泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

「新語流行語全部入り小説2017」

ある金曜の夜、営業課長の栄村富夫が取引先の社長と猛烈にインスタ映えする最高級天ぷらを食している間に、デーモン閣下の娘(魔の2回生)であり彼の妻であるポスト真実(まみ)は、毎晩のように経費で遊びほうける夫に愛想を尽かし実家(地獄)へと帰還して…

短篇小説「ブルーレットをおくだけで」

そうブルーレットは、おくだけで良いのである。 ではいったいブルーレットをおくだけで、何が起こるというのか? 便器が綺麗になる? そんなのは当たりまえだ。 ブルーレットをおくだけでもっと様々な変化が起こらないのなら、わざわざ『ブルーレットおくだ…

短篇小説「森羅万象エネミー」

世の中の物体はすべて敵味方に分けられる。ご存知だとは思うが、敵味方というのは人間にのみ適応可能な概念ではない。我々は「燃えるゴミ」と「燃えないゴミ」を分別するように、あらゆる物体をも敵味方に分ける必要がある。さもないと、物に迷いが生じてし…

短篇小説「米米商店街」

その商店街にはじめて店を出したのは米屋だった。さすが日本人の主食である。と言いたいところだが、そのはす向かいにオープンした二件目の店もまた、別の経営者が開いた米屋だったことで町内は騒然となった。「おいおい、年貢はもういいぜ」 そう言って揶揄…

短篇小説「命に別条」

ある朝、男が工事現場の脇を歩いていると頭上から大量の鉄骨が降臨、その頭部を直撃するという事故が起きた。だが幸運なことに、この日初陣を飾った一張羅のカツラこそ飛び立ったものの、男の命に別条はなかった。別条がないというのは良いことである。 クロ…

短篇小説「河童の一日 其ノ十六」

なんだか政治の世界が大変なことになっているらしい。今日は呑気な日曜日、しかも三連休の中日なので昼まで存分に寝ていたかった。しかしこの状況下で寝続ける能力が、残念ながら僕にはなかった。朝イチで茨城から泳いで来た爺ちゃんが、緑の好物を両手に掲…

短篇小説「壊れかけ包囲網」

崩彦の家では何もかもが壊れかけている。朝から洗濯機が妙な音を立てて。それでも槽はぎっこんばったん回り続け、やがてピーピー叫ぶので蓋を開けてみると、中はこんもり泡まみれ。逆に動作がすっかり止んでもまったくピーピーしない際にしびれを切らして蓋…

短篇小説「優しさはチャージのあとで」

本田優夫はすこぶる優しい男だから、ぶん殴った相手には絆創膏を多めに渡してやるのが常だ。リクエストさえあれば、そのうえで相手をひっしと抱きしめてやってもいいとすら思っているが、その場合はもう一発殴ることになる。もちろんその後に渡される絆創膏…

虚実空転日記「サバといつまでも」

騒音おばさんがじっくり煮込んだサバの味噌煮をご近所の玄関口にぶちまけたころ、著名なジャズマンは中学生ドラマーのドラムスティックを豪快に放擲していた。『ガリガリ君』のあたり棒の次に大切にしていたスティックを取り上げられた中学生は、素手による…

書評『場所』/マリオ・レブレーロ

カフカを好むがゆえにカフカ・フォロワーと見るや手に取ることが多いが、このマリオ・レブレーロもそのひとり。とはいえ南米ウルグアイの作家であり、カフカとの地理的な距離感がどのように作用しているか、という興味もあって。これは音楽の世界でもよくあ…

書評『東京モンタナ急行』/リチャード・ブローティガン

東京モンタナ急行作者: リチャード・ブローティガン,藤本和子出版社/メーカー: 晶文社発売日: 1982/10メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (6件) を見るこの世にブローティガンほど「当たり外れ」の激しい作家はいない。にもかかわらず、「…

短篇小説「河童の一日 其ノ十五」

夕方、雨が降ってきた。ゲリラ豪雨である。でも傘は差さない。僕は河童だから。いや本当は差したい。いくら河童とて、ずぶ濡れは嫌だから。でも河童が傘を差していると笑われるから差せないのである。もう一度言うが本当は差したいのだし、甲羅と背中の間に…

短篇小説「戸袋ひろしの誘惑」

それがどこの何線であろうと、電車のドア付近できりきり舞いしている男がいたら、それが戸袋ひろしである。あまりにも戸袋に引き込まれるものだから、「戸袋ひろしは戸袋に“挟まれている”のではなく、戸袋の中に“入ろうとしている”のでは?」という説もちら…

短篇小説「河童の一日 其ノ十四」

河童は梅雨が好きだと思われがちだが実は梅雨が苦手だ。科学的に説明はできないが、河童の好む湿気と梅雨の湿気は何かが決定的に違うのである。それ以前に僕ら河童という存在自体がそもそも科学的に説明できないのだから、河童に科学を求めないでほしい。今…

短篇小説「勇者・二度見村ミム彦の誤解」

勇者・二度見村ミム彦はいわゆる「二度見」の天才であった。彼はあらゆるものを二度見る。そして一度見た段階では確実に見間違えるが、再び同じものが視野に入ればその対象を正確に把握することができる。めでたく二十歳の誕生日を迎えたその日、ミム彦は初…

