泣きながら一気に書きました

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

短篇小説「条件神」

photo by Hartwig HKD ひとりなのだかたくさんいるのだか知らないが、世にいう神々が必ずしもやさしいとは限らないのは、地球の現状を見れば誰にでも簡単に理解できることである。しかしまさかここまでとは。 その日、神が喪師喪田畏怖男を見つけたのか、喪…

『TUNGUSKA』/TREAT

ツングースカ【通常盤】アーティスト: トリート出版社/メーカー: キングレコード発売日: 2018/09/05メディア: CDこの商品を含むブログを見る名盤は、時として摑みどころがない。それはまるで取っ手のないトランクのようなもので、一聴したところ、どこを掴ん…

風邪の歌を聴け

考えてみれば、その日は朝起きた瞬間から妙な浮遊感があった。週の初めに風邪の症状を自覚してから五日目となる木曜の朝、六時過ぎにふと目が覚めた。前日の夜、すっかり風邪のピークは過ぎて、あとは時間の経過とともに自然治癒していくはず、という確信が…

噛むガム Is Coming!

数年に一度、ガムブームが来る。「来る」といっても自分の中に来るというだけの話である。ちなみに「噛む」という日本語動詞と「ガム」という英単語の親和性はどういうわけか。そして噛むべきガムのブームがCOME(来る)。そういえば世の中的に、いつガムブ…

デヴィッド・リンチ/『アートライフ』

デヴィッド・リンチ:アートライフ [DVD]出版社/メーカー: TCエンタテインメント発売日: 2018/07/04メディア: DVDこの商品を含むブログを見る現世にデヴィッド・リンチほど「奇才」という呼び名がふさわしい人間はいないと思うが、どんな奇才にもルーツはある…

ビラ配ラーとの攻防

受験や就活に限らず、この世のあらゆる場面では冷酷無比な「セレクション」が行われている。それは路上においても例外ではない。といってもナンパや勧誘の類ではなく、いやある意味勧誘の一種ではあるのだが、ビラ配りの話である。駅前の路上なんかを歩いて…

純眠欲

本が好きだが本を読むと眠くなってしまう。本をあまり読まない人は、本を読むと眠くなるのは本がたいして好きじゃないからだと思っているかもしれないが、そんなことはまったくない。本には自らのことを愛する者をも眠らせる圧倒的な力がある。となるとこれ…

理想的な「三曲」を求めて――メタル史上最強のトリロジー(三部作)ベスト10

音楽を聴取あるいは評価する単位として一般的なのは、言うまでもなく「曲単位」か「アルバム単位」だろう。特にアプリやYouTubeで聴くことが増えている昨今、その比重はだいぶ前者に寄ってきているのかもしれない。しかしそんな「単位」は、あくまでも商品と…

文体実験型短篇小説「順接ブレイクダウン」

喉が渇いたからといって水を飲みにいくとは限らない。 就活生の何故彦は面接の出来がさんざんだったので、帰りにコンビニへ寄って牛乳を買った。もしも面接で充分な手応えを感じられていたならば、彼はきっとミネラルウォーターを買っていただろう。どちらが…

無理比喩短篇小説「因果オーライ」

朝の通勤電車はコンビーフの缶詰のように混んでいた。中段をぐるぐる巻き取るあの独自の構造は切腹を思わせるが、満員電車に乗っているサラリーマンたちの会社への忠誠心も実質的な切腹を前提としている。 列車がテーブルの上に置いて三秒後の生卵のように揺…

無理を承知で厳厳厳選した生涯のハード・ロック/ヘヴィ・メタル・ソング・ベスト10

先日書いた「アルバムベスト10」からの流れで、これは選ばざるを得ないという正体不明の使命感に駆られ、今回は曲単位で「オール・タイム・ベスト10」を選ぶことに決めたはいいが。いや難航、難航、桂南光。これは大変なことになった。1枚のアルバムに10数曲…

あくまで「アルバム単位」で厳選した、生涯のハード・ロック/ヘヴィ・メタル・アルバム・ベスト10

いわゆる「年間ベスト・アルバム」のようなことは、僕もやるしみんなわりとやるけれど、そういえば「生涯のベスト・アルバム」的な、真の意味で自分にとって最上の10枚を選ぶ、というような、これまでの全音楽体験を総括するような選び方は、これまでちゃん…

非四字熟語読解問題

人は様々なメッセージを身に纏って歩いているものだ。たとえばTシャツのプリント文字。そこに何らかの主義主張を込める者と、何も考えずなんとなく着ている者の二派に分かれるが、いずれにしろ結果的に何かしらのメッセージを発信していることに違いはない。…

ディスクレビュー『PREQUELLE』/GHOST

PREQUELLE (DELUXE EDITION) [CD] (LENTICULAR ALBUM COVER INSERT, 2 BONUS TRACKS, LIMITED)アーティスト: GHOST出版社/メーカー: LOMA VISTA発売日: 2018/06/01メディア: CDこの商品を含むブログを見るもはや全世界的に「メタル」というジャンルそのもの…

森羅万象ドラクエ化Ⅱ~悪霊の神々~

この世のあらゆる物事は、すべて『ドラゴンクエスト』の世界観に取り込むことができる、つまりドラクエナイズ(ドラクエ化)可能であるということを証明する第二弾。勇者の伝説が再びよみがえる。 ◆笑わせ師「まつきやすたろう」が習得する呪文「かいせつ」…

