小説「河童の一日~其ノ十七~」

今日はインフルエンザで一日じゅう寝ていた。インフルエンザといっても河童用インフルエンザであって、河童から河童へと感染するのみだから安心してほしい。今のところ人間に感染した事例はないから、もしうつったとしたら、その人は少なくとも何割かは河童…

日本十大あけましておめでとうございます2018

あけましておめでとうございます!(靴下に穴を)あけましておめでとうございます!(よく振ったコーラの蓋を)あけましておめでとうございます!(上司のボトルを無断で)あけましておめでとうございます!(適切な車間距離を)あけましておめでとうござい…

2017年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・ソング10選

上位曲は、どうしても年間ベスト・アルバムで選んだ作品からの曲になってしまうが、半分くらいはあまりかぶらないようやや意識した。本来ならば、「Hysteric Creatures」/OUTRAGE、「Light In The Dark」/REVOLUTION SAINTSの2曲もどこかに入る可能性が高…

短篇小説「開けたら閉める」

いよいよ人類待望の「手動ドア」が発明された。待ちに待った「手で開けるドア」の誕生である。 きっかけは、とある洞窟の最奥部に描かれた壁画であった。先ごろ発見されたその壁画に描かれていたのは、おそらくは古代人たちの生活風景であり、その様子は現代…

2017年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・アルバム10選

1位『RAGING OUT』/OUTRAGE Raging Out(デラックスエディション)(DVD付)アーティスト: アウトレイジ,SHINYA TANGE,YOSUKE ABE,S.SHAH,OUTRAGE出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック発売日: 2017/10/11メディア: CDこの商品を含むブログを見る「日本の…

短篇小説「括弧つける男」

ある冬の朝、佐藤(初)が自宅(狭)のキッチン(雑)で朝食のトマト(赤)を切っていると、玄関の外(寒)から唐突に悲鳴(叫)が聞こえてきた(耳)のだった。 彼の家こそ狭いアパート(泣)ではあるものの、そこは閑静(黙)な住宅街(贅)。普段は二日酔…

書評『フェルディドゥルケ』/W. ゴンブローヴィッチ

とにかく徹頭徹尾ふざけまくっている小説である。この小説を真顔で読み終えることのできる人は、人生のあらゆる局面で「もっともらしい」人や物に騙されている可能性が高いので充分に気をつけたほうがいい。もちろん極度の「悪ふざけ」と極度の「生真面目」…

餃子を相殺する方法

「相殺」という画期的なシステムを、生活に取り入れてみることにした。ことの起こりはこうだ。近所に、以前から入ってみたいと思っていた餃子屋があった。しかしひとりで入って餃子とライスだけ食って出てくるのは、なんとなく申し訳がない。どうやら世の中…

「新語流行語全部入り小説2017」

ある金曜の夜、営業課長の栄村富夫が取引先の社長と猛烈にインスタ映えする最高級天ぷらを食している間に、デーモン閣下の娘(魔の2回生)であり彼の妻であるポスト真実(まみ)は、毎晩のように経費で遊びほうける夫に愛想を尽かし実家(地獄)へと帰還して…

短篇小説「ブルーレットをおくだけで」

そうブルーレットは、おくだけで良いのである。 ではいったいブルーレットをおくだけで、何が起こるというのか? 便器が綺麗になる? そんなのは当たりまえだ。 ブルーレットをおくだけでもっと様々な変化が起こらないのなら、わざわざ『ブルーレットおくだ…

短篇小説「森羅万象エネミー」

世の中の物体はすべて敵味方に分けられる。ご存知だとは思うが、敵味方というのは人間にのみ適応可能な概念ではない。我々は「燃えるゴミ」と「燃えないゴミ」を分別するように、あらゆる物体をも敵味方に分ける必要がある。さもないと、物に迷いが生じてし…

短篇小説「米米商店街」

その商店街にはじめて店を出したのは米屋だった。さすが日本人の主食である。と言いたいところだが、そのはす向かいにオープンした二件目の店もまた、別の経営者が開いた米屋だったことで町内は騒然となった。「おいおい、年貢はもういいぜ」 そう言って揶揄…

短篇小説「命に別条」

ある朝、男が工事現場の脇を歩いていると頭上から大量の鉄骨が降臨、その頭部を直撃するという事故が起きた。だが幸運なことに、この日初陣を飾った一張羅のカツラこそ飛び立ったものの、男の命に別条はなかった。別条がないというのは良いことである。 クロ…

短篇小説「河童の一日 其ノ十六」

なんだか政治の世界が大変なことになっているらしい。今日は呑気な日曜日、しかも三連休の中日なので昼まで存分に寝ていたかった。しかしこの状況下で寝続ける能力が、残念ながら僕にはなかった。朝イチで茨城から泳いで来た爺ちゃんが、緑の好物を両手に掲…

短篇小説「壊れかけ包囲網」

崩彦の家では何もかもが壊れかけている。朝から洗濯機が妙な音を立てて。それでも槽はぎっこんばったん回り続け、やがてピーピー叫ぶので蓋を開けてみると、中はこんもり泡まみれ。逆に動作がすっかり止んでもまったくピーピーしない際にしびれを切らして蓋…

短篇小説「優しさはチャージのあとで」

本田優夫はすこぶる優しい男だから、ぶん殴った相手には絆創膏を多めに渡してやるのが常だ。リクエストさえあれば、そのうえで相手をひっしと抱きしめてやってもいいとすら思っているが、その場合はもう一発殴ることになる。もちろんその後に渡される絆創膏…

虚実空転日記「サバといつまでも」

騒音おばさんがじっくり煮込んだサバの味噌煮をご近所の玄関口にぶちまけたころ、著名なジャズマンは中学生ドラマーのドラムスティックを豪快に放擲していた。『ガリガリ君』のあたり棒の次に大切にしていたスティックを取り上げられた中学生は、素手による…

書評『場所』/マリオ・レブレーロ

カフカを好むがゆえにカフカ・フォロワーと見るや手に取ることが多いが、このマリオ・レブレーロもそのひとり。とはいえ南米ウルグアイの作家であり、カフカとの地理的な距離感がどのように作用しているか、という興味もあって。これは音楽の世界でもよくあ…

書評『東京モンタナ急行』/リチャード・ブローティガン

東京モンタナ急行作者: リチャード・ブローティガン,藤本和子出版社/メーカー: 晶文社発売日: 1982/10メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (6件) を見るこの世にブローティガンほど「当たり外れ」の激しい作家はいない。にもかかわらず、「…

Copyright © 2008 泣きながら一気に書きました All Rights Reserved.