似合わせなカット

近ごろ髪切り場の看板黒板そしてネット上でやたらと目撃するようになった謎のメニューがある。「似合わせカット ¥6,480」なんということでしょう。なんだかわからないが、このメニュー名からは「言葉の圧」のようなものが強烈に発散されている。「似合わせ…

カールの乱、ポテチの変

日本はついに、カールとポテチのない未曾有の時代へと突入した。正確にいえば完全にないわけではないが西日本限定になったり品薄だったりで、まあ大雑把にいえば「ない」というか「入手困難な状況が継続、あるいはわりと頻繁に起こり得る」という時代になっ…

連載小説「二言武士」/第五言:過言はあれど二言なし

「実はワシ、このジム畳もうと思ってるんだよね」オールドジムの支配人である「過言武士」こと過田減迫が、市中引き回されマシンに絶賛振り回され中の覆之介の耳に遠慮なく相談を投げかける。「なんかほら、毎日マッチョばっかり見てるの耐えらんなくて」い…

短篇小説「河童の一日 其ノ十三」

近ごろなんだか調子が出ない。どはいえ調子が出たところでたいしたことはない。それは僕が河童だからなんじゃないか。ついついそんな後ろ向きなことばかり考えてしまうのは、たぶんこの気候のせいだ。寒いようで暑い、暑いようで寒い。河童はそんな思わせぶ…

現在企画頓挫中の新書タイトル一覧

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』あたりからだろうか。最近の新書はとにかく「タイトルありき」の羊頭狗肉が横行しているとの評判である。ならばまずタイトルから決めてしまうのが良いのではないか、と思いタイトルから決めたところ、結構思いつくには思…

短篇小説「雨のドラゲナイ」

竜治は雨が降るとドラゲナイ気持ちになる。とはいえ竜治は一介の会社員。今朝も満員電車にドラゲナイしなければならない。二度寝が深まりすぎないうちに一大決心をして掛け布団を勢いよくドラゲナイした竜治は、トイレで用を、洗面所で顔をそれぞれドラゲナ…

絶対に出ない国語現代文入試問題

【問1】 傍線部(ア)でクワマンが3度目の盗難に遭ったときの気持ちを、20字以内で答えなさい。【問2】 傍線部(イ)で指摘されている細川たかしの髪型を表現するのに、最適な四字熟語を以下の選択肢から選びなさい。 A. 猪突猛進 B. 七転八倒 C. 百花繚乱 D…

短篇小説「死ぬのは面倒」

喪之彦は樹海の中にいた。人生に絶望した男は、ひっそりと自ら首をくくるための死に場所を探し歩いていた。とにかく丈夫な木を探す必要があったが、そんなものは樹海にはいくらでもあった。喪之彦は幹だけでなく枝まで太く頑丈な木を選ぶと、さっそくそこに…

ポテトチップスが品薄になると、世界はどうなってしまうの?

大変なことになった。ニュースによると、あの国民的食品が危機的状況にあるらしい。大変なことになった。大切なことなので二度言った。headlines.yahoo.co.jpどうやら原因は、昨年北海道を襲った台風の被害によるじゃがいも不足らしい。「なんだ、たかがポテ…

短篇小説「森の覇者アラクレシスの三択」

森の覇者アラクレシスは覇者と呼ばれるくらいだから喧嘩は抜群に強かったが、ジャンケンがすこぶる弱かった。アラクレシスの生涯ジャンケン戦績は「400戦無勝」であったと言われている。そして彼の人生における重大な岐路には、必ずジャンケンが壁となって立…

短篇小説「いい意味で唯々男」

飯田唯々男はいい意味でいい加減な男だった。唯々男はいつもいいスーツをいい具合に着崩していたが、そのラフさが彼をいい意味でいい人に見せていた。そのうえ唯々男は近ごろいい感じに太ってきているため、勢いよく息を吸い込んでスーツのボタンを留めると…

レトロで新しく、ダサくてお洒落、そして激しくも美しい謎の幽霊バンド「GHOST」がとにかく素晴らしい

魅力的なものというのは、時に「二律背反」の要素を兼ね備えているものだが、このスウェーデンのメタルバンドGHOSTほどその両極が入り交じることで魅力を生み出しているアーティストも珍しい。実は2016年、個人的に最も衝撃を受けたのが、以下に挙げるこの「…

短篇小説「天天天職」

どんな仕事にもその職務内で発揮される「才能」というものがあり、逆にいえば人にはその「才能」を生かす「天職」というものがあるらしい。「才能」というのはけっして、スポーツ選手や芸術家にのみ求められるものではない。映画チケットのもぎりにすら「才…

短篇小説「もはやがばわないばあちゃん」

がばいばあちゃんが思ったほどがばわなくなったのはいつの日からだろうか。がばいばあちゃんは、とにかくいつでも誰にでもがばうばあちゃんだった。イケメンにも不細工にも分けへだてなくがばうし、いったんがばうと決めたら老若男女も国籍も問わない。西に…

書評『騎士団長殺し』/村上春樹 ~ダイソン的吸引力で読者を物語へと引き込む「ほのめかし文学」~

本と人との関係というのは人間同士の関係と同じで、趣味嗜好は合わなくても友達や恋人になれるというケースが少なからずある。僕にとって村上春樹の作品とは、常にそういう存在であるのかもしれない。この『騎士団長殺し』という作品をいま読み終えて、改め…

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