森羅万象ドラクエ化

この世のあらゆる物事は、すべて『ドラゴンクエスト』の世界観に取り込むことができる、つまりドラクエナイズ(ドラクエ化)可能であるということをこれから証明してみたいと思ふ。ぜひ『ドラクエ』の攻略サイトと間違えて読んでいただければ幸いである。 ◆…

性格の不一致、対話のスイッチ

夫婦の離婚原因第一位は「性格の不一致」と言われるが、果たして本当にそうなのかどうか。むしろ完全に一致してしまったら1×1=1にしかならないという考え方もあるし、すべてわかりきっている相手に興味が持てないという可能性もある。そもそも「性格の完全…

The お前が歌うんかい!~「Set The World On Fire」/GIOELI-CASTRONOVO~

かつて『ダウンタウンのごっつええ感じ』で、傷心の客のためにレコードをかけたバーテンダーが、その曲のイントロが終わると自ら歌い出し、「お前が歌うんかい!」と思い切りツッコまれるというシリーズコントがあった。ちょうど今年に入ってから『水曜日の…

男とアンテナと異邦人

先日、昼過ぎに公園を歩いていると、池の縁に立っている初老の男を見かけた。とはいえ人が死ねるほどの深さを持つ池ではないから、自殺志願の心配はない。佇むといった陰鬱な雰囲気はなく、むしろ仁王立ちの誇らしさで背中を反らせ気味に立っている。後ろか…

短篇小説「ラジカセの木」

男は庭の畑でラジカセの苗を育てていた。 苗とはいっても、水を遣るわけにはいかない。なぜならばラジカセは、電化製品だからである。庭にはビニールの屋根がついていた。音を聴かせて育てるしかない。それも正確な育て方かどうかはわからない。そんなこと、…

ケメ子とメム美のジャンガジャンガ未遂

あらかじめ断っておくが、何が面白いのかわからない話かもしれない。先日カッフェで本を読んでいると、ミルクティーとチーズケーキのあいだから女子高生らしき二人の会話が聞こえてきた。願わくば消し忘れた煙草と中国茶(チャイニーズティー)のあいだから…

短篇小説「ハズキルーペがハズかない」

「今日も私は精一杯、力の限りハズけていたのだろうか? あるいは楽をして、中途半端に七割方ハズいたあたりで、満足してしまっていやしないだろうか?」 近ごろ私は、仕事を終えた帰りの電車内で、毎日そう考えている。それはもちろん、私が最近ハズキルー…

やばたにえん無闇応用型短篇小説「えぶりたにえん」

後楽園と豊島園の中間地点にある高校に合格した谷園子は、入学初日に世紀の朝寝坊をしてしまい非常にやばたにえんであった。「ちょっとお母さん、なんでおこたにえんしてくれなかったの! お蔭で初日から大ちこたにえんじゃない!」 顔をあらたにえんする暇…

越えられない壁

「努力は必ず報われる」などという甘言に騙されてはならない。 この世には、誰が何をどう頑張っても絶対に「越えられない壁」というものがある。 エコバッグ<プラダのバッグ<エルメスのバッグ<<<<<(越えられない壁)<<<<<クワマンのセカンドバ…

短篇小説『無効フラグ放題』

よく風の鳴る嵐の夜だった。マンションの一室の床にひとりの男がうつ伏せに倒れている。男を取り囲むように、火のついた百八本のロウソクが配置されている。いつから燃えているのかはわからない。 男の頭上にある窓ガラスが風を受けてビリビリと頻回に震えて…

アレクサにお願いしたいけどできない7つのこと

「アレクサ、ちょっとセカンドバッグ見張ってて!」 →どんな守護神でも、クワマンのセカンドバッグだけは守れない。その上、クワマンに窃盗の疑いまでかけられたアレクサがひと言、「それでもボクはやってない!」「アレクサ、新築のカラオケボックスにカラ…

短篇小説「割引人間クーポンマン」

たった一枚の紙切れが、ひとりの人生をすっかり変えてしまうことは珍しくない。たとえば、戦時下における召集令状。第一志望校からの合格通知。あるいは、勇気を振りしぼって書かれた一通のラブレター。紙切れの持つ意味あいこそ違えど、場合によってはそれ…

短篇小説「一理あらまほしき男」

ある朝、壱村理太郎が満員の通勤列車内で老人男性に席を譲るため立ち上がると、老人は理太郎のつま先を杖で小突きながら烈火のごとく怒りを表明したのであった。「ワシはこうやって、すっかり曲がってしまった腰を伸ばしているのだ! 誰の手先だか知らんが、…

短篇小説「冒険老婆」

男が街の小さな煙草屋を訪れ、窓口に座る老婆に声をかけた。よく晴れた春の日だった。「今日はあいにくの天気ですね」 「いやまったく、そうだねぇ」 老婆はおもむろに立ち上がると、窓口の脇にある勝手口の戸を開いた。男は身をかがめてそこから中へと入っ…

短篇小説「挟まれたい男」

ある朝男はマットレスと掛け布団のあいだ、いわゆる冷静と情熱のあいだに挟まれた状態で目が覚めた。つまり至って標準的な起床であったということになる。ただこの日に限っては、なぜか布団を上から「掛けている」というのではなく、上は布団から、下はマッ…